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本業は総合商社の営業マン。もと北京駐在。このメールマガジンから、エッセー集 『中国人に会う前に読もう』 と政策提言書 『日本の本領(そこぢから)』 が誕生しました。歴史雑学いっぱいの辛口時評から語学のコツまで、毎号、大脳皮質を刺激します。

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2010/01/03

<国際派時事コラム>元旦社説読み比べ

↓ 週3回更新のブログはこちら
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi


◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆
          http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/


          元旦社説読み比べ


■■■■第284号■■■平成庚寅年1月3日発行■■■◆




 毎年のはじめは北千住駅まで電車を乗り継ぎ、各紙の元旦
号を買いに行くことから始まります。

 途中、西新井大師に初詣をしたら、山門ちかく、手水を頂
くところで、柄杓(ひしゃく)に口をつけてぐいぐい飲み干
している貴婦人あり。

 こんなとき昔は真顔でご注意したものですが、いまは人生
修行の賜物か、にっこり作り笑いをし

「もしもし、ここの柄杓は直接に口をつけて飲むものではな
く、左の手のひらに水をうけてから口に含むのですよ。
わたしも昔、教えていただきまして」

 元旦から、このお節介。
 配信コラムを続けているのも、このお節介根性のゆえであ
ります。

 わたしみたいなシャイな男(…ウソだと思うでしょうが)
が商社マンをやっていられるのも、思えばこのお節介根性が
商社業務の核心だからでしょうか。


■ 毎日新聞主筆の名調子 ■


 恒例の、元旦社説読み比べ。

 例年、毎日新聞社説を高く評価してきた。
 ことしは1面左上に主筆の菊池哲郎さんが年頭の言を書い
ている。

 飄々が天に突き抜けたさわやかさ。
 ああ、例年の名調子はこのひとの筆だったか。


≪スーパーマンはいないのであり、必要でもない。
それを求める風潮は危険でありお任せ主義の責任放棄に結び
つく。

ドジを踏み悩みながらも一緒に成長していくリーダーを、わ
れわれ自身がはぐくんでいくのが民主主義ではないだろうか。

そのための情報公開であり、仕分けに象徴させた決定過程の
透明化だ。

ここは誰か他人の国ではない。われわれが住むところだ。
そこのトップはそこに住む住民を映し出している。≫

≪民主党が政権維持に汲々(きゅうきゅう)とする姿を見た
いと思って我々が多数を与えたのではない。

違った顔ぶれで課題に挑戦するさわやかな政治を見たいから
だ。≫

≪景気は気。
政治が見せるさわやかな気が景気上昇をもたらす。

失敗したら次の選挙で負ければいいのである。
それだけのことだ。≫


 まるで老子の『道徳経』を読むようなさわやかさがある。

 しかし筆が滑ったか、鳩山由紀夫氏を評して

≪一朝一夕には育たない。彼も初めてやっているのだ。≫

と書いたのは甘すぎる。一気にしらけた。

 毎日社説本篇は、筆者交替のせいか凡庸だ。


■ 調整インフレしか手がないはずだ ■


 日本経済新聞は将来課題の列挙に終わった。
 経済紙なら、もう一歩踏み込んで経済政策の方向づけを語
ってほしかった。

 社説を読むだに、年率3~5%の調整インフレ創出へ向け
て国民自身が覚悟を決める以外に道はないと思うが、日経は
それを語らない。
 政権の背中を推すことばが欲しい。


≪財政や社会保障で若い世代ほど負担が重くなる。

5年前の経済財政白書によれば、60歳代以上の人は、生涯を
通じて政府に払う税金や社会保険料よりも、政府から受け取
る年金給付や医療保険の補助など行政サービスが 4,875万円
多い。

一方、20歳代は受け取りが支払いより1,660万円少ない。
両世代の差は約6,500万円にもなる。≫

≪増税や年金給付の削減などの改革をしなければ、100年後に
生まれる日本人たちは、今の貨幣価値で 2,493兆円もの公的
純債務を負う(島沢 諭 秋田大准教授の試算)。≫


 ……と言われても、ふつうのひとは茫然自失。

 日経よ、正直に処方箋を示せ。
 数字の蟻地獄から抜け出すには、額面の帳尻合わせの魔術
しかない。

 ゆくゆくは物価を2.5倍にし、名目賃金を2.2倍にし、政府
の歳入の額面を倍増させ、旧世代へ約束した年金額の額面は
維持しつつ価値を目減りさせて、帳尻合わせをするしかない
だろう。

≪現世代が解決策を出すべきだ。景気が持ち直した後に実施
できるよう準備を急ぎたい≫ 

と言うや良し。

 調整インフレ政策を真剣に実施せよというところまで、踏
み込んで語ってほしい。

 言っておくが、徴収した消費税を国債の返済に当てるとい
うのは、経済を縮こまらせるだけの最悪の政策である。


■ 米国はまったく困っていない ■


 朝日新聞は、これまでの無責任な反米路線へのいささかの
反省が感じられる日米同盟肯定論、に見える。

≪より大きな日米の物語を≫
≪同盟という安定装置≫
などという見出しを見て、朝日も少しはまともになったかと、
だまされるバカがいる。

 全然まともになってません。

 朝日の社論のボタンの掛け違いは、たとえばこういう無理
なこじつけから始まる。


≪米国にとって、アジア太平洋での戦略は在日米軍と基地が
なければ成り立たない。

日本の財政支援も考えれば、安保は米国の「要石(かなめい
し)」でもある。

日本が米国の防衛義務を負わないからといって「片務的」は
あたらない。≫


 これを書いた論説委員を公開討論の場に呼んで、
なぜ「片務的」でないのか語るだけ語らせて、吊るし上げて
みたいね。


≪いま日米両政府が迫られているのは、これらの問題(=普
天間や“密約”問題)も直視しつつ、日米の両国民がより納
得できる同盟のあり方を見いだす努力ではなかろうか。≫

 
 あのね、米国政府はまったく何も「迫られて」ません。
 米国民もまったく関心がありません。
 小沢政権が勝手に騒いでいるだけ。

 普天間基地問題? 
 日本側が決断しない限り、現状のままでしょ。米国は何も
困らない。

 “密約”問題? 
 米国は、軍事政策上この問題に全く関心がない。

 通常兵器の精度が向上したので、日本に寄港する米国の空
母・駆逐艦・原潜などに核兵器は搭載しないと、米国政府は
平成4年に わ ざ わ ざ 発表している。
(ということは、平成4年以前はどうだったか、誰でも想像
はつく。)

 その段階で、米国にとっては「済」なのである。


■ 大連立、いや、部分連合 ■


 朝日社説は言う。


≪世界の戦略環境をどう認識し、必要な最低限の抑止力、そ
のための負担のありかたについて、日米両政府の指導層が緊
密に意思疎通できる態勢づくりを急がなければならない。≫


 「日米」を「韓米」に変えれば、そのまま盧武鉉(ろ・ぶ
げん)政権時代の韓国の新聞社説に使えよう。

 語るに落ちるとはこのことで、朝日新聞が欣喜雀躍した民
主党政権の本質がみごとに物語られた。

*

 読売社説は例年どおり重厚で、日本の課題を過不足なく語
った。

 いかにも読売らしいのが、いわゆる民主党と自民党の大連
立(あるいは大連立もどき)を示唆したところ。


≪国の命運がかかり、国民生活の基盤が左右されるような重
要政策・法案の成否に当たっては、野党とも提携する「部分
連合」や、大胆な政界再編による「挙国政権」づくりをため
らうべきではない。≫


 普天間基地移転先にせよ、消費税率引上げにせよ、民主党
・自民党が本気で連携すれば実はたいていの問題はいい方向
にまとめられる。


■ 社会保障という名の産業 ■


 自民党が妙に静かなのは、単に「野党慣れしていない」か
らではなくて、小沢一郎なき後の民主党との連携を夢想して
いるのではないかと、わたしには最近そう思えてならない。


 さて、経済浮揚に向けて新たな産業の核をどこに求めるか。
 医療、介護、福祉であろう。


≪社会保障の充実は、安全網の整備に加え景気対策の効果も
期待できる。

約600万人が従事する社会保障の分野は、少子高齢化により
今後も拡大する。

雇用を造り、生産を促し、カネを循環させる機能は他産業と
比べて見劣りしない、と言われている。

社会保障の財源として消費税率引き上げは避けて通れない。

鳩山政権は凍結の封印を解き、景気回復後の税率引き上げに
国民の理解を求めなければならない。≫


 だが、何も決断できない鳩山大臣にこれを求めるのは無理
スジ。
 次の次の政権に期待する。


■ 棘(とげ)の多いアザミの地 ■


 厳しい現実に正面から向き合おうと求めたのは唯一、産経
新聞の年頭の言であった。


≪イスラエルの政府機関は、自国民になることを希望する人
たちにこう呼びかけたという。

「われわれは諸君にバラの花園を約束しない」。

この一文に野生のアザミの写真が添えられている。≫

≪イスラエルの国民を待っているのは薔薇の花園ではなく、
とげの多いアザミの地。

厳しいことをあえて言わなければ、国家と国民が生き残れな
いからだろう。≫


 産経は、日本書紀の話を引いた。
 7世紀後半の、志ある一兵卒の話。

 白村江(はくすきのえ)の戦(いくさ)で唐の捕虜となっ
た大伴部博麻(おおともべの はかま)は、唐による日本侵
攻の計画を知るや、自らをカネで売って奴隷に身を落とした。

 自分が奴隷となることで得られたカネで、4人の仲間を
日本へ帰国させ、危急存亡の事態を祖国に知らせたのである。

 わたしがこの話をはじめて知ったのは、キリスト聖書塾が
発行する月刊 『生命の光』 誌上だった。
 そのとき、涙がぼろぼろと止まらなかったのを覚えている。


■ 野党に代わり地方首長が中央政治の牽制役に ■


 さて、読むに堪えない東京新聞(=中日新聞)の社説は脇
に捨て、今年は北陸金沢の『北國新聞』社説を取り上げる。

 北國新聞の社説やコラムは、わたしのブログでも頻繁にご
紹介している。
 地に足のついた論説を展開する保守系の地方紙で、わたし
は高く評価している。

 元旦社説は、
「<地域主権>元年  <首長の時代> 迎える覚悟を」
と題した。


≪自治体が国の下請け機関として機能し、地方自治など名目
にすぎなかった時代なら、どんな凡庸(ぼんよう)な人物で
も、無難に首長の務めを果たせた。

首長の力量に対する評価も、優れた政策の立案能力などでは
なく、いかにして国から予算を取ってくるかで決まった。 

政権交代によって、自民党議員の力を借りて国の予算をもぎ
取ってくる「利益誘導型」の政治システムは、もはや機能し
ない。

石川県、富山県の首長は、昨年末の予算編成で、国と地方の
パイプ役を事実上失った心細さが骨身に染みたのではないか。≫

≪地方の声を首長が代弁し、国に物申す場面は、昨年末、子
ども手当をめぐる論議でも見られた。

鳩山由紀夫首相が地方に一部負担を求めたのに対し、全国の
知事が一斉に反発し、支払い拒否も辞さない態度を示した。

「地方負担」の押し付けは、地域主権の確立を目指す民主党
政権の理念と違うではないか、という批判である。 

マニフェストを逆手に取って政府に立ち向かう知事の発言力
は、もはや野党の有力幹部をしのぐ。

鳩山政権は、野党の批判を知らぬ顔で受け流せても、地方か
ら発せられる声を無視できなくなっている。

それは野に下った自民党のだらしなさというより、時代の必
然のように思えるのである。≫


 自民党が異議申し立ての基本的機能すら発揮せぬ現状では、
まさしく知事や市長に小沢政権の牽制役を大いに果たしても
らわねばならない。


■「地域主権」のお題目の化けの皮 ■


 北國新聞の社説後半では、民主党が「道州制」に冷淡であ
ることをプラスに評価しつつ、軽率にも、民主党のいう「地
域主権国家」というお題目を讃美している。

 「道州制」のことはわたしも問題視しており、拙著『日本
の本領(そこぢから)』にも詳しく述べたとおり。

 道州制が遠のくのは確かに結構なことだが、問題はそもそ
も民主党政権の振る舞いが「地域主権」とは程遠いことだ。

 関東地方の全ての県・都がこぞって推進の意思を再確認し
た八ツ場(やんば)ダムを見よ。
 「地域主権」なら、県・都の意思が勝つはずだ。

 ところが現実には、小沢一郎氏への貢ぎ物がなかった案件
だからだろう、強引に建設凍結に追い込まれた。

 ここに小沢政権の本質が端的に示されている。

 小沢一郎氏への貢ぎ物があったからか、東北地方のダムは
建設続行だ。
 民主党の「地域主権」とは、所詮そんなものである。

 天下の北國新聞が、民主党のお題目に幻惑されては困る。


===


▲ 後記 ▼

 
 さいきんのコラム子のブログ記事から ――

(全文を読むにはリンクを開いてください)


いい人ぶる人、 いい人になるのをやめた人   
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200912170000/

≪人あたりがよくて優しそう。こんな男は結局は女性を不幸
にするという。
八方美人の「いい人」も、裏を返せば優柔不断でいい加減な
人になるからだ。
鳩山首相はその 「いい人」 である。
普天間移転を振り出しに戻して不幸になるのは沖縄県民だ。≫

 そのとおり! 北國新聞のコラム「時鐘」の続きはブログ
でお読みください。
 
 
長妻 昭 厚生労働相の錯乱発言 @ TBS番組
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200912220000/

 政治家は与党入りするとバカに見えてくるものだが、長妻
昭氏のこの発言は錯乱に属する。

 日本経済新聞12月20日2面の囲み記事から:

≪長妻昭厚生労働相は19日のTBS番組で、政府内で子供手
当の支給に年収2,000万円の所得制限を設ける案が浮上して
いることに
「子供に所得はない。そういう意味では所得制限なしで措置
したい」
と述べ、所得制限の導入に反対する考えを改めて強調した。
出演者からの電話に答えた。≫

 なぜ錯乱か。ブログに書きました。


どうして自民党は、かくも静かなのか 
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200912280000/

 しみじみ悲しい。


中国や露国の核兵器搭載艦も自由に通過できる津軽海峡 
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200912280001/

 津軽海峡にわざわざ公海の部分が残されている理由と問題
点。

 
==


<泉 幸男 著>


   『中国人に会う前に読もう  第一線商社マンの目』 

『日本の本領(そこぢから)  国際派商社マンの辛口メモ』

               通 信 販 売 も 受 付 中
         http://homepage2.nifty.com/sai/mart/


==

■主宰   泉 幸男(いずみ・ゆきお Izumi Yukio)

http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/
(旗艦ウェブサイト。これまでの号もここで見られます)
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/
(週に3回ほど更新しているブログ)

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