[聖書を読んでみよう 士師記03]
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______ __ __ __ 聖書を読んでみよう
| __ |__| |--| |-----. 旧約聖書第7巻「士師記」
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|______/__|_____|__|_____| 第2回 つまづいてくイスラエル(2章6〜3章6)
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■■■■■ つまづいていくイスラエル(2章6〜3章6) ■■■■■
12部族はそれぞれ、わりあてられた地へと進んでいきました。ただ聖書は、
ヨシュアの死後も[主がイスラエルに行われた大いなる御業をことごとく見
た長老たちの存命中、民は主に仕えた。]とわざわざ書いています。
つまりそのあと、「ヤハウェがイスラエルにどれほどのことをしたか」を知
らない世代がおこってくると、イスラエルは[バアルに仕えるものとなった。
彼らは自分たちをエジプトの地から導き出した先祖の神、主を捨て、他の神
々、周囲の国の神々に従い、これにひれ伏して、主を怒らせた。]のです。
バアル、そして少しあとに出てくるアシュトレトは、カナン人の宗教の神で
す。ヨシュアが[あなたたちは主に仕えることができないであろう。](*1)
と予告したとおり、ほんの一世代でイスラエルはヤハウェを離れてしまった
のです。
この、ヤハウェに対するイスラエルの裏切りの結果は、言うまでもありませ
ん。
ヤハウェはイスラエルを[略奪者の手に任せて、略奪されるがままにし、周
りの敵の手に売り渡された。]と記録されています。当たり前です。イスラ
エル自身が、最大最強の援軍であるヤハウェから離れたのです。
逆に、「イスラエルを」ではなく「イスラエルの神を」恐れていたカナン人
にとっては、そのイスラエルがヤハウェを離れてバアルにひざまずいたとい
のは、千載一遇というか、飛んで火にいる何とやらです。
(「千載一隅」というのは「10の47乗ぶんの1」の確率という意味なのですが、
残念ながらイスラエルがヤハウェから離れる確立はもっと高かったようです)
こうしてイスラエルは、出陣するごとに打ちのめされるようになりました。
カナンではしょせん少数派のイスラエルです。苦境に立たされたと記録され
ていますが、「あの強い神はどうやらイスラエルとともにいない」と思われ
たが最後、徹底的に敵に叩かれたことでしょう。
読む人によっては、「ほかの神を拝んだからって、そこまで捨てなくてもよ
さそうなものじゃないか。だから一神教は排他的だというんだ」と思われる
かもしれません。
しかしヤハウェとイスラエルの関係は契約にあります。イスラエルが契約を
破ってヤハウェを離れバアルにひれ伏したというのは、妻が結婚の誓いを破っ
て夫を裏切り、夫の目の前で他の男に身をまかせたも同然です。実際ヤハウェ
は、イスラエルが[他の神々を恋い慕って姦淫し]たと言っています。
しかも、ヤハウェは真実そのものです。「全能の神」と呼ばれますが、実は
ヤハウェにできないことがあります。「嘘をつく」というのもその一つなの
です。ヤハウェは自分自身にかけて、かつて「イスラエルが裏切る日、わた
しは彼らを捨て、わたしの顔を隠す」と宣言した自身のことば(*2)に誠実で
あらねばならないのです。
しかしヤハウェは、機械的に契約の条文をふりかざすだけの存在ではないよ
うです。裏切ったイスラエルをも救おうとします。そのためにヤハウェが擁
立したのが、士師なのです。[主は士師たちを立てて、彼らを略奪者の手か
ら救い出された。]と記録されています。
イスラエルの裏切りによってヤハウェが顔を隠すとき、敵対する諸民族はイ
スラエルを圧迫し迫害しました。その時、イスラエルが苦しみうめく時、[主
が哀れに思われたから]士師が擁立され、ヤハウェは士師とともにいてその
存命中は敵の手からイスラエルを救います。ところがその士師が死ぬと、イ
スラエルは前よりもいっそう堕落して[他の神々に従い、これに仕え、ひれ
伏し、その悪い行いとかたくなな歩みを何一つ断たな]いのです。
イスラエルの新しい世代について[カナン人とのいかなる戦いも知らないイ
スラエル]という表現が出てくるのは、しばらくのあいだ戦闘のない時代が
あったということでしょうか。そのこと自体が「神であるわたしがこの地を
イスラエルに渡したのだから、他の民族をすべて追い払え」と命じたヤハウェ
に背反しているのですが、戦闘のないうちに平和ボケして「ヤハウェという
安全保障なんかいらないのさ。それよりもカナンの神々に仕えるほうが、い
ろいろと楽しいじゃないか」と(おそらくはスケベな男たちが)考えるよう
になったのではないかと思います。
ついにヤハウェはイスラエルの背信ゆえに[ヨシュアが死んだときに残した
諸国の民を、わたしはもうこれ以上一人も追い払わないことにする。]と宣
言します。
それは、エジプト脱出以来ずっとヤハウェによって敵中を生き延びてきた先
祖のように、現在のイスラエルが[主の道を歩み続けるかどうか]をためす
ためのものでした。
ヤハウェが全知であるなら、こうしてためした結果がどうなるかも知ってい
たはずです。しかしヤハウェには、「ためす」以外の選択肢は「裏切りのゆ
えにイスラエルを捨てる=イスラエルを滅ぼそうとする他民族の手にまかせ
る」しかないのです。
たとえるなら、イスラエルの裏切りには有罪との断をくださなくてはらなら
いが、(ゼロかもしれない)更生の可能性にかけて執行猶予つきにした、と
いうところでしょうか。
こうして約束の地の中に、いくつかの国が残ることになりました。[そのイ
スラエルの人々の世代に戦いを学ばせるためにほかならなかった。]とある
のは、ヤハウェとともに戦うことを学ばせるためで、ということはイスラエ
ル単独では勝てない強力な相手、イスラエルがヤハウェにつくことによって
のみ安全を守れるような相手であろうと思われます。
ことに、ヤハウェが残した国の筆頭に名があげられているペリシテには、イ
スラエルは後々まで苦しめられることになります。(*3)
士師記では、剛力の士師サムソンがペリシテと戦い、のちにはイスラエルの
初代の王サウルもペリシテと戦います。またダビデ王もペリシテと戦いまし
たが、若い時にはペリシテ軍に身を寄せたこともあるなど、イスラエル史に
いろいろな関わり方をしてくる民族です。
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*1 ヨシュア記24章19。⇒http://www.nunochu.com/bible/06_joshua/jos17.html
*2 申命記31章16以下の、ヤハウェのモーセへの言葉。[この民はただちに、
入っていく土地で、その中の外国の神々を求めて姦淫を行い、わたしを捨て
て、わたしが民と結んだ契約を破るであろう。その日、この民に対してわた
しの怒りは燃え、わたしは彼らを捨て、わたしの顔を隠す。]
*3 「パレスティナ」というのは「ペリシテ人の地」という意味で、現在パ
レスティナと呼ばれる中でも本来はペリシテ人が住んでいた地中海沿岸の平
野南部だけを指すものでした。
しかし紀元2世紀にユダヤの反乱をローマ帝国が鎮圧した時に、ハドリアヌス
帝はユダヤを「シリヤ・パレスティナ」と改称し、ユダヤ人を追放して他民
族を居住させました。このように歴史をたどると、この地をパレスティナと
呼ぶこと自体、ユダヤ人を迫害したハドリアヌス帝に同意する反ユダヤ主義
なのかもしれません。
説明が長くなっていますが、もともとのペリシテ人と現代のパレスティナ人
がつながるのかつながらないのかは不勉強でわかりませんが(イスラム信仰
に帰依したアラブ民族がこの地で台頭するのは7世紀)、現代のイスラエルが
「パレスティナ問題」で苦しんでいるのはもしかしたら、イスラエルの背反
のゆえにヤハウェがペリシテ人を残したことに端を発しているのでしょうか。
ユダヤ教の中でも超正統派と呼ばれる人たちには、現代にイスラエル国家が
再建されたことは「人間が武力によって成したことで、神意によるものでは
ない」と考え、独立記念日も祝わない(ホロコーストから守られる地が確保
されたことは神に感謝するけれど)という人たちもいるそうです。(筆者個
人の考えとしては、ヨシュアや士師も武力で戦うときに神意による勝利が与
えられたのだから、現代でも武力を取ったこと自体が神意に反する理由には
ならないのではと思うのですが。)
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[〜]は聖書の引用です。本誌では特にことわりのない場合、新共同訳聖書
から引用しています。
(c)共同訳聖書実行委員会
Executive Committee of The Common Bible Translation
(c)日本聖書協会
Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988
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