2010/02/07
【書店塾便り(携帯版)】368:出店と人材
こんにちは。【書店塾】です。本日のテーマは、「出店と人材」です。 ---------- 昨年3店舗の新店をオープンしました。それらはいずれも大成功で、グループ内でも1、2位を競う売上を上げています。 物件を探した開発担当者としては内心ホッとしています。また今年は、今月移転オープンした店が大盛況、4月にも移転オープンを予定しており、 出店戦略は順調だと思われていました。 ところが先日の会議で、30代の幹部社員達から暫く新規出店を抑えて欲しい旨の発言がありました。彼らの言い分にも一理ありました。 新規店は確かにうまくいっている。 しかし、それは優秀な人材を投入して、全社をあげて販売応援をしているおかげだ。一方で人材を抜かれた既存店は、ガタガタになってしまっている。 これで会社として出店は成功だと言えるのだろうか。もちろん出店はしたいと思っているが、その為にも今は人材を育成する時間が欲しい、 要約すればこういう事でした。 それを聞いた社長は激怒し、お前達はやる気が無いのか、そんな弱気でどうするのかと、顔を真っ赤にして興奮して机を叩いて怒鳴りつけました。 少々無茶で精神論的な持論を展開していましたが、そのあまりの言いようについ口を出してしまいました。 なぜそんなに出店を焦る必要があるのか。私自身は無論出店したい。だが、彼らが抱いている不安は正直なところ私自身も感じている。 彼らだって新店を出して会社を大きくしたいと思っているが、出店のペースが早過ぎるのではないか。今はガタガタになっている既存店を建て直し、 人を育てる時間をくれと言っているだけではないか。100店舗のチェーン店が1年に3店舗出すのと、10店舗そこそこのチェーン店が3店舗出すのはわけが違う。 既存店の予算達成がどうでもいいならいくらでも出店するが、本部で数字だけを見てとやかく言うのではなく、もっと現場に行って現実をきちんと見てから 判断してもらいたい、と。ちょっと言い過ぎたかも知れません。 要するに、出店のペースに人材が追いつかないのです。今のペースで出店を続ければ会社全体の売上げは一時的に上がるかも知れませんが、 手から砂がこぼれるように既存店が落ち込んでいきかねないのです。少なくとも3年くらい前から、計画的な人材育成に取り組んでおかねばならなかったのです。 ここ数年の追い風で出店のチャンスが訪れているのですが、人材、特に店長の人材が足りません。今まで人を育てることを怠ってきたツケでしょう。 ましてや、自社はスーパーや書店のようなセルフ販売ではなく、接客販売の小売店です。売上は販売員によって大きく左右されます。 有能な社員を抜かれるとたちまち店の売上は下がってしまうのです。 出店したくても人材不足で出店できない。無理に出店すれば既存店が弱体化する。これは伸びているチェーン店に共通する悩みです。 たまたま先日、「日経ビジネスオンライン」の「小売業に夢を翔けて」というスーパー成城石井の大久保恒夫社長の連載記事を読んでいたところ、 まさにこの事が指摘されていました。 「小売業を経営して、一番強く思うのは、人の成長なくして企業は成長しないということである。店舗を新規に出店すれば見かけ上の売り上げは増加していく。 しかし、人が成長しなければ、売り場は乱れていく。人が成長しないのに出店数を増やし、店舗の管理レベルが落ちてお客様に喜ばれない売り場になり、 業績が悪化していく小売業をたくさん見てきた。(中略) 人が成長すればお客様に喜ばれる売り場になり、既存店の売り上げは増える。利益も拡大していく。そのうえで新規出店をしていくことにより、 企業は成長していくことができるのである。」(抜粋) 実は先日、条件の良い出店物件を断りました。賃貸条件は破格でしたが、商圏人口にいささか不安がありました。 私の出店の基準は、年商で最低2億円以上売れるかどうかです。年商3億の店にも店長は一人必要だし、年商1億の店にも一人要るのです。 今、数少ない手持ちのカードを切ってしまえば、大きなチャンスが来た時に出店できなくなると判断したのです。そしてそれは正解でした。 すぐにまた過去最高の立地と商圏で、条件の良い物件が出てきたからです。 今の不況は逆に出店のチャンスでもあります。物件の紹介は沢山ありますし、条件も下がってきています。開発担当としては、人材さえ居れば いくらでも出店できるのにと残念に思います。しかし、トップのレベル以上の店や会社が作れないように、自社の実力以上の拡大戦略は危険です。 自社の身の丈以上の無理な出店を続ければ、いずれ会社の危機を招きかねません。人材の補給無しに闇雲に出店しようとするのは、昔の日本の 「竹槍でアメリカと戦え」と言っているのに等しいでしょう。そういう意味では、暫くは新規オープンではなく、業績の悪い店の移転オープンに 力を入れるべきかも知れません。いずれにせよ、時には頂上を目前にして引き返す勇気も必要なのだと思うのです。 ---------- 【書店塾】http://syotenjuku.okoshi-yasu.com/ 【本の一言】http://syotenjukuword.blog.shinobi.jp/



