いつかみたシネマ <番外編>

 休暇                 平成19年(2007年)

スタッフ

監督:門井肇
製作:小池和洋、野口英一
脚本:佐向大
撮影:沖村志宏
音楽:延近輝之

キャスト

平井透 / 小林薫
金田真一 / 西島秀俊
平井美香 / 大塚寧々
三島達郎 / 大杉漣
大塚敬太 / 柏原収史
坂本富美男 / 菅田俊
池内大介 / 利重剛
古木泰三 / 谷本一
平井達哉 / 宇都秀星
美佐子 / りりィ

製作国: 日本 山梨日日新聞社、他 作品
配給: リトルバード


 

 

 

あらすじとコメント

 

人間が『死ぬ』ということ。

戦争の悲惨さでもなければ、

尊厳死でもない。

しかし、これも現実である。  

 

 

 

 

山梨、とある刑務所。

平井(小林薫)は、長年勤め上げた

ヴェテラン刑務官である。

しかし、どこか不器用で、ずっと

独身だった。

そんな彼に結婚話が舞い込んだ。

相手は、小さな息子を持つ美香

(大塚寧々)。

彼女は再婚だ。

 

どちらも強烈に惹かれ合ったわけ

でもないが、断る理由もなかった。

周囲の後押しもあって、結婚話が

決まった。

 

だが、結婚式が目前に近付いた

ある日、挙式前日に収監されている

死刑囚金田(西島秀俊)の刑の執行が

決まってしまい・・・  

 

 

 

 

 

人間の死を真っ向から描く

静かなる衝撃作。

 

『死刑囚』。

当然、相応の罪を犯した結果、自らの

『死』をもって償う囚人である。

 

本作で描かれるのは冤罪ではない。

自らが殺人を犯したことを認め、裁判の

結果、裁判官が死刑を決定した事案。

そして、死刑執行命令をだすのは

法務大臣である。

そんなことは誰も解っている。

 

本作は、それを真正面から

捉えた作品である。

 

 

とはいえ、本作ではその死刑囚が

どれほどの罪を犯し、どういった過程

を辿り、どのような贖罪の念を持って

収監されているのかは、一切語られない。

ただ、本当に刑が執行されるのか、

されないのかを、ひたすら待つ日々を

淡々と描く。

 

一方で、長年刑務官を勤め上げ、

没個性的な人間となった中年男。

新人や更にヴェテランの同僚もいる。

彼らとて赤い血の流れる同じ

人間である。

 

だが、決定的に違うのは、刑の

執行が決まった場合、実際に執行

するのは裁判官でもなければ、

法務大臣でもなく、彼らなのである。

 

その時、それぞれの心に去来する

ものは何であろうか。

まして、翌日には主人公の結婚式が

控えていて、同僚たちも出席するのだ。

 

 

映画自体は、主人公の刑務官が

結婚を決め、まったく馴染めない

連れ子である男の子と、やはり過去を

何かしら引き摺りながら、どこか諦念

している女との結婚式までの日常を

行きつ戻りつしながら描いていく。

 

感情を押し殺し過ぎた所為で、

無機質な人間になったであろう

主人公が、せめて新婚旅行に行く

ために長期の休暇が欲しいと願う。

 

だが、相手は子持ち再婚であるし、

この歳になっての結婚で浮かれる

わけにもいかない。

 

その葛藤。

そして、それに密接に関わってくる

刑務所内における『支え役』という仕事。

 

どこまでが、実際の過程と同じである

のかは知るよしもないが、死刑囚に

執行が決まったと悟らせないようにする

刑務官たちの心情はリアルである。

 

方や、死刑囚の描かれ方は謎の

ままである。

面会に来る彼の妹との関係性や、

ふと、独房の隅で夢枕のように

浮かび上がる老夫婦の存在。

彼らは被害者なのか。

それとも両親なのか。

そして、実際に自分自身の刑の

執行が決まったと悟る瞬間。

 

映画は淡々と、だが、非常に重く

圧し掛かってくる。

 

 

主役の小林薫から、大塚寧々、

西島秀俊など皆が静かなる熱演を

見せる。

ただ、自然体ではなく、あくまで

『熱演』なのであるが。

 

その演技の「上手さ」が鼻に付く

とも感じるが、逆に、だからこそ、

こちらも冷静に見続けられた

とも感じた。

あまりにも自然体過ぎると、嫌な

圧迫感に押し潰されそうになるで

あろうから。

 

 

確かに明るい希望の光も見える

作品ではある。

しかし、個人的には、決して

「裁判員」には選ばれてくれるな

と願いたくなった。

 

それは被告の生死を決めること

自体ではなく、以後に起きるであろう

別の意味で、であるが。

 


 

< 余談雑談 >

 

どうやら、全国的に梅雨に入ったようだ。

で、今回の都々逸。

 

「雨の降るほど噂はあれど ただの一度もぬれはせぬ」

 

『モテそう』だとか、『遊んでいそう』とか、

思われがちな人間ということだろう。

だが、人は見かけによらないと

いうことを読んだものであろうか。

 

そこで、ふと思った。

そんなことをしているのが

『俳優』という職業だな、と。

まったく別な人格を演じる愉悦。

実像とは違う人格を楽しむことが

出来るし、逆に葛藤もするのだろう。

 

ところが面白いことに、友人の

芸能関係者が口を揃えて言う。

『お嫁さんにしたい女優』に

選ばれたりするのは、大概、

性格は男より男っぽい、と。

でないと、生き馬の目を抜く

芸能界で長く生き続けられ

ないらしい。

 

そういえば、以前、「別に」

と言って物議を醸した

女優がいた。

彼女が演じてきた役柄と、

態度が間逆であったからだろう。

 

で、また更に思った。

自分の少ない経験値から考えて、

『俳優』に限らず、女性は、

すべからく『女優』であるな、と。


発行者:棒 野人
発行元: E-mail : saneusebio@mail.goo.ne.jp
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