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2008/07/19

ヴェスター第289話 「イリノアの強さ」

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  ヴェスター(Vester) : Vol.289
  発行日:2008/07/19
  発行元:VesterProject
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◇第289話 イリノアの強さ◇
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「どういうつもりだ、イリノア?」
 驚いたラルフが、イリノアに尋ねる。
「見ての通りだ。フィールに行きたければ、私を倒すことだな。
 さあ、かかってこい。ラルフ。」
 イリノアは、そう言うと、剣の刃先を、ラルフの方に向ける。
「イリノアと戦う理由なんてない。」
「戦う理由はある。なぜなら、私は、ヴェルガント様の四天王で、お前達は、
ヴェルガント様の敵だからだ。」
「だったら、どうして俺の命を助けてくれたんだ?
 敵だったら、俺を殺すチャンスなんて、いくらでもあっただろう?」
「お前が、アーリアにとって重要な人物らしいということで、保護しただけだ。
 プリミナンドからの砲撃で、死なれたとあっては、我々が困るからな。」
 イリノアはそう言うと、剣を構える。

「さあ、かかってこい、ラルフ。
 それとも、まさか、負傷から回復したばかりのニーナに戦わせようという
わけなのか?」
 イリノアがそう言うと、ラルフはニーナの方を見る。
 突然のイリノアの変貌に、ニーナも困惑している様子だった。
「ニーナは、まだ戦えないよ。」
 その時、基地からゆっくり歩いてきたドクターヘンゲルが大声でそう言う。
「ドクターヘンゲル。」
「確かにニーナは回復したけど、それは、あくまで外傷だけ。
 体力や魔力は、回復するまでに時間がかかるはずだよ。
 なんせ、あれだけの戦闘をやってのけたんだからね。」
 ドクターヘンゲルがそう言うと、イリノアが再びラルフに向かって叫ぶ。
「さあ、わかっただろう。
 ニーナが戦えない以上、ラルフ、お前が戦うしかないだろう。
 どうしてもフィールに行きたければ、かかってくるがいい。」
 イリノアはそう言うと、剣を構える。

「ちょっと、待ったぁーーー!!!」
 とその時、突然、ラルフの背後から大声が聞こえてくる。
 声を張り上げたのは、何とガルックだった。
「さっきから黙って聞いていれば、この俺のことを無視しやがって。
 この俺が相手してやるよ。覇王流の戦士。」
 ガルックはそう言うと、剣を抜く。
 そのガルックの剣を見た瞬間、イリノアは驚いた表情を浮かべる。
「そ、その剣は・・・まさか、ディルクレーか?」
「今さら何を驚いてる。中央帝都でも、散々使ってたっつーの。」
 ガルックはそう言うと、ディルクレーを構える。
 そのガルックの姿を見て、イリノアはフッと笑みを浮かべる。
「なるほど、そう言えば貴様も、ラルフやニーナと同じだったな。
 よかろう、ならば貴様から、かかってくるがいい。」
 イリノアはそう言うと、ガルックに向けて剣を構える。

「ラルフ・・・どうしよう?」
 ニーナがおろおろした様子で、ラルフに声をかける。
「イリノアとの戦いは、避けられないのか?」
 ラルフは、剣を構えているイリノアに向かってそう呟く。
「その通りだ。」
 イリノアはそう言うと、上空に飛びあがる。
 それを見たガルックも、後を追いかける。

「さて、どうなるかのう?」
 いつの間にかラルフの背後にいたリグアーがそう言うと、ラルフ達は驚く。
「リ、リグアーさん、いつの間に!?」
「お前達は、戦闘以外になると、気を抜きすぎだ。」
 ダークソリアがそう言うと、リグアーは大笑いする。
「確かにな。こんなに接近しているのに、2人とも気付かなかったからな。」
「そ、それは・・・」
「だがな、ラルフ、ヴェスターはお前達にとって、敵地だ。
 これからは、周りには常に敵がいると思っておいた方がいいぞ。」
「それはわかってるんだけど・・・」
 ラルフはそこまで言うと、黙りこんでしまう。
 続きの言葉を発したのは、ニーナだった。
「ウン、ラルフの考えていること、すごくわかるよ。
 最初は私も、ヴェスターの中は、敵ばっかりなんだろうなって思ってた。
 でも、私がヴェスターで会った、ルードさんやイリノアさん、リグアーさんや
ドクターヘンゲルやティアナさん・・・
 ここが敵地だってこと忘れるくらいに、みんないい人ばかりだから・・・」
 ニーナがそう言うと、ラルフも頷く。
「でも、いい人でも、やっぱり、イリノアは、ヴェルガントの四天王の一人。
 絶対に譲れないものがあるってわけだ。」
「でも、私達だって、エミリーを助けるのを諦めるわけにはいかない。」
 ニーナがそう言うと、ラルフが力強く頷く。
「ああ、その通りだ。」
 ラルフはそう言うと、吹っ切れた表情を見せる。
 ラルフは、イリノアと戦う覚悟を決める。
「でも、もっと違う形で出会えてたら・・・
 きっと、みんなと友達になれたと思うのになあ・・・」
 一方、ニーナの方はというと、まだ吹っ切れないのか、少し寂しそうな表情で、
そんなことを呟いていた。

 とその時、上空で、ガルックが技を放つのが見えた。
「いくぞ、覇王流奥儀、バキュームストーム!!!」
 ガルックから無数の真空刃が放たれると、イリノア目がけて突き進んでいく。
 だが、イリノアは、ガルックの放った真空刃を、いとも簡単にはじき返す。
「何だ、この情けない技は・・・
 覇王流の技というのは、こうやるんだ。」
 イリノアはそう言うと、ガルックと全く同じ技、バキュームストームを放つ。
 次の瞬間、凄まじい数の真空刃が、ガルックに襲いかかる。
 その真空刃の威力も、スピードも、ガルックのそれとはケタ違いだった。
 まともに一発でも食らえば、致命傷になりかねない。
 ガルックは、懸命に真空刃をかわすが、数もスピードも圧倒的で、そう簡単に
かわしきれるものではなかった。
 一つの真空刃が、ガルックに襲いかかると、ガルックの頬をかすめる。
 ヴェクト・アーマーがあるから、この程度なら大丈夫。
 そう思っていたガルックだったが、その時、頬に違和感を感じる。
「ま、まさか・・・」
 モニターに自分の顔を映し出して、ガルックは驚く。
 ヴェクト・アーマーは無事なのに、ガルックの頬が切れて、出血していたのだ。
(衝撃波が、突き抜けたというのか!?)
 とその時、イリノアの姿が見当たらないことに気づく。
「な、奴は一体どこに!?」

 とその時、突然、背後からの気配を感じ取る。
 ガルックは、とっさに反応しようとした時には、既にイリノアは技を放とうと
していた。
「覇王流奥儀、ガルーダ・ウィナー!!!」
 イリノアから放たれた鋭い一撃が、ガルックに直撃する。
「グハァッ!!」
 イリノアの技をもろに食らったガルックは、そのまま地面に叩きつけられる。
「ガルック!!」

 意識を失ってるのか、さっきからガルックはピクリとも動かない。
 だが、イリノアは剣を構えると、ガルックに向かって突進していく。
「これでとどめだ。」
 イリノアは、猛スピードで突進すると、ガルック目がけて剣を振り下ろす。
「ガルック!!」
 ニーナは思わず悲鳴をあげる。

 だが、次の瞬間、
「リックソート!!」
 ラルフから放たれた闘気が、自分の方へと近づいてきているのに気づいた
イリノアは、それを予期していたのか、ガルックから離れる。
 一方、ラルフは、イリノアがすぐにガルックから離れたのを見て、最初から
イリノアはガルックを倒すつもりはなかったことに気づく。
 イリノアは、自分が出てくるのを、待っていたのだ。
 だが、それだけのために、ガルックをここまで叩きのめしたことに、ラルフは
怒りを覚えていた。
「やっと戦う覚悟ができたか、ラルフ。」
「イリノア、俺を誘い出すためだけに、ガルックを・・・」
 ラルフが激怒している様子を見て、イリノアはフッと笑う。
「コイツでは、私の相手にならんことぐらい、お前も気づいていたはずだ。
 最初からお前が戦っていれば、コイツも傷つくことはなかった。」
 イリノアはそう言うと、ラルフに向けて剣を構える。

「勝負だ、ラルフ。今こそ、剣道の時の借りを返させてもらう。」
 イリノアはそう言うと、ラルフに向かって剣を構える。
「いくぞ、スーパーソニック・グランダート!!!」
 一瞬、イリノアの剣が光ったような気がした。
 だが、次の瞬間、無数の衝撃波が、ラルフのすぐ横を通り抜ける。
「なっ、今のは!?」
 その衝撃波の威力は凄まじく、一発でも当たっていれば、その時点で決着が
ついていただろう。
 だが、イリノアは、あえてラルフに一発も当てることをしなかった。
 それは、絶対的な自信からだろうか。
「今のは、お前へのサービスだ。」
 イリノアはそう言うと、ラルフの方を見て、ニヤリと笑みを浮かべる。

「この勝負、ラルフに不利かもしれんのう。」
 この戦いを見ていたリグアーのつぶやきに、ニーナは反応する。
「そんなことありません。ラルフは、絶対に勝ちますよ。」
 ニーナが強い口調でそう言うと、リグアーは思わず苦笑する。
「ニーナ、お主がそう思いたいのはわかるが、ルードの時とはわけが違う。
 ルードは魔導士じゃったから、一撃必殺の魔法を持っていても、ラルフは
持前の機動力で何とか対抗できた。
 じゃが、今度のイリノアは、覇王流最強の戦士。
 素早さに関しては、魔導士のルードとはケタが違う。
 それに、さっき、イリノアが放ったスーパーソニック・グランダート。
 あれは、本来は、超音速の衝撃波を放つ技。
 じゃが、イリノアが放つと、もはや衝撃波の軌跡すら捉えられなくなる。
 スピードが桁はずれということは、破壊力も桁はずれということじゃ。
 あれを全部かわすのは、このワシでも不可能に等しい。
 恐らく、ラルフは、イリノアの技を捉えることすら・・・」
「そんなことないですよ!!」
 リグアーの話に、突然、割って入ってきたのは、なんとティアナだった。


(続く)
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◇登場人物◇
・ラルフ=ガートナー
ガイガードに住む17歳の少年。伝説の武器ヴェクト・ソードを使いこなす。
・ニーナ=ルクライエ
ガイガードに住む17歳の優しい女の子。不思議な能力を持っている。
・ガルック=ソート
キルアに住んでいた17歳の少年。魔法と覇王流という剣術を使う。
・エミリー=ガートナー
ラルフの妹で、15歳の女の子。子ども扱いされるのを、非常に嫌う。

なお、登場人物の紹介は、VesterProjectのHPで詳しく紹介しています。
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