内藤証券メルマガ「中国株レポート」No.104
2007/10/22 No.104
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★内藤証券メルマガ「中国株レポート」★
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】月一連載「中国街角ウォッチ」(第8回)
【2】大国“中国”の行方(第3回)
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★☆月一連載「中国街角ウォッチ」(第8回)☆★
朝日新聞の記者でテレビ朝日のコメンテーターである加藤千洋
氏の話を聞く機会が先ごろあった。テーマは「中国の現状」とい
うものだったが、中国の水不足、砂漠化の問題と10月の党中央新
人事に関することであって、特に胡錦濤政権の安定性についての
話題が中心となった。この中で89年4月15日に亡くなった胡耀邦
党総書記の墓が江西省の共青城にあって、彼が墓参したときの話
が興味深かった。
「共青」とは「共産党青年団」の略称だが、私が「共青」と言
う言葉を耳にしたのは、日本政府初の無償援助案件である中日友
好病院建設関連の仕事に携わっていた時代、1979年ごろで、事務
所にテレックスを入れるに当り役所への口利きをお願いしようと
思って、当時仕事を通じて時々会っていた中国サイドの建設担当
責任者、北京市建設委員会副主任・李瑞環に電話でアプローチを
かけたときのことであった。
電話はなかなか繋がらず、やっとかかった建設委員会からは
「今はここにいない。李瑞環は「共青」の書記として転籍してし
まった」というものであった。中国を良く知る友人に話すと「共
青と言えば中国でもいわば『奥の院』で、日本の商社が簡単にコ
ンタクトできるところではない」というのだ。たかがテレックス
のことをそんな人に頼むわけにはいかないということで、そのこ
とは結局別の筋にお願いしたのだが、共青の名はそのとき以来気
に留めるようになったのである。
その共青団、正確には中国共産主義青年団と称し、発足は1922
年というから新中国成立を遡ること27年も前である。元来は青年
が共産主義とはいかなるものかを学ぶための学校のようなもの
だったらしいが、今では共産党に入るためのエリートコースとし
て多くの団員を抱えている。80年代以降、政界トップの多くが共
青団幹部出身者によって占められるようになったのは、中国政府
も人脈によって支えられる組織だからであろう。前述の李瑞環な
どはその走りである。彼の前任の胡啓立が78年共青団中央書記処
書記となり、80年に天津市長に転任するに当たり、共青団書記に
李瑞環をすえ、彼が82年天津を離れ再び北京で党中央弁公室主任
になるときには、天津市を李瑞環に委ねたのであった。
さて、共青城だがそもそもは1955年、上海の青年知識分子(中
国語でも熱血青年とあるが)98名が革命の精神を具現化すべく、
国家建設の情熱に燃え、江西省の山間部に乗り込み、荒地の開墾
に着手したのが始まりで、同年ここを訪れた胡耀邦が「共青社」
と命名したことに由来する。爾来、既に52年が経過しているので
ある。資料によれば、そこは21平方キロ、人口は10万人余りに
なっているが、道路の並木は美しく繁茂し、きれいに手入れがさ
れており、都市にありがちな喧騒とは無縁で、工場の煙突から出
る黒煙も無く、山水自然の風光に溢れていると記されている。87
年1月、政治局拡大会議で「集団指導原則に対する違反と政治原
則問題での誤り」を指摘され、党総書記の席を下ろされ、89年4
月15日、失意のうちに心筋梗塞でこの世を去った胡耀邦は遺言に
よって、この地に埋葬されたのである。彼は1915年11月、湖南省
の貧農の子として生まれ、33年共産党に入党、共青団第一書記を
皮切りに、陝西省党委員会第一書記などを歴任、1967年文革で実
権派と責められ失脚するが、文革後の75年再び帰り咲きを果た
し、80年には党総書記にまで上りつめるのである。改革・開放路
線を進める胡耀邦に対するトウ小平の信任は特に厚いものが有っ
たようだ。83年11月には訪日、早稲田大学での講演は日中間の友
好関係を確信させるものだったが、その後青年交流事業にも力を
入れ、日本の青年3000人を中国に招待したりもした。87年1月の
政治局拡大会議で辞任を強要された罪状のひとつにこうした事業
が独断で行われたことに対する批判も含まれていたというから情
けない。この訪日のときに彼は中曾根康弘首相とも首脳会談を行
ったが、中曾根はその年の靖国神社参拝を取り止めた理由に「自
分が靖国参拝をすると親日派の胡耀邦に不利に働く」という政治
的判断もあったと言う。
加藤千洋さんは共青城を訪れ、係の女性に胡耀邦葬儀のときの
様子を聞き、案内された倉庫で葬儀のときに送られた花輪を目に
したのだという。親族代表の胡徳平(長男)の花輪は中央にあっ
たが、当時の国務院首脳の名前は全く見当たらず、ただチベット
自治区党書記・胡錦濤の花輪のあるのを見て共青団の繋がりを改
めて認識したという。10月半ばに予定されている第十七回全国代
表大会でいかなる新人事が決定されるのか、その行方を占う意味
でも改めて「共青」の存在が大きく見えてくるような気がする。
(日本景徳鎮株式会社代表取締役 金丸健二)
【執筆者略歴】
総合商社で30年余り中国貿易に従事、中国各地の駐在経験を経
て、1996年からジェトロ北京にて海外投資アドバイザー。2000年
より日本景徳鎮(株)代表取締役の傍ら母校東京外語大学講師な
どを務め、2004年から千葉商科大学大学院・客員教授として企業
マネージャーを対象にした中国投資リスクマネジメント講座を
コーディネート。2007年からDOWAホールディングス(株)社外取
締役に就任、今日に至る。
著書には「私は一度も中国人に騙されたことはない」(ジャパ
ンタイムス刊)「一番役立つビジネス中国語会話」(池田書店
刊)ほか月刊宝島にコラム「激闘中国」を連載中だが、現場主義
に立脚した分かりやすい講演には定評があり、日本各地を飛び回
る毎日。
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★☆大国“中国”の行方☆★
―第3回「農民工問題」―
中国では農民や農民工(農村からの出稼ぎ労働者)の地位は低
いとよく言われる。先日の中国紙「経済日報」によると、農民工
の2006年平均月収は前年比9.9%増の946元だったと報じられた。
今年初めに上海市統計局が発表した2006年の都市部住民一人当
り平均可処分所得2万668元(単純平均月1722元)から比べると、大
きな差がある。また、社会保障、子供の義務教育や労働条件など
多くの点においても、農民工は都市部住民と比べて差別的な扱い
を受けている。
最近、私は「大地の慟哭 中国民工調査」(秦尭禹著、PHP出
版)という本を読んだ。この本自体は、2005年1月に中国で出版さ
れ、今年になって日本語訳が出たため、書かれている内容自体は
04年当時のこととなり、現在からすれば少し古いかもしれない。
しかし、農民工(同書では民工と表現)を知る上で、良い本だと思
う。今回は、この本の感想、農民工について少し書いてみたい。
■農民工の実情■
北京や上海にそびえる高層ビルやインフラ設備を建設したのは
彼ら農民工であり、世界の工場としての地位を支えたのも彼ら農
民工であった。現在の中国経済を支えてきたと言っても過言では
ないだろう。
しかし、本書に出てくる農民工の多くは、劣悪な環境下で仕事
をしている。何十人もの労働者が一つの部屋に何カ月の間も閉じ
込められ、1日十数時間にもおよぶ重労働や残業をさせられる。
また、社会保障も十分ではなく、労働災害に対しても保障を受け
られず、田舎に帰るだけであった。さらに、社会的な地位は低
く、多くの場合、賃金さえまともに貰えなかった。
農民工の権利を守る法律はあるが、訴訟を起こすためのお金も
知識もなく、唯一できる方法は建設中のビルから不払いの賃金を
求めて「飛び降りる」ことぐらいだった。
その状況に変化が起きたきっかけは、2003年に温家宝首相が三
峡ダムを視察した際、偶然に訪れた山村で農民から農民工の賃金
不払いの話を聞いたことだった。
温首相が普通の農民に注意を払ったことは、社会全体に大きな
反響を及ぼし、政府やメディアによる未払い賃金の精算運動へと
発展していった。各地で未払い賃金の支払が行われ、悪質な賃金
欠配企業は公表された。
■民工荒■
未払い賃金の問題は、このようにして改善の方向に向かった
が、農民工の権利等についての問題は多くが解決されず、労働者
を募集しても人が集まらないという“民工荒”という現象が起き
た。その理由として本書では低賃金や人材の需要と供給のアンバ
ランスなどいくつか挙げられているが、労働者の価値観の変化と
権利の低さが原因であった。第一世代の農民工と比べると現在の
農民工は家族のために耐え忍んで仕事をすることから、自分自身
のために仕事をするようになった。さらに、情報が豊富になり、
選択の幅も拡がった。しかし、賃金や権利は今までどおり低いま
まであったことから、農民工の反発が起きた。
さらに、本書では農民工の子供や農村での教育問題にも触れて
おり、都市では農民工の子供はいじめや差別など色々な問題を抱
え、また、農村部の「留守家庭児童」の教育は危機的な状況になっ
ていると報告している。
■持続的経済成長のために労働者の権利向上へ■
同書はその名前の通り、農民工の実態を描き出しただけで、解
決方法については書いていない。実際に色々な問題が重なり合
い、簡単には解決しないだろう。しかし、この問題は中国にとっ
て早急に改善しないといけないものである。人権上や道徳上、解
決しなければいけないということではなく、中国の経済成長を持
続させる上で必要である。中国経済には個人消費の増加が必要で
あり、そのためにも、個人の所得向上が不可欠である。
今年、中国政府は企業所得税法や労働契約法の改正を決めた。
特に、労働契約法の改正では書面による労働契約の締結や退職金
についての規定までされ、労働者の権利が大幅に向上した。しか
し、中国は法治国家というよりは人治国家という側面の方が強
い。法律で規定されても末端では法律通りの運用が行われないこ
とがよくある。だが、この問題に関しては法律に則った運用が行
われ、中国経済の持続的成長のためにも労働者の権利向上を望ん
でいる。
また、今月、中国共産党大会が開催された。農民工や農民の権
利向上や社会制度の抜本的改革が少しでも前進することを望みた
い。
(中国部アナリスト 有井誠)
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