2008.5.23メネフネニュースレター
DISPLACEMENT HULL
そのサーフボードのライディングを実際に目にしたのは確か6年ほど前のこと、クリ
ス・クリステンソンのフィッシュを抱えて、一人でふらりと行ったカリフォルニア。
PCも持たずウェイブ・インフォメーションも知らずに行ったマリブで遭遇した頭半
の波。ファーストポイント、セカンドポイントと移動しながら6時間近くも入ってい
た。波にやられボトムの玉石に腰を強打した痛みをこらえつつ、真っ白なスープの中
をパドルバックする私の目に飛び込んできた一人のサーファー。6フィートあるかな
いかくらいの丸っこいエッギーなサーフボードでピークの奥からテイクオフし、ドロ
ップインしようとするロングボードを牽制しながら物凄いスピードでマリブのロング
ウォールを走りぬけるクリアのサーフボード。疲れ果てて海から上がるとそのサーフ
ァーがいた。ボードを見ると見慣れたシングルスタビライザーのセッティングとはま
ったく違い、3本のフィンBOXが真横に並んでいた。
そのボードに見覚えがあった私は日本に戻り、雑誌のバックナンバーのバイヤーズガ
イドをめくって、そのサーフボードと同じフィンのセッティングのサーフボードを発
見した。「LIDDLE SURFBOARD」とキャプションがついていたが、私
は自分が大好きなマリブのサーファー、J・RIDDLEのサーフボードレーベルだ
と勝手に思い込んでいた(スペルが違う)それが私が(間違っていたのではあるが)
始めてHULLというサーフボードを認識した時である。
それから6年経った今、急にこのHULLというデザインが気になり始めてしまった。
そのきっかけを作ったのは1968年製のホビー・ギャリー・プロパーモデル。ウェ
ッジと銘々されているほど強いVEEが入ったボトムデザインにポリプロピレン製の
フレックスフィンが付いている。エッジなど無くアッパー気味にも見える全く引っか
かりが無いソフトレールに、ロールドボトムとVEEボトムが組み合わされたボトム
が生み出す独特のグライド感と滑らかなスピード感。コンケーブボトム(凹んだボト
ム)イコール、スピードだと思い込んでいた私にはちょっとした衝撃だった。そして
調べていくうちに、このVEEボトムと先に登場したHULLが同じ進化の系譜上に
あるデザインだということが判った。6年前のマリブで見たあのシーンが蘇ってきた。
コンケーブはボードの後方へ流れる水流を作り出してスピードを生み出す。一方この
ディスプレイスメント・ハルというデザインは、「ディスプレイスメント」日本語に
すると「置き換える」という言葉のとおり突き出したボトムが海水を押しのけること
と薄いレール、フレックスするフィンの反作用で矢のようなスピードターンを可能に
している。ディスプレイスメント・ハルというのはもともと船舶のデザインに使われ
る用語で、タンカーなどのように一定の排水量を持ったまま走り続ける船体デザイン
を指している。前方を持ち上げながら走る船体をセミ・ディスプレイスメント・ハル、
スピードボードのように海面を滑走しながら走る船体をハイドロプレーンハルなどと
呼ぶが、これら二つと較べてみるディスプレイスメント・ハルがどういうものかイメ
ージしやすいと思う。
雑誌の写真や映像を見ていると、このディスプレイスメント・ハルやトラッカーと呼
ばれる60年代後半のワイドテールのVEEボトムは波側のレール全体を使って独特
のボトムターンしていることに気がつく。通常のボトムターンはテール方向にボード
が斜めに沈み、ノーズは斜め上方を向いてターンしていくが、ディスプレイスメント
はその言葉の意味の通りにまるでタンカーが平らな水面を進むようにボード全体が波
側に傾いてノーズ近くまでのレールを海面に突き立てながらターンをしている。常識
的に考えるとこの体勢ではボードは傾くだけで曲がらない。ビギナーのころロングボ
ードでターンしようとして、ボードの片方に体重をかけた結果ボードは傾くだけで曲
がらずワイプアウトしたという経験をしたことがある人がいると思う。しかしディス
プレイスメント・ハルはその体勢でないとターンはうまくいかずスピンアウトしてし
まう。
このオリジナリティあふれるボードの性格こそがディスプレイスメント・ハルのネー
ミングの由来だろう。タンカーや貨物船のように一定の喫水線を保ったまま走る。サ
ーフボードに置き換えるとターンの最中もボードの全体を使い、ロールドボトムで水
を押しのけながら走る。それを支えているのが薄いピンチレールと長いフレックスす
るフィンである。前方寄りのバランス、薄くシェイプされたSデッキのテールなどハ
ル独特のデザインはすべてこのターンのためである。果たしてこのターンを求めてこ
のボードデザインが出来上がったのか、それともこのボードデザインだったからこの
ターンになったのか?
テールを沈めたピヴォット的なターンになりがちなバックサイドのサーフィンには向
かないと言われるのもこの独特のターンが理由だが、バックサイドでもディスプレイ
スメントの姿勢でターンができれば問題ないはずである。SURFER‘S JOU
RNAL VOL15 #2 P74に大きく出ているSTEVE KRAJEWS
KIのカットバックと思われる写真はバックサイドで見事にディスプレイスメントの
姿勢でターンしている。しかし、あえてバックサイドでのサーフィンを見放してしま
っているのは、あの弾かれたようなターンを求めた結果のボードデザインなのだろう。
ダウンレール、ボトムコンケーブといった一般に知られているボードデザインとは全
く違う系譜をたどって作り続けられてきたディスプレイスメント・ハル。なんとなく
秘密のベールの向こう側にあるように感じていたディスプレイスメント・ハル(この
名前がまた拍車をかけている)もその歴史背景とデザイン、言葉の持つ意味やライデ
ィングの映像など、様々な角度から考えてみると少し身近なものになったような気が
してくる。ロールドボトムの滑りの気持ちよさを体感するために、実際に作ってみよ
うと考えている。忘れてはいけないのは薄いナイフィーなピンチレールにフレックス
フィン。アウトラインとフィンの位置、そしてシェイプのバランスでディスプレイス
メントの度合いが変わってくるはずだ。それらをどのように組み合わせるかはボード
のサイズも含めてこれからのお楽しみである。
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こんにちは。メネフネビーチストアの宮嶋です。今回はちょっと不思議なサーフボー
ド、HULLと呼ばれるデザインについて考えてみました。言葉の持つ意味やHUL
L愛好家たちのコメント、映像や歴史などを調べていくうちに少しずつディスプレイ
スメント・ハルと呼ばれるサーフボードのことが判ってきました。先日、川南活さん
とこのボードについてお話をしたのですが、活さんもこのボードデザインについて私
と全く同じ解釈をお持ちでした。
「EVOLUTION」という1969年に作られたトランジション期のVEEボト
ムやジョージ・グリノウが登場する映画があります。そのワンシーンで丸いロールド
ボトムと思われるサーフボードで、例の波側に倒れこむようなターンをしたとき、サ
ーフボードのボトムを白い飛沫になった海水ではなく、透明なままの海水がボトムの
ロールにくっつくように滑らかに流れていくのが見えました。それはこのボードデザ
インが持つ滑らかな気持ち良さを理屈ではなく直感的に感じさせてくれる映像でした。
そしてもう一つ。これは事実関係は確認できていませんが「MORNING OF
THE EARTH」のとてつもなく有名なマイケル・ピーターソンのキラのシーン。
ここでMPが乗っているエッグっぽいサーフボード。これもディスプレイスメント・
ハルに近いデザインではないかと睨んでおります。明らかに前後に登場するダウンレ
ールと見て取れるサーフボードとは違う動きです。これはこれから調べてみようと思
ってます。
とりあえずは、8フィートくらいの長いのか6フィート代の短めかどちらか悩んでお
ります。カツカワミナミサーフボードのミニモデルくらいのサイズで作ったらかなり
楽しそうに思えます。
■メネフネ新着情報
●クリステンソン フィッシュシモン
シンプルなクリアでクアッドフィン、長さは9フィートのフィッシュシモンが入荷し
ました。画像アップ少しお待ちください。
「フィッシュシモン」というネーミングですがクリスが、シモンはスキップ・フライモ
デルなので使いたくない(もちろんスキップさんに敬意を表してです)ようなので私も
それにならって今後はフィッシュテールグライダーという呼び名にしたいと思います。
11フィートの私のグライダーとシェイプは同じです。走りますよ〜。
●フィッシュ専用ニットケース
もうホームページチェックお済とは思いますが(笑)いちおうご紹介しておきます。
http://www.menehune.on.arena.ne.jp/boards/fishknitcase.htm
ニットケースですが肉厚のニットを使っていてレール部分を二重するなど、移動中の
車内で大事なボードをがっちりガードしてくれます。
●ニールパーチェスサーフボード
http://www.menehune.on.arena.ne.jp/boards/nealpurchase.htm
ニールパーチェスジュニアがシェイプを受け継いでやっと、お待ちかねに再開しまし
た。第一弾はフィッシュが二本もうすぐ入荷します。カスタムオーダーも可能で納期
は以前と同じ約2ヵ月です。ラインアップにないカスタムシェイプも可能です。細か
いサイズ等ご相談の上、ご希望通りのサーフボードをお作りします。お気軽にお問い
合わせください。
●FISH FRY JAPAN
いよいよ来週末です。私はカツさんとクリスさんのフィッシュ持って遊びにいきます。
皆さん一緒に遊びましょう!波あるといいですね。
フィッシュフライジャパン
5月31日(土)8:00〜
於 静岡県静波海岸
それではまた次回まで!
MENEHUNE BEACH STORE
宮嶋憲士
東京都町田市原町田2-2-5 オードリービル102
Phone&fax 042-732-1206
http://www.menehune.on.arena.ne.jp/
menehune@mbp.ocn.ne.jp