人事労務管理の押さえどころ  RSSを登録する

企業の人事・労務・総務担当者の方に対して、法改正情報や人事施策、さらに困った時の対処ポイント等を順次配信します。社会保険労務士・行政書士事務所『岡西労務管理センター』および経営労務コンサルティング会社『日本経営労務総合研究所』の共同配信です。

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2009/08/29

メールマガジン(岡西労務配信)人事労務管理の押さえどころ

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このメールマガジンは、最近の労務・労働問題に焦点を当て、
その対応・予防を中心にお伝えしていきます。
ただ、同種の問題であっても、その背景や経緯等で対処は
千差万別なため、あくまで一例/参考としてご覧頂ければ
幸いです。
個別にご相談の場合は、以下までご連絡下さい(顧問先企業様
は無料、顧問契約を締結されていない方は別途相談料が生じる
場合があります)。
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第10回・採用におけるトラブル防止(前編)

今回は標題のとおり、採用における様々なトラブル防止について
お話ししたいと思います。

本来、労働契約は、民法上は契約の締結(採用)・解除(解雇)を
自由に行うことができるものですが、実際には労働法の規定や判例に
より、使用者側からの契約解除や内容の変更(労働条件の変更)が
難しい状況となっています。

つまり、採用後の労働条件の変更や解雇は難しいため、採用時点で十分
に情報収集をしないと、後に会社が重荷を背負うこともありますので
慎重に判断することが必要です。

1.採用に関する実務ポイント

まず、最初かつ最大のポイントは、『採用時の面接は、対象者の情報を
得られる最初で最大の機会』と認識し、容易に解雇が出来ない以上、
十分時間をかけて実施すべきであると思います。

その際に、特に次の2点に関しては必ず聞くべきであります。

 (1)健康状態・過去の病歴
 (2)(中途採用の場合)前職の退職理由

これは、採用した者が長期にわたって勤務し、契約どおりの労働を提供
するためには何よりも健康でなければならないのは当然のことです。
不健康な者を採用すると、十分な労務提供を受けられないばかりか、
仮に業務中に従前の疾病が再発・増悪した場合、使用者責任を問われる
ことにもなりかねません。採用時の健康診断と合わせて持病は把握する
べきであり、少しでも健康において不安な点がある者の採用は相当慎重
に判断することが必要です(採用を見送ることも選択肢の一つに入れて
おくべきです)。
―― 厚労省は採用時の健診は入社後に行うように指導していますが、
    健康な者を採用するのは採用側の当然の権利というべきだと思います。
      例えば、リンゴを買いに行って、お金を払って品物を受け取るまで
    リンゴの鮮度等(痛んでないか青くないか)がわからない状態で買い
    ますか?厚労省は理想論だけで物を言っており、全くナンセンスだと
    思っています。労働安全衛生法には先述の条文がありますが、私は
    積極的に違反しろと言っております。その根拠は実際に裁判例
   (B金融公庫事件 東京地裁 H15.6.20)でも認められているもので
    あり、そもそも安衛法がおかしいと思っています(もちろん違反
    しても何ら罰則規定はありませんし、監督官と言い争うときには、
    リンゴの話を持ち出します)。企業にとって事前の健康状態の
    チェックは積極的に実施すべきだと思います。

次に退職理由に関しては、まず履歴書の年月に空白がないか確認すること
がポイントです。中には「アルバイト」だとして明記しない者もいますが、
実は懲戒解雇等、知られたくない退職理由の可能性もあるため、本人が
曖昧にしたがっている様子であっても、何度もしつこく聞きただすことが
大切です。そうすることで、次の点が見えてくるでしょう。

▽ しつこく聞かれると、人は嘘をつけないので、やましい理由があれば
  怒り出し、『無礼だ』として自ら採用を辞退することも十分にあります。
  後に好ましくない経歴であることを知っても解雇できない以上、そうした
  惧れのある者は、採用しないようにするのが最善だといえます。

▽ 「一身上の都合」と書いている場合も、その理由を聞き出すことが必要
  です。そこで改めて「一身上の都合」としか答えない者であれば、それ
  でも採用するかどうかは採用する側次第だと思います。

▽ 現在は個人情報保護の観点から、前の勤務先に問い合わせても照会に
  応じないケースが増えており、聞いても無駄になることが多いです。
  以前、私共は積極的に顧問先様へのアドバイスとして、聞くことを勧めて
  おりましたが、個人情報保護法が施行されてから、反対に聞かないこと・
  こちらが問われる側となっても答えないことを勧めております(他社の
  トラブルを自らが背負うことになるので)。

その他、業務遂行上必要があれば思想・信条や債務状況を問い合わせることは
可能であります。(積極的におこなうべきではないが違法ではありません)。
注意すべきことは、あくまで業務上必要がある場合です。例えば、警備業の
事業所で「私はテロリズムを支持する」という思想の持ち主を採用して、
公式行事等の警備を任せることが出来ますか?このように、業務や業種とその
程度に応じてであれば、聞くことは可能と考えております。
―― 思想・信条の情報は取得してはならないと厚労省は指針等で制限して
    いますが、判例(三菱樹脂事件 最高裁大S48.12.12)では業務上必要で
    あれば申告を求めることは違法ではないとしている点を見ても、これも
    厚労省は理想論だけが先走っていると思います。先の健康診断も含めて、
    厚労省は就職率のUPや雇用の安定・増大ばかりに熱心ですが、受け
    入れる企業はあくまで慈善事業ではなく、利益を上げ、ステークホルダー
    への責任を果たすことが最大の目的であり、その目的を阻害する従業員
    を採用しない、そのために採用時にチェックするのは当然の行為と考え
    ています。その点、厚労省より裁判所の方がまともな判断をしていると
    言えます。

話は変わり、身元保証書については損害賠償機能を付与している保証書を
よく見受けますが、賠償機能を付与しても、(1)有効期間が限られてしまう
(最大5年)、(2)実際に損害賠償を認められるのは、損害額の40%にも満た
ないことから、賠償機能を外し純粋な身元保証に限定する方がより重要と
いえます。

取れもしない損害賠償の文言を付して、有効期限の制約を受けるより
(もちろん、その都度身元保証書を出し直しさせるのであれば別ですが)、
純粋な身元保証書にして、有効期限をなくす方がより効果的と思います。

参考までに、雛型を以下添付します。
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    殿

           身 元 保 証 書

身元保証される者 ○▽□×(  年  月  日生)

 上記の者(以下「本人」といいます)が、今般貴社に採用されることに
なりましたので、貴社に対して次のとおり約束します。

 本人が精神的・肉体的・社会的ともに健全であり、本人が貴社の従業員
として適格性を有することを保証します。

 万一、本人が貴社へ入社後、精神・肉体的な問題を生じた場合、貴社に
対し、本人の処遇問題等の措置に関し、問題解決に向けて全面的に協力し、
積極的に話し合いを行います。

平成  年  月  日  

           現住所○○市××区▽▽町1-2-3

           本人との関係 父

           身元保証人 ○▽ □男  印 

           連絡先06-1234-5678

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その他、採用者別のポイントとしては次があります。

・地位特定者の採用について

地位を特定して採用する場合は、労基法14条の指針を参考に、年収の目安
は1,075万円以上とし、期間を5年間と定めた上で、「一定の成果が出な
かった場合は中途解約する旨を労働契約書に記載しておくべきです。
そうすることで、一定の成果が出なかった場合は、その時点で契約解除
できます。それ以外であれば、労働者性が強くなり、成果が上がらない
からといって契約解除をすることが難しくなります。

なお、「一定の成果」を求めるにあたり、最低でも6か月以上は様子をみる
必要があります。

・パート等期間雇用者の採用について

パート等期間雇用者についても、安易に採用することは差し控え、その
採用の必要性を考えたうえで採用するか否かを含めて判断することが必要
です。正社員と同じ勤務内容であり、契約を数回更新していると、いわゆる
『擬似パート』となり、解雇権濫用の法理が適用されることになります。
つまり、パートと言えども安易に解雇できなくなります。期間雇用の目的を
考えて、期間満了に伴い、更新せずに契約を修了することが望ましいです。
―― パートの労働時間についても、週20時間未満の場合は解雇権濫用の
  法理が適用されませんが、週20時間以上であれば類推適用される惧れが
  出てきます。そのため、期間だけでなく、労働日数や時間についても
  留意する必要があります。

・派遣労働者の採用について

派遣労働者については、情報保護(守秘義務)に関し、派遣労働者と派遣先
との間で直接守秘義務の契約ないし誓約をさせることはできない点に留意が
必要です。派遣労働者に守秘義務を厳格に課したいのであれば、派遣元と
派遣先との間で、「派遣元において守秘義務を当該者に徹底、研修を受講
させ、仮に情報漏洩等があった場合は派遣元が損害賠償を負う」と契約書に
明記することにより、間接的に遵守させることになるでしょう。


次回は「採用時におけるトラブル回避(下編)」をお伝えする予定です。 


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配信責任元:
岡西労務管理センター(社会保険労務士事務所、行政書士事務所)
日本経営労務総合研究所(経営・労務コンサルティング、
            人材育成・能力開発コンサルティング会社)
ジェイオーマネジメント(給与計算・総務・経理・福利厚生管理
            アウトソーシング会社)
発行責任者:岡西労務管理センター代表 岡西豊博
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