競馬の文化村「もきち倶楽部」 No.861
競馬の文化を発信するメール・マガジン 2008 年03月26日発行
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
競馬の文化村「もきち倶楽部」 No. 861
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●
▼目 次▼
■ 飯田正美の競馬よろず雑記帳 第13回 飯田正美
「グッドラック !」
■ 馬の名前に文化を読む 第312回 森本 健
ルイジアナ ダービー:Pyro 牡3歳
■ 佐藤正人著『わたしの競馬研究ノート』 第538回 編:山本一生
競馬ノート15:競馬切抜帳(38)
目標は1日1勝。ばんえい競馬不滅の2千勝騎手
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 飯田正美の競馬よろず雑記帳 第13回 飯田正美
-----------------------------------------------------------------------
「グッドラック !」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
先週の日曜日およそ 4 時 15 分ごろ、中山競馬場の記者席隣り、某ラジオ放
送室が沸きに沸いた。どうやら、最終レース三連単 641 万円を取った人物がい
るらしいのだ。
数分後、同局の解説者でもある当社・宮崎先輩トラックマンが騒ぎの渦の中か
ら戻り、懇切丁寧にみんなに解説。やはり、「大穴アナウンサー」の異名を取る、
Y 氏がゲットしたらしい。
「これでもきち倶楽部の話題ができたかな。今週はこれで行こう」
不謹慎にもそう考え、宮崎先輩に取材を敢行。当方も出演しているラジオ局だ
から、Y アナウンサーとは当然面識もある。しかし、こんなムードの中、とても
話を聞きに行く度胸はない。それで宮崎先輩なのだが、
「こんなの、あんまり書くんじゃないよ。今もJRAの職員に税務署がうるさい
からあまり騒がないようにと言われたばかりだからな」
と、釘を刺されてしまった。
ごもっとも。で、騒ぎの一段落した翌週に地味にご紹介と相成りました。
「大外のチャレンジシチーから買ったらしいよ。三連単、75 点くらいらしいか
ら大したもんだよな」
「ところで飯田さん、これまでもらった払い戻し金で最高はいくらぐらいですか
?」お酒の席で誰かが大勝ちしたという話題になると、必ずといっていいほど聞
かれてしまう。
「ボクは全然ですよ。75万ぐらいですかね。それも、ずっと前のことですよ」
当方、馬券は自分が予想したレースはすべて、それも自分の予想通りに買うこ
とを基本スタンスとしてきた。だから、大穴馬券を取るということは少ないし、
一レースに集中してつぎ込むこともないから、大勝ちすることもなかなか難しい。
最近では、アドマイヤジュピタの勝ったアルゼンチン共和国杯で、三連単プラ
ス馬連のダブルで 30 万円ぐらいを儲けたのが最高。人に聞かれると見えも張り
たくなるが、最近はむしろ大勝負、大勝ちしないことをひそかに誇りに思うよう
になっている。大穴狙いの人はそういつもいつも的中というわけにはいかないし、
たまに大勝ちする人は、やはり大負けだってすることもある。
馬券を買っていると、たまに覗き見されることがある。そんなとき、以前は百
円単位、三百円単位の券面を見られることに抵抗があったが、今は違う。オレは
こんなつつましい買い方をしているのだよと、自信を持っている。拡大コピーで
もして、見せてやりたいぐらいの気持ちだ。
もうずいぶん昔のことになるが、旧中山の馬主役員室 ( 広いフロアーになっ
ていて、同じ空間で記者もパドックが見れたし、馬券も買えた ) で先代のメジ
ロの当主、北野豊吉さんの買う馬券を何度か覗き見させてもらったことがある。
馬券のほとんどは、人気のあるなしにかかわらず、メジロの馬の単勝、千円だ
った。リンリンランラン留園のオーナー氏 ( ペキンリュウエン、ナンキンリュ
ウエン ) が黒い大きな鞄を秘書に持たせ、一レースに何千万円も馬券を買うと
噂されていた、ちょうどそのころだ。
競馬場に向かう早朝の武蔵野線の車中で、ときどき一緒になる 4 〜 5 人のグ
ループがある。メンバーのほとんどは専門紙を持たず、日刊紙。中には、競馬欄
だけを抜き出して持っている人もいる。重そうなクールボックスを持ち、まるで
遠足気分。
「オレ、競馬に行く前の日ってなかなか寝付かれないんだよな」
「そうそう、オレもそう」
まるで、もう一杯入っているかのようなハイテンションな会話。
「グッドラック!」
ニコニコ笑顔に、思わず心の中でそう声をかけた。
========================================================================
♪♪ 近衛文麿、志賀直哉から“日本のマザーテレサ”まで、
吉田絃二郎、柳田国男から松根東洋城まで、
多彩な登場人物が織り成す、華族社会の桎梏のドラマ!
有馬記念の“父”が遺した恋の日記。
行間から現れた意外な事実とは・・・
東京大学名誉教授・伊藤隆氏推薦の本格歴史物。
山本一生著『恋と伯爵と大正デモクラシー 有馬頼寧日記 1919』
四六版上製 368 頁:税込 2,100 円
日本経済新聞出版社
http://www.nikkei-bookdirect.com/bookdirect/item.php?did=16636
「日記とはもともと、その周辺の人々の物語の集合体なのかもしれない。
有馬日記の人々について調べながら、たびたび奇妙な感覚に襲われたのは、
そのためだろうか。これは日記ではなく、創作ではないか、との感覚であり、
私が興味を抱いているのは、有馬頼寧という人間ではなく、有馬日記という
物語ではないか、との思いである」
(「あとがき」より)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 馬の名前に文化を読む 第312回 森本 健
-----------------------------------------------------------------------
ルイジアナ ダービー:Pyro 牡3歳
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
伝統の一戦ケンタッキー ダービーへの重要なステップレースのひとつ、ルイ
ジアナ ダービー(G2 ダ 8.5F)は、 3 月 8 日フェアグラウンズ競馬場で行わ
れ、Pyro が勝った。
同レースは 1898 年の創設だが、経済的な背景など様々な事情でレースが行わ
れていない時期がある。最近ではハリケーン カトリーナがニューオーリンズを
襲ったことによる洪水で、 2006 年のレースが中止された。
それだけに却って地元のファンは思い入れが強いようで、初期のルイジアナ
ダービー馬でケンタッキー ダービーを勝った Black Gold は彼らにとって永遠
のスーパースターである。
同レースの勝ち馬としては Black Gold の他、近年になって Grindstone がケ
ンタッキーダービーを勝ち、勝ち馬ではないが Funny Cide もここをステップレ
ースとした。
Pyro (牡 3 歳 父 Pulpit 母 Wild Vision)
Pyro はラテン語の「火」を表す言葉で、したがってルイジアナ ダービーを
勝った号の Bloodhorse 誌の表紙は「Hot Horse」「Fires in Louisiana Derby」
と言った表記が並び、記事のタイトルも Fire Works「花火(同時に Fire つま
り Pyro が仕事をした、やってのけたの意味を含んでいる)」となっている。
Pyro は接頭語として様々な言葉に用いられており、その省略形として単に
Pyro と表現することがある。学術用語や専門用語に多いのだが、中に
Pyromaniac「放火魔」の略として一般の人にもよく使われるとあった。確かに日
本語でも「火の事」といえば「火事」であり「火付け」といえば一般的な着火で
はなく「放火」を意味するから、「火」だけで「放火魔」をイメージするのは分
る気がする。
この馬の命名の背景がまだよく分らないのだが、最近はゲームやコンピュータ
の世界でもよく使われているから、案外そのあたりとも関係しているのかもしれ
ない。ゲームではもちろん「火」の技を得意とするキャラクターの名前だし、コ
ンピュータではリナックスのウェブブラウザーであるファイヤフォックス「火狐」
のデスクトップにこの名前がある。
父親 Pulpit は、牧師などが使う「演壇」と以前書いた。グーグルで検索して
「画像」タブをご覧になると様々な種類の演壇を見ることが出来るので、ご興味
のある方は一度検索されることをお薦めする。
本馬との名前のつながりは音の連想以外には見出せない。
母親 Wild Vision は、「大胆な見通し、野蛮な見方」という意味である。日
本でもワイルドというカタカナ語を使う人が増えているようだが、この言葉確か
に日本語の「野蛮な、無謀な」という意味もあるが、それよりもややマイルドな
ニュアンスで使われることが多く、そういう「感じ」を出そうとしているのであ
ろう。ここでも「無謀な計画、見解」というよりは、「荒削りだけど面白そうな
見方、先行き」という前向きな感じに取れる。
この Wild から「野火」を意味する Wild Fire を連想したのかとも思えるが、
かなり無理がありそうだ。実際この Wild Vision の血統表を眺めていると、祖
父の Icecapade だの、祖母の Carols Christmas だの、氷や雪、つまり「白」
を連想される名前が多い。はるかに遡っていくと Carols Christmas の父
Whiteburg の更に父親として、「白」にたいする反語のような形で Crimson
Satan「深紅のサタン」がかろうじて登場する。
Pyro の成績はこれで 6 戦 3 勝 2 着 2 回 3 着 1 回、2 歳時はシャンペイ
ンS、BCジュベナイルともに War Pass の 2 着で重賞未勝利だったが、3 歳
になってこれで前走リズンスターS (G3)から 2 連勝、順調に成長してきてク
ラシックの最有力候補の 1 頭となった。陣営では次戦をブルーグラスSに予定
しているようだ。
ケンタッキーダービーに向けての情報は、本家本元のチャーチルダウンズ競馬
場が主催する下記サイトが豊富で便利だ。主な馬の成績からレースヴィデオも見
られるので、是非ご覧あれ。
http://www.kentuckyderby.com/2008/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 佐藤正人著『わたしの競馬研究ノート』 第538回 編:山本一生
------------------------------------------------------------------------
競馬ノート15:競馬切抜帳(38)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
目標は1日1勝。ばんえい競馬不滅の2千勝騎手
------------------------------------------------------------------------
文芸春秋(90/12 月号)のグラビアのページに、このような見出しの記事が、
ばんえい競馬の写真と説明文とともにのっている。
ばんえい競馬は、今では北海道でなければ見られないから、東京や中山ばかり
で、中央競馬を見ている競馬ファンは、おそらく見たことはないであろう。
ばんえい競馬は、サラブレッド競馬のようなスピードを競うものではないが、
サラブレッドの2倍もあるようなたくましい重種の馬(ベルシュロンが多いよう
だ)が、ソリに決められた重量物をのせて、走るというよりもひっぼりっこ競走
をするのも、サラブレッド競馬とちがった面白味があると言ってよいであろう。
均整のとれた美しいサラブレッドも、もちろん心を楽しませてくれるが、筋骨
たくましい1トン以上もある重種は、また別の美しさを持っている。貧弱なサラ
ブレッドなどおよびもつかないほどの堂々たる美しさを持っていると言ってよい。
さて、以下に文春の記事を全文紹介してみよう。
ソリに決められた重量物を積載して走り、スピードを競う北海道独自の「ばん
えい競馬」界から競馬史上初という2千勝騎手が誕生した。昭和44年5月が初
騎乗というベテラン、金山明彦騎手(39)がその人。
「父がばんえい競馬用の馬の家畜商だった関係で、子供の頃から、ばんえい競馬
の騎手になるのが夢でした。17歳の時に騎手になり初騎乗初勝利を記録したん
ですよ。当時は若い騎手は珍しい時代でした」
以来、22年間をかけて前人未到の2千勝を記録したのが、今年の8月7日。
それ以後も1日1勝をノルマに記録を伸ばし続けている。
「勝つための条件は強い馬に乗ることと、コース上の障害をいかにうまく越える
かです。強い馬といっても体が大きいということと関係はありません。血統と素
質が第一で、力とスピードの両方がないと、ばんえい競馬は勝てません。馬も人
間と同じで素直な性格の持ち主が大成するんです」
平地の競馬では馬7分、騎手3分といわれるが、ばんえい競馬は、騎手8分と、
騎手の技能が評価されるという。大きな馬を、どのようにして自分の自由にする
かが難しくもあり、面白味でもあるという金山騎手の次の目標は、「45歳まで
は騎手を続け、2千5百勝を達成したい」
頑張って下さい。
サラブレッドの競馬だけしか見ていない人たちに、ぜひこのばんえい競馬を見
せてやりたいと思う。ばんえい競馬に出る馬が、実にすばらしいのである。馬に
もこんなのがいるのかと、サラブレッドばかり見ている人たちには、最初は違和
感をおぼえるかもしれないが、よくよく見ていると、その偉大な、たくましい馬
格に魅了されるであろう。そして、わが国にもサラブレッドやアラ系の馬の競馬
ばかりでなく、こんなばんえい競馬があることを感謝する気持になっていくにち
がいない。
(91/9/1)
========================================================================
日本競馬史に永久に残るだろう『競馬研究ノート』シリーズのどのページ
を開いても、未踏の時代を先駆者として生き抜いた温厚な教養人の魅惑的
な低音が聞こえてくる。
ぼくらはそれに育てられた
石川喬司
========================================================================
♪♪ 童話から専門書までを駆使して、あなたを興奮の坩堝に誘うミステリアス
な競馬ワールド。「競馬学への招待」から三年、いま競馬学は冒険となる!
山本一生著 『競馬学の冒険』 毎日新聞社 1600 円
競馬がいる 競馬の消えた日
二着の不在、物語の空白 をみなごたちの春
マッチレースへの憧れ エッチンゲンのめまい
競馬場のカストラート ワンダーランドの昨日、今日、明日
ケンタッキーの呼び声 天国に最も近い競馬場
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
競馬の文化村「もきち倶楽部」 No. 861
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
BACK NUMBER http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000042700
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【発行者】 安部俊彦
------------------------------------------------------------------------
【編集人】 山本一生
-----------------------------------------------------------------------
【WEB】 http://www.bunkamura.ne.jp/mokichi-club
------------------------------------------------------------------------
【MAIL】 mokichiclub@bunkamura.ne.jp
------------------------------------------------------------------------
【制 作】 (有)ケーズオフィス
------------------------------------------------------------------------
【WEB】 http://www.kz-office.co.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Copyright(C)2000-2008 もきち倶楽部 許可無く転載することを禁じます。