《新 笠地蔵》
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★★★第264号−2008.4.21★★★
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《新 笠地蔵》
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こういうショートストーリーがある。
──双子の兄弟が雪山を歩いている。
名前は太郎と次郎。
二人は家業の会社が破産して多額の借金を作り、
もはやこれまでと死に場所を求めて山に登ったのだ。
その願いを聞き届けてくれるかのように、
山は折りしも猛吹雪になった。
途中に壊れかけた祠があり、
中の仏像だか神像だかが、
破れた屋根から吹き付ける雪に埋もれかかっていた。
次郎がその前で歩みを止めると、
雪を払い、毛糸の帽子を脱いで像にかぶせてやった。
「おい、おい。笠地蔵にあやかる気か」
太郎が笑った。
「帽子なんて、どうせおれたちにはもう必要ないんだしさ」
次郎が答える。
太郎は次郎のささやかな希望を笑ったつもりだったが、
次郎はもはや希望とは反対の決意をしていたのだった。
「それもそうだな」
フン、とうなずくと、
太郎も決意を示そうというように自分の手袋を脱いで、
石造の冷たそうな手にはめてやった。
カゼひくなよ、お前もな、と二人は静かに冗談を言い合って、
一層の寒気を見に市見込ませて歩いていくと、
不意に山小屋が見えてきた。
死ぬにしろ、万が一生きるにしろ、
とりあえずそこで一休みすることにした。
実際、もう歩けなかった。
小屋のストーブを燃やし、
死出の盃のつもりでウィスキーを飲むと、
不覚にも二人はうとうとと眠ってしまった。
二人は同じ夢を見ていた。
枕元に仙人のような老人が立っている。
「我は山の神、おまえたちの殊勝な心が気に入ったので
願い事をかなえて進ぜよう。
ただし、密かに心に念じるだけで、
願いを人に話してはいけない。
兄弟同士でもな。
雑念を払い、心を集中させて、
願いを強く心に描きなさい。
そうすれば、願いは叶えられるだろう」
老人はこのように語るのだった。
小屋に何か物音がしたようだが、
つかれきった二人の眼を覚ますまでには至らなかった。
翌日、二人は何事も無く目を覚ました。
吹雪はやみ、春を思わせるような陽気だった。
「夢だったのか。やけにリアルだった」太郎が言った。
「俺も見た。山の神が出てきた」次郎が言った。
「おまえもか」
驚いて太郎が見つめ返す。
二人とも真顔だった。
「アニキ、それ……」
次郎が指をさす。
太郎の頭の傍らに大きな包みが二つあった。
確か前日には無かったはずだ。
太郎はあわてて包みを解きにかかった。
中から現れたのは、
なんと札束だった。
透かしも入って、
どう見ても本物の万札だ。
一つの包みに一億円。
二つで二億である。
借金を返済してもまだ二千万円余る。
※次号に続きます。
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