━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [VT]うそまこと其之弐拾伍〜アンザッツ三回目:続フースラー〜 こんにちはヰ崎です。 アンザッツの3回目(2.5回目くらいのほうがあってるかもなあ)です。 ところで前回また数を間違えていました。 第24号でしたようです。今号は25号です。 注:今回から(もしかしたら次回から)HTMLメールに変わる予定です。 万が一それで読めなくなった場合は連絡くだされば対処いたしますので よろしくお願いいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (7つのアンザッツポイントの続き) --------------------------------------------------------------------------------- 444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444444 --------------------------------------------------------------------------------- AP4―「頭頂と軟口蓋」  4番は頭の最上部と口腔の最上部です。 フースラーはこの二つは 3番の(a)と(bの)ようには分けずにひとつのアンザッツポイントとして分類していますが 丁寧に取り組みたい人は、別にして扱ってもいいでしょう。 良い効果:喉が上昇しないフォーム、高音を出す技術の基礎(アクート) 悪い効果:味気の無い声になりやすい、頭声偏重 当てやすい母音:ウ、オ 当てやすい声種と音域:頭声、高めの実声全般 高い声が上手に出せないとかいうときに、頭のてっぺんの髪の毛を つまんだりしたことがあるかと思います。 これも単なる迷信ではなく、 発声器官の機構として声を上へ向けると高い声が出やすいようにできています。 高音域を上達するには喉頭の後ろを上に引っ張る動作が必要なのですが、 その端的な表れが4番のアンザッツです。    甲状軟骨の上後端の辺りから軟口蓋や耳の後ろのほうに筋肉が伸びていて、 そのテンションが増すと甲状軟骨が前傾し、声帯が伸展すると同時に、 振動が頭の上の方へ強く伝わる状態になるわけです。 喉頭―口蓋帆のテンションが十分なら口蓋に直接振動を感じます。 よって最高音域を自然に出しているときは4番が現れるし、4番を強調すれば 高い音域に余裕がでてきます。 アクート、ジラーレといった「声を回す」技術もこのアンザッツが基礎になります。 --------------------------------------------------------------------------------- ◆ 唇のかたち、鼻音の影響  何故かははっきりしていませんが、 唇を丸めたり(丸めるというのは開口を丸くするということです)、 捲り上げる(突き出すといったほうが解り易い?)と、このアンザッツがし易く、 アンザッツが別な場所のときであっても唇を尖らせるだけでAP4の効果が期待できます。 (注:ウやオは自然に唇が丸くなる母音です。 唇を丸めることで発声を安定させるというのは ポップスではあまり知られていませんがクラシックでは常識です。 といっても皆が皆いつでも必ず行っているわけではありませんが、 唇を丸めることで何故か、舌骨周囲の硬直を防ぐことができ、喉が上がりにくくなり、 高音に余裕が生まれるのです。 例を挙げますと、、 time to say good-bye を歌っているボチェリとブライトマンが 二人とも唇を突き出すように歌っていることが多いです。 ぜひ映像で確認してみてください。) ---------------------------------------------------------------------------------  また、頭頂は鼻音化が強くても十分当てられるのですが、 軟口蓋へアンザッツする場合については、口蓋帆を完全に上げて その閉鎖(鼻腔への通り口の閉鎖)を出来るだけ強くすると当て易いです。 つまり口腔だけの発声です。 「呼気を口腔だけ」にする場合は、息を引いたほうがアンザッツし易く高音も伸びます。 逆に息を強く多く流して高音を「押す」ときは鼻音化したほうが無難です。 ただ、4番は全般として閉鎖のかっちりした 芯の強い実声(フランジリンボイスとかミドルボイスとか)のほうが 息の多く流れた声より当て易いはずです。 さらに、「口蓋帆をめいっぱい上げると同時に舌を下げる」ことで、 口蓋帆のアーチに痛い(?)くらいのどぎついテンションをかけることができます。 これは準備運動としても有効です。AP4がうまく当たらないときは試してみてください。 --------------------------------------------------------------------------------- --------------------------------------------------------------------------------- ◆AP4の音色  4番は、音色を特に「悪くする」というほどの弊害があるわけではないのですが、 音色を「良くする」効果も殆どありません。 ですからこのアンザッツだけに偏ってる人というのは どうしようもなく退屈な声を出す人ばかりです。 そして頭声の扱える女性にはこのアンザッツに頼りきってしまう人が多いです。 「ママさんコーラス(的な声)」というのがその代名詞でして、 女性は高校生くらいまでは、軽く胸声の交じった弱声を使う人がすごく多いのですが、 大学生やそれより年配で合唱をやる人たちなどは やたらと上へ向けた、白い音で歌う人ばかりになるのですね。 ここで何よりも問題なのは、 高校生のころまで出たはずの弱声が扱えなくなってしまうところです。 二つを組み合わせれば結構な音色バリエーションが稼げるのに、残念な話です。 女性で発声の訓練を積むならば本来、弱声を保持したまま頭声主体に移行し 更に胸声も加えていく、という風に進むはずなのですが、、、 「弱声しか出せない」のが「頭声しか出せない」に変わるだけではあまりにもお粗末です。 ---------------------------------------------------------------------------------  また、AP4で得られる典型音色(実声である頭声の典型的な音、丸く、 広がりはなく芯があるがどこか捕らえどころが無い音) を「明るい声」と考えている人が日本に大変多いですが、 これは欧米の声楽家の捉え方とは異なるときがあります。 彼らはむしろ頭声単独の声を暗いということがある。 これは結局のところ、明るく強調される帯域に収まる成分が単独か複数か といった話なのですけど、 弱声が混じったり胸声との兼ね合いでざらついた音に比べて 倍音が少なく色付けの弱い声を、必ずしも大層に考えてはいません。  さらにいうと、カラオケレベルを脱け出せないシンガーは頭声の音色を 暗いほう暗いほう(鳴りの強い成分の数が少ないほう)へともっていってしまっています。 暗い、奥まった音のほうが立派な気がして上等に感じるのでしょう。 確かに、ほかの声種を混ぜると雑味がでますからね。 気持ちはわかります。 そもそも胸声を使わずに立派に響かせようとかいうのが既に思い違いなのですが、 そうしてできあがるママさんコーラスの声や、出来損ないのメタル声は、 造嗜のある人が聴いたら絶対に「いい声だ」とはいいません。 「歌は上手」かもしれないが常に同じ音色、 単調で何の面白みも無い、人に聴かせるには最悪の声です。 ソロで人気のあるシンガーで、頭声主体のほっそりした丸い声というのはもちろんあります。 ですが、一見すると純粋な頭声のようでいて、 よく聴くと、弱声のさらついた感じや 胸声や極高声の毛羽立った感じ(音の成分)がすこし隠れたところで鳴っているものです。 そういった装飾的なところこそプロシンガーが神経を注いでいる部分なのだけど、 それはどこか捉えどころがなく、意識していなければ聞き逃しがちな部分でもあるのです。 普通の人が音声を聴き込もうとすると、声の「芯」の部分ばかりが前に出て 耳に入ってしまうのですね。 芯のところだけを捉えているとどうしても音色を暗く解釈してしまいます。 本当の声の良し悪しを理解しようとしたら 芯よりもむしろ上澄みのところに注意をはらわなければなりません ---------------------------------------------------------------------------------  長くなりましたがまとめますと、、 4番のアンザッツは音色を「悪くは」しませんが、 4番で出る声が、本人はいい声だと勘違いし易いということもあって それに捉われて音色をスポイルしていることが珍しくありません。 (全く同じことが6番のアンザッツでもおこります。) --------------------------------------------------------------------------------- 55555555555555555555555555555555555555555555555555555555555555555555555555555555 --------------------------------------------------------------------------------- AP5―「額」  5番は額です。「前頭洞を共鳴させる」なんて言う人もいます(真偽はさておき)。 良い点:弱声成分を確保できる 悪い点:やや喉が上がり易い、4番や6番に比べると音域が狭くなる傾向がある 当てやすい母音:イ、エ、ア(口腔が狭いほうが解りやすいでしょう) 当てやすい声種と音域:弱声、芯のないファルセット --------------------------------------------------------------------------------- ---------------------------------------------------------------------------------  これはもう音色を調整するためだけのアンザッツだと思っていいでしょう。 弱声の音色(厳密に言えば「鳴りの良い弱声」の音色)というのは サラッと、もしくはザラっと、毛羽立った、ややノイジーだがキメの細かい音です。 宇多田ヒカルなんかそういう音です。 声の、「芯」に対して「上澄み」などともいわれる部分です。 実声でフォルテッシモとかシャウトで歌うときも、成分としては弱声が 陰に含まれているのが理想ですね。 とくに女声の高音域は、弱声成分がゼロになると味気がなくなってどうしようもないので、 額へのアンザッツを続けるよう指導することも多いわけです。  このアンザッツは 弱声の鳴り(前述のサラつく感じ)がなくなると途端に当たらなくなります。 ファルセットでも完全に息が筒抜けの無表情な声とか、 逆に息を引いてきっちりぴっしり整った実声では、うまく向かってくれないですね。 (頭声を額に当てるには他の声種が混じっていないと難しいです、 逆に言いますと5番のアンザッツは頭声主体の声種融合の訓練として有効です。) よって声帯の振動形態のバロメータとなるわけです。 何故 弱声の「鳴り」でないと額へアンザッツできないのか、これはちょっとした謎ですが、 (筆者は副鼻腔の振動帯域との兼ね合いではないかと睨んでいます。。。。) が、とにかく「弱声成分がないと額へ向かない」と覚えてくれれば十分です。  また、「実声で弱声が無い」というのは 「声門の閉鎖で呼気を支えすぎている」という状態です。 閉鎖が強すぎるというのと殆ど同じことですが、 息を引くことに慣れすぎていることでも起こります。 「痩せた声」を避けるには閉鎖にすこしゆとりをもって息を入れて下さい、 声門で呼気を支えることによって得られる「安定感」に捉われないことが大事です。 --------------------------------------------------------------------------------- 66666666666666666666666666666666666666666666666666666666666666666666666666666666 --------------------------------------------------------------------------------- AP6−頚背部  最後のアンザッツポイントは「うなじ」ということが多いですね。 でもうなじってどこのことか厳密にはわからないという人もいるのでは? 首の後ろ側とか言ったほうが分かり易いでしょうか。 最初は第七頚椎のでっぱりに触れながら当てるといいでしょう。 良い点:換声点が隠れる、音色に広がりが出る、声区融合に適 悪い点:内筋が働きが弱い(弱くなる) 当て易い母音:ウ、イ(iではなくe) 音域:無理のない範囲で高め、クロスした声種(複数の声種が混じった声) ---------------------------------------------------------------------------------  当てること自体が最も難しいとされるのがこの6番です。 ですが頚椎の凸部に触れながら行えば感触だけはすぐ掴めるのではないでしょうか。 特に当て易いのは長母音のイです。 (短母音のイは歯先や顎のほうに向けることが多いですが 長母音は軟口蓋とか喉の奥のほうに向けて出すことが多く、それを前提にしています。 勿論、日本語ではそういう区別はありませんが) 口腔が狭まるとうまくいかないので、 英語のweのように直前に小さいウを入れることをお奨めします。 口先あるいは胸に向けて口音で「ぅ」と発し、 鼻へ息を抜きながら唇を横に引いて「イー」といくと、、、 当たりませんか? なかなか文章では伝えにくいところです。 うなじのこつはいろいろあるんですけどねぇ。 耳を上げるのもきっかけとして良いです。 このアンザッツは 胸声の(突っ込んで言えば声帯内筋の)過剰な働きを抑制する効果があります。 そのために胸声区からの声区転換(というかパッサージョ)が容易になるわけですね。 胸声が制限されるため、 こればっかりやってると胸声の閉鎖が弱っていくというのはある意味当然のことです。 といってもそれを実際に体感するほど量をこなす人もほんとに一握りですが。  また、多くの成人男性のように胸声を強く扱える人が胸声区で歌う場合に 最も「上手」に聞こえるのが6番のアンザッツです。 やや奥まって、ムードのある落ち着いた声になります。 裏声への連結もスムーズになります。 カラオケでうまいといわれたいのなら、とにかくこの頚背部のアンザッツをやればいいのです。 --------------------------------------------------------------------------------- --------------------------------------------------------------------------------- ◆バリエーション  初めは第七頚椎に向けることが多いですが、 6番は本来、頭蓋の後ろ側(耳より後ろ)から肩、 背中にかけてのアンザッツ全般を指すものだと考えていいでしょう。 首の後ろのほかに、後頭部(床に寝たとき接触するあたり)、耳及び耳の後ろ、 肩甲骨上端(鎖骨との連結部)などが目標になります。 おおざっぱに、1頚背部、2後頭部、3背中という三つに分けて考えると良いでしょう。 ---------------------------------------------------------------------------------  前述の首の後ろ(第七頚椎を含む)へのアンザッツは 輪状軟骨と脊柱を繋ぐ“輪状咽頭筋”の緊張の現れと考えられています。 発声の際、声帯を伸展するために 喉頭の背部を上下に引っ張る(甲状軟骨を上方、輪状軟骨を下方に)力が働くのですが、 そのときに輪状軟骨を下方へ引き付ける役割を担っています。 (下へ引くというよりは上に挙がらないよう保持していると考えたほうが正確でしょうか。) 6番のアンザッツによって輪状咽頭筋が強く働くと 自然と4番(甲状軟骨を引き上げます)との連携が生まれ、初めて声帯伸展の駆動力が 十分となります。 ---------------------------------------------------------------------------------  後頭部へのアンザッツは、これは位置的にも効用的にも4番に分類されてもいいものですが、 茎突舌骨筋や胸鎖乳突筋の緊張がどうやら支配的で、背中へのアンザッツとの連携があるから 6番に含むのがより妥当と考えています。  後頭部のアンザッツは単独では具体的な目立った効用がありません。 (喉頭と直接繋がっていないので当然かもしれませんが) 喉頭と頚部の姿勢作りには寄与しますが、なかなか声の変化には結びつきません。 ですが背中へのアンザッツと合わせて鍛えていくと 最終的には頭声最高音域を引き上げる働き(というかテクニック)が得られます。 頚部や舌、顎の位置や力の入れ具合を調整し口腔の後ろを開くと同時に 頚背部を上下に引き伸ばす感覚です。 (この感覚がソプラノの最高音域では絶対必要なのです。テナー最高音でも活きてきます。 これはまた、喉を開くテクニックでもありますし高音をごり押しするテクニックでもあります。 喉を開きながらゴリ押しというとビギナーは信じられないかもしれませんが、 発声器官の機構は、喉を開いたほうが高い声を出せるように出来ています。)  十分鍛えられ、バランスのとれたシンガーであれば、頭蓋の中心部 後頭部の奥のあたりに声を向けることで容易に最高音へアプローチできるようになります。 サウンドビーム理論でいわれる最高音域のプラットフォーム(焦点の位置)も このことを指しているようですね。  アンザッツの訓練では乳様突起(耳の後ろの丸み帯びたでっぱり)と 後頭部の頂点(床に寝たとき接触する辺り)という二箇所について始めると良いでしょう。 特に乳様突起へのアンザッツは耳を上げながら行うと当て易いです。 後頭部のアンザッツは声種、母音はあまり影響しません。 ---------------------------------------------------------------------------------  背中のアンザッツは最も当てるのが難しく、 最初は全くやりかたがわからないはずです。ですが 歌いこんでいけば、突発的かつ偶発的に背中のアンザッツを感じるときがあると思うので それを覚えていくよう心がけてください。  背中へのアンザッツは 肩甲舌骨筋(舌骨と肩甲骨上端を繋ぎ鎖骨の内側を通ります)の緊張によって現れます。 この働きによって舌と喉頭の運動は切り離されてお互い自由になります。 つまり言葉を喋ることで喉が挙がっていくことが無くなり、 また、喉を下げたまま高音を出すことも容易になります。 結果として、鳴りの良い充実した音声が得られます。 頚背部と胸骨(2番)のアンザッツは組み合わさって 発声のベース、土台となるものです。  また、このアンザッツの習得には、筋肉を直接鍛えることも考えるべきです。 鎖骨の内側を窪ませて、肩甲骨との連結部にやや近いところを押えながら 喉を下げてみます。 すると指一本分かその半分くらいの太さの筋束の働きがわかるはずです。 このように指で触れて活動を確かめながら、喉頭を下へ引きつける、喉や口腔を開く、 胸の上のほうへ息を吸い込む、といったアクションを利用して筋の緊張と弛緩を繰り返します。 (舌が硬直しないよう注意すること。AP4のように唇を丸めると予防になります。 どうしても舌に力が入る人はこの手の訓練をやる段階ではありません。上級者向けです。) 次第にこれらのアクションを介して、歌唱に取り入れることできるようになります。  背中に当てやすいのは高めでかつ胸声の乗った声。母音は明るくかつ深い“ア”です。 口の後ろ、奥歯を意識的に開く技術が必要で、割り箸を噛む準備運動なども効果的です。 --------------------------------------------------------------------------------- --------------------------------------------------------------------------------- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 以上がフースラーに准じたアンザッツの概要でした。いかがでしたでしょうか。 情報の羅列になってしまった感じもあるので、 機会があれば焼き直ししようかと思います。 気長に待っててください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ --------------------------------------------------------------------------------- 質問や要望が御座いましたら是非お寄せください。 ldz5zz@gmail.com ---------------------------------------------------------------------- ボイストレーニングの嘘真うそまこと 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000225345.html ---------------------------------------------------------------------