2009/06/09
【ブランド経営のヒント【資生堂シャンプーの顔「TSUBAKI」の舞台裏/ヒント編】
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◇◆ ブランド経営のヒント
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〜卓越したブランド経営・ブランド進化の『ヒント』がここに〜
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こんにちは。
今回は【資生堂シャンプーの顔「TSUBAKI」の舞台裏/ヒント編】
です。
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■目次
・テーマ【資生堂シャンプーの顔「TSUBAKI」の舞台裏】
・ヒント【ブランド改革の前提と4つのヒント】
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◇◆ テーマ【資生堂シャンプーの顔「TSUBAKI」の舞台裏】
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日本の女性は、美しい。
(資生堂TSUBAKIのブランドメッセージ)
一瞬も 一生も 美しく
(資生堂のコーポレートメッセージ)
--◆解説----------------------------------------------------
資生堂TSUBAKIは、2006年春に発売され、一気にシャンプーカテゴ
リーでトップシェアを獲得し、現在もトップの座を維持しています。
この成功の裏側には、資生堂の身を切るような経営改革と中身の濃
いコンセプトワークがありました。
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◇資生堂の経営改革
資生堂は日本はもとより、EU、北米、中国など海外売上高が約
4割を占める、1872年(明治5年)創業のグローバルブランドです。
資生堂は2005年度から「成長と躍進」を掲げた経営改革の三カ年計
画をスタートしました。代表取締役社長には新たに前田新造氏が就
任しました。
この改革は1980年代の「ブランド多発」により、消費者から見たと
きに「ブランドが多すぎて区別がつきにくい」という企業ブランド
・商品ブランドの弱体化と、ブランドが増えたことで陥った高コス
ト体質への危機感から生まれたものです。
前田社長は、三カ年計画で3つの改革ビジョンを掲げます。
1.100%お客さま志向の会社に生まれ変わる
2.資生堂ブランドを光り輝かせる
3.魅力ある人で組織を埋め尽くす
「一瞬も 一生も 美しく」という資生堂のコーポレートメッセージ
は、この2005年に生まれました。140年弱の歴史をもつ企業が、伝統
を踏まえつつも、変革を成し遂げるために掲げました。
一方で「日本の女性は、美しい。」は資生堂TSUBAKI(ツバキ/商品
ブランド)のブランドメッセージです。
資生堂TSUBAKIは、2006年春に発売され、一気にシャンプーカテゴリ
ーでトップシェアを獲得し、現在もトップの座を維持しています。
これまで資生堂はシャンプーカテゴリーで、複数のセグメントに呼
応した複数の商品ブランドを展開していましたが、P&G、ユニリーバ、
花王といった豊富な経営資源を有する競争相手を前に苦戦していま
した。
そこで経営改革の一環として「化粧品とトイレタリー事業の融合」
を図りました。
化粧品には主に化粧水やローション、ファンデーションや口紅とい
ったカテゴリーが含まれ、トイレタリーには主にシャンプー、リン
ス、ヘアケア商品などが含まれます。
従来別々だった化粧品とトイレタリーというふたつの事業の枠組み
を取り払い、ひとつの傘の下で新たなマーケティング・営業体制に
転換したのです。
また「カテゴリー&ブランドの絞り込み」も図りました。
トイレタリー事業の中でも洗浄三分野(シャンプー・リンス・ボデ
ィソープ・洗顔料)だけに絞り、そのシャンプーカテゴリーのなか
で複数あったブランドをTSUBAKI1本に絞ったのです。
つまりセグメント対応型戦略から「カテゴリー・ナンバーワン戦略」
に転換したのです。
さらに戦略を実行しやすい組織にするために、ブランドマネージャー
制を導入しました。
これにより機能部門の部分最適化に陥るリスクを回避し、ひとりの
ブランドマネージャーが、ブランドコンセプト開発から商品開発、
コミュニケーション、販促施策までをトータルに統括しやすくなり
ました。
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◇TSUBAKIのコンセプトワーク
その後、新生ブランド「TSUBAKI」の開発プロジェクトが立ち上がり、
発売まで一年半の期間がかかりました。
うち3分の1にあたる半年はブランドマネージャーを中心に、消費者
のヘア意識や美容意識などの調査に基づいた徹底したコンセプトワ
ークが行われたそうです。
コンセプトワークの背景として、開発チーム内では2つの狙いが共
有されました。
ひとつは「資生堂シャンプーの顔」となり、日本女性の美の素質を
引き出すこと。
もうひとつは「資生堂の美意識発信の起点」となり、日本女性の美
を誰よりも理解する企業として、常に美意識を創造・発信すること
でした。
ブランドマネージャーの石川由紀子氏は『美意識とファッションセ
ンスを備えた、お客さまの感性と情緒的な部分を刺激できる、化粧
品的な色気のあるシャンプーを作りたかった』と語ります。
結果として下記のブランドコンセプト、ブランドメッセージが生ま
れました。(※はジェイコンサルティングの解釈)
【ブランドコンセプト】
Japan Glamour (ジャパン・グラマー)
⇒ ※美しく、いまを生きる日本女性の『気高く、躍動的な艶』を
引き出すブランド
【ブランドメッセージ】
●ターゲットへのメッセージ
日本の女性は、美しい。
⇒ ※日本の女性は、美しい。だからあなたも、美しい。
●ベネフィット(便益)についてのメッセージ
動くたび、艶あふれだす髪へ
⇒ ※そんなにも美しく、自信と誇りに満ちたあなたに、「動くたび、
艶があふれだすような髪」を引き出す美髪シャンプーを届けたい。
Japan Glamour というブランドコンセプトが、”日本の女性は、美
しい。””動くたび、艶あふれだす髪へ”というブランドメッセー
ジをしっかりと導いている様子がうかがえます。
ちなみにTSUBAKIという名称は、
1.日本女性の美の象徴(とりわけ艶のある黒髪→椿油を連想)
2.美髪成分(椿油から抽出した「美容オイル」と「美髪補修成分」
を融合させたもの
3.資生堂のシンボルである花椿
を重ね合わせて、最終的に決まった名称です。
TSUBAKIにふさわしい香りづけにこだわり、椿をはじめ、ハマナシや
ザクロなど日本的な花や果実の香りをブレンドして新しい香りを作
ったそうです。
またパッケージも深紅のボディに金色でTSUBAKIと入ったユニークな
ものが生み出されました。椿の花弁をイメージしたデザインは、
シャンプーとは思えないインパクトと上質感を与えています。
そうしていよいよ市場導入の時を迎え、ブランドコンセプトを貫く
広告、売り場、プロモーションで、一気にトップシェアを獲得しま
した。
広告では、個性の違う6名の女優を選び、多彩な日本女性の色香を
表現しつつ、タイプは違えども、結局「日本の女性は、美しい」と
いうブランドメッセージで多くの女性の共感を得ました。
売り場は、ブランドカラーである深紅をふんだんに使った映像ディ
スプレイ付きの専用什器で占拠しました。
プロモーションは、表参道ヒルズで6名の女優を勢ぞろいさせ、大
々的なデビューイベントを開催しました。そして発売一週間で約
80万個という大量のサンプルを配布し、ブランドを広く深く消費
者に体感させました。
資生堂TSUBAKIは、そのブランドコンセプトで、資生堂の美意識を
表現し、日本女性に最も支持される美髪シャンプーを創ることに成
功したのです。
<参考文献>
資生堂ブランド(川島蓉子 著/ アスペクト 刊)
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◆◇ ヒント【ブランド改革の前提と4つのヒント】
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今回の事例は、危機に陥った歴史ある組織が、伝統を踏まえつつも、
組織ブランド・商品ブランドを改革する上で、示唆深いヒントを与
えています。
【ブランド改革の前提と4つのヒント】
<前提>危機感の共有と改革ビジョンの提示
資生堂が、1980年代の「ブランド多発」により、消費者から見たと
きに「ブランドが多すぎて区別がつきにくい」という企業ブランド
・商品ブランドの弱体化と、ブランドが増えたことで陥った高コス
ト体質への危機感を共有しました。
そして先述のとおり、3つの改革ビジョンを提示しました。
「このままではいけない」という危機感を組織内で共有し、トップ
自らが、改革ビジョンを提示することが、ブランド改革の前提とな
ります。
1.顧客と分かち合うコーポレートメッセージの確立
資生堂が「一瞬も 一生も 美しく」というコーポレートメッセージ
を発信したように、組織内でよく議論をしたうえで、「わたしたち
の組織は、お客さまにどういった独自価値を提供したいのか?」に
ついて、今後の事業戦略などを絡めつつ考案し、心をひとつにする
ことが求められます。
2.「選択と集中」の経営戦略
資生堂は「化粧品とトイレタリーの事業統合」「カテゴリー&ブラ
ンドの絞り込み」を行いました。
このように限られた経営資源のなかでは、自らの理念や強みを最も
活かせるカテゴリーを選択し、顧客ターゲットに最も支持されるブ
ランド(競争優位に立てるブランド)創りに集中する資源配分の最
適化が求められます。
3.「一気通貫」のブランド戦略を実現する仕組み
資生堂では、ブランド戦略を実行しやすい仕組みとして、ブランド
マネージャー制を導入しました。
これによりひとりのブランドマネージャーが、ブランドコンセプト
開発から商品開発、コミュニケーション、販促施策までをトータル
に統括しやすくなり、機能部門の部分最適化に陥るリスクが回避さ
れました。
ただ一方で、権限を与えられるブランドマネージャーには、その任
務に耐えうる資質・能力・コミットメント(やる気)が求められま
す。ブランドマネージャー制を導入する際は、任せられる人材につ
いても同時に考慮する必要があります。
ブランドマネージャー制は、あくまでも選択肢の1つですが、いず
れにせよ組織の特性や現況に合わせて、「一気通貫」のブランド戦
略を実現する体制を整えることは常に求められます。
4.組織の顔として、改革の成果をもたらす「主力ブランドの存在
感」
ブランド改革の仕上げは、やはり主力ブランドが結果を出すことで
す。そのことで組織全体が報われ、改革の成果感を享受できます。
資生堂は新たにTSUBAKIという主力ブランドを開発し、結果を出しま
した。とくにコンセプトワークにおいて、顧客の願望(客観)と組
織の美意識(主観)を絶妙に融合したことが、結果に大きく貢献し
たと思われます。
今回の事例は、とりわけ危機に陥っている歴史ある組織において、
業種を問わず、参考になるかと思います。
次回(金曜日)は「このヒントの活かし方」について考えます。
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