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2009/07/20

メールマガジン(岡西労務配信)人事労務管理の押さえどころ

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このメールマガジンは、最近の労務・労働問題に焦点を当て、
その対応・予防を中心にお伝えしていきます。
ただ、同種の問題であっても、その背景や経緯等で対処は
千差万別なため、あくまで一例/参考としてご覧頂ければ
幸いです。
個別にご相談の場合は、以下までご連絡下さい(顧問先企業様
は無料、顧問契約を締結されていない方は別途相談料が生じる
場合があります)。
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第8回「就業規則の解説」(中編)

 前回は、就業規則の具体論に入る前に、どうして就業規則の整備が
必要なのか、法律論や背景論を中心にお話いたしました。

 本日は、就業規則の作成・変更に関する具体論のうち、周辺情報を
お話したいと思います。

4.労働条件の基本的枠組み

 労働条件を定める方法として、就業規則以外に労働契約および労働
協約があります。
 これらの位置付けとしては次のとおりです。
(下向きの矢印は、下に行くほど労働条件の取り決めについて重要
となる)

●労働契約:個人と結ぶ契約であり、労働契約については、賃金や
労働時間等については書面で交付しなければならない。
⇒就業規則に定める労働条件に達しない労働契約については無効
 となる。
 無効となった労働条件は自動的に就業規則で定める基準となる
 (労基法第93条)
 ※就業規則より有利な条件を定めた労働契約は有効
   ↓
●就業規則:会社で定める規定。今回のテーマの本論。
⇒法令および労働協約に定める労働条件に反する労働契約については
 無効となる(労基法第92条1項)
 ※労働協約より有利・不利に関わらず定めた労働契約は無効
   ↓
●労働協約:労働組合との間で締結した労働条件等。労働組合が無い
 会社には労働協約は存在しません。
   ↓
●労働基準法:労働条件として最低限のものを定めており、これを
 下回る労働協約・就業規則・労働条件を決めることは不可能。

 つまり、皆さんの会社で就業規則を作成・変更する場合は、労基法を
下回る基準で定めることは出来ません。次に労働協約がある場合は、
労働協約より下回ることは出来ません。
 では、次の場合はどうでしょうか?

(例)『当社では、1日の就業時間を7時間30分と定めています。
今回、就業規則の変更で8時間にしたいと思います。なお、当社
には労働協約はありません』

 労基法では、1日8時間・1週40時間を超えて労働をさせては
ならないとなっていますので、この変更は可能と思われるでしょう。
 実は、この変更は原則できません。これを『労働条件の不利益変更』
といいます。
 今まで、7時間30分であったのが、8時間になるということは、
仮に月給制や日給制の場合、賃金額が変わらない場合は、労働者に
とって不利益になります。労働条件を不利益に変更する場合は、
 (1)労働者の過半数以上の同意を得る
 (2)合理的な理由があり、不利益変更がやむを得ない場合
のいずれかでないと、争った場合に、変更が無効となる恐れが
あります。

 (1)の過半数の同意を得た場合は、同意しなかった者も含めて
包括的に変更後の労働条件が適用できます。(2)の場合は、同意を
得ずに一方的に行う手法ですが、『合理的な理由』を満たすこと
が必要であり、合理的な理由とは、経営危機を乗り切るためには、
どうしても不利益な変更をしなければ会社が潰れる等の強い理由
が必要です。大して経営危機でもないのに
「労働力を強化するため」とか、抽象的な理由では一方的な変更は
出来ません。

 ここで厄介なのは、上記の説明は、明確に現在規定があり、
その規定を不利益に変更する場合の説明でしたが、実は規定が
無くても、不利益変更となる場合があります。これを『労使慣行』
と言います。
 具体的には、次のようなケースを言います。

(例)『当社では就業規則には8時間の労働時間を規定していま
 したが、創業以来、7時間30分で就業が終わった者は帰っても
 よいとしてきました。これにより、ほとんどの社員が、7時間
 30分を経過したら退社していました。
 今回、就業規則のとおり8時間は在社させるようにしようと思い
 ます』

 この場合は、長年にわたり、就業時間は7時間30分となっている
のであれば、労使慣行が成立していると言え、変更する場合は、上記の
とおり不利益変更の取り扱いが必要となってきます。
 明文化されていなくても、その扱いが大半の従業員に長年にわたり
適用されてきた場合は、規定されているのと同等の効力を有するのです。
 ただ、労働条件といっても、賃金や労働時間等、最重要な項目から、
福利厚生等の恩恵的な項目まで様々ですので、程度によっては、一定の
期間を変更期間として、徐々に周知させ、従業員の理解を得て変更する
ことも可能な場合があります。

 いずれにしても、労働条件の不利益変更は高度な判断が必要となり
ますので、無用なトラブルを避けるためにも、事前に当方までご相談
下さい。

5.就業規則の作成・変更

 さて、自社の労働条件や労働協約、労使慣行を確認した上で、就業
規則を作成・変更作業に入るわけですが、一番大切なのは、『自社に
あった規則を作成すること』です。
 多くの企業の就業規則は、親会社や関連会社の就業規則を社名や
一部変更して使用している・監督署から貰った「モデル就業規則」に
社名を入れて使っている、などの例を多く見受けられます。そして、
いざ、開いてみると使い物にならなかった場合があります。
 就業規則作成の重要な点は、社長もしくは労務管理の責任者が1条
づつ吟味して規定を作成していく必要がありことです。言い換えれば、
経営者の意向を十分反映させる必要があるのです。自らの会社・社員
を律する規則がどのようなものか、理解しておく必要があります。
 その上で、労基法どおりの最低限の労働条件を定めるもよし、法律
を上回った基準を定めるのもよし、自社の魅力をアピールするものの
一つに労働条件があるわけですから、ただ作ればいいものではあり
ません。
 また、既にいる従業員に理解・同意されるか、労働組合がある
場合は、労使紛争の火種とならないか、配慮すべき点は多々あり
ます。
 新規作成の場合は、従来からの労使慣行に配慮すること、変更の
場合は、従前の規則との平仄を合わせることが必要です。

6.就業規則がクローズアップされた判例

先程「会社を守る」と言った就業規則ですが、具体的に就業規則が
会社を守った例と守れなかった例を裁判例から見てみましょう。

●守れなかった例

・従業員が職場秩序を乱したとして懲戒解雇したが、懲戒規定の
不備と周知義務を果たしていないことから懲戒解雇を有効とした
原審判決を最高裁が破棄し差し戻した事件(フジ興産事件・最高裁
第2小・15.10.10)

・就業規則変更により専任職制度を導入し、高年齢管理職者の任を
解かれた者が訴えた事件で、新制度導入は一定の合理性を認めた
ものの、賃金減額については労働者が受ける不利益に対する救済
措置や緩和措置が取られていないことから無効とされた事件
(みちのく銀行事件・仙台高裁・14.2.12)

・出向などのときには休職を命じるとした休職規定に基づいた
出向命令に応じなかった従業員が解雇されたが、この規定では
使用者に出向命令権がないとした事件(日東タイヤ事件・最高裁
第2小・48.10.19)

・出退勤時刻の管理をタイムカードでおこなっていたが、出勤・
退勤時刻と就労の始期・終期との間に齟齬があることが証明され
ないかぎり、タイムカードに記載された出勤・退勤時刻をもって
実労働時間を認定するべきとされた事件(千里山生協事件・
大阪地裁・11.5.31)

●守った例

・新たな就業規則の作成又は変更によって、労働者に不利益な
労働条件を一方的に課することは、合理的なものであるかぎり、
個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その
適用を拒否することは許されないとした事件(秋北バス事件・
最高裁大・43.12.25)

・賃金の減額を伴う55歳から60歳への定年延長を定めた就業
規則の変更につき、定年延長の必要性、延長による労働条件の
改善、福利厚生制度等の適用延長等の不利益緩和の措置、労働
組合との労働協約締結の結果行われたことから合理性が認められた
事件(第四銀行事件・最高裁第2小・9.2.28)

・賞与は「支給時点の在籍者に対し支給する」旨定めた賃金規則
が、労働基準法106条1項所定の爾後の周知方法を欠いていると
しても、それを理由に就業規則及び賃金規則が無効であるという
ことはできないとした事件(須賀工業事件・東京地裁・12.2.
24)

 このように、就業規則がクローズアップされるのは、問題社員
の処分や、賃金や賞与・退職金に関する問題等、会社にとって経営
を大きく左右するときです。

 ここまでで、就業規則の重要性と持つ意味や位置付けの一端を見て
いただけたと存じます。
 次回は、具体的なチェックポイントを見てみたいと思います。


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配信責任元:
岡西労務管理センター(社会保険労務士事務所、行政書士事務所)
日本経営労務総合研究所(経営・労務コンサルティング、
            人材育成・能力開発コンサルティング会社)
ジェイオーマネジメント(給与計算・総務・経理・福利厚生管理
            アウトソーシング会社)
発行責任者:岡西労務管理センター代表 岡西豊博
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