2009/07/15
メールマガジン(岡西労務配信)人事労務管理の押さえどころ
************************************************************** このメールマガジンは、最近の労務・労働問題に焦点を当て、 その対応・予防を中心にお伝えしていきます。 ただ、同種の問題であっても、その背景や経緯等で対処は 千差万別なため、あくまで一例/参考としてご覧頂ければ 幸いです。 個別にご相談の場合は、以下までご連絡下さい(顧問先企業様 は無料、顧問契約を締結されていない方は別途相談料が生じる 場合があります)。 ************************************************************** 第6回「就業規則の解説」(前編) 経営者の方は「就業規則」と聞いて何を感じますか?「労働基準法 で作れといわれて作ったもの」「どこかに保管している」「従業員 には見せたくない」「私が歩く規則だ」等々、様々なイメージが 出たと思いますが、『会社にとって非常に大切で、いざという時は 会社を守るもの』とのイメージを感じた方はどれほどいらっしゃい ますでしょうか? 私共は数百社の就業規則を作成してまいりましたが、依頼を受ける 際には「できる限り安く」「適当でいいから」「作って監督署に 提出しておいて」等々、金額はともかく、『仕方なしに』作成や変更 を求められるケースが大半です。 私も、就職した当初は同じ感覚でしたが、この仕事をしていく うちに、多くの会社の従業員とのトラブルを見聞きして「就業規則を こうしていれば防げたのに」「ここでこう書いてあったら、この人を 解雇できたのに」と悔やまれるケースが多くなりました。 ここで私の「就職した当初」と今の現状が変化したところから、 就業規則の重要性が大きく変わったともいえます。ここから重要な話 に入っていきます。 1.バブルの崩壊と雇用形態の多様化 日本の3種の神器と呼ばれる「終身雇用制」「年功序列型賃金」 「企業内組合」のうち、終身雇用制と年功序列型賃金がバブル期を境に 崩壊したことは言うまでもありませんが(労働組合についても、年々 組織率低下の一途)、それにより労働契約上、この10年ほどの間に 大きな変化が発生していることは余り気がついておられません。 それは、長期雇用から短期雇用への転換です。 今までは新卒で採用し定年まで勤め上げる、というスタイルが一般 的であったのに対し、リストラ・能力主義等で、中途退職・採用や、 パート・アルバイトが増え、平均在籍年数は年々下がるばかりです。 ここで生じるのは良くも悪くも「会社への忠誠心」の欠如・低下で あり、従業員が会社を見る眼は厳しくなりつつあります。そんな中、 口約束や少々の約束違反は目を瞑ってきた従業員が、所謂サービス 残業や賃金カット、長時間労働について、会社を相手に裁判を起こ したり、労働基準監督署へ告発する光景も決して珍しくなくなり つつあります。 そのような労働者が増えてきている今、会社のルールは守らせる ことはもちろんのこと、反対に会社もルールを守らなければ、たち まち訴えられることにもなりかねません。その背景にあるのが、 長期雇用から短期雇用の転換が挙げられると考えています。 そこで、就業規則を作成(見直し)して、『会社を守る』ことが 必要です。就業規則は「従業員に色々権利を付与しなければならない から見せたくない・作りたくない」という言葉を聞くことがあり ますが、就業規則を作る・作らないにかかわらず、権利は付与 しなければ法律違反になるばかりでなく、どんな不良従業員で あっても、懲戒処分する根拠も理由も無く、解雇できなくなって しまいます。 その為には、その会社に合った就業規則を作る必要があります。 2.会社に合った就業規則とは 自社の就業規則を見て下さい。定期的に改正はされていますか? もしかしたら、作成当時のまま保管されていませんか。 もし、従業員を懲戒処分したとして、その者との間で裁判となった 場合は、必ず就業規則の提出が求められます。その会社の就業規則に 照らし合わせて、処分が妥当であったか、合理的であるかを判断され ます。次のようなケースがあります。 ・降給処分を行ったが、就業規則には昇給の規定しかなかった ・会社の書類を持ち出したが、備品の持ち出しについてのみ懲戒 規定があり、書類は規定されていなかった ・コンピューターソフト会社なのに、データーの持ち出しに 関して、防止・違反時の規定はなかった ・宿直に関する規定がなかったため、睡眠時間も含めて労働時間 となった 等々、挙げればキリがありません。 その多くは、監督署で配布しているモデル就業規則を利用していた ・親会社の就業規則を使用していた・他社の就業規則を丸写しにした 等々、その会社に合った規則を作っていなかったのが要因です。 製造業とサービス業では規定する内容は違って当然です。同じサービス 業でも、販売業と飲食店では内容は違います。それを他社の規定を 流用していては、会社が必要とする規定がなく、後に困ることは目に 見えています。いざという時に使えない規定であれば、それは無いのと 同じです。それならば、まだ就業規則が無ければよかったのに、 間違ったものがあったから余計に不利になることもあるでしょう。 就業規則は法律で整備・周知の義務がある以上、作成しなければなら ないので、それならば会社の為に使える、その会社に合った規定とする べきです。 その必要性は、日本の法制度やその歴史を見れば尚更理由が良くわかります。 3.憲法・民法と労働法 日本国憲法第25条第1項で「生存権」を規定し、同第27条第1項で「労働 義務」を規定しています。つまり、その条文の意味するところは、『最低限 の生活は労働によって維持しろ、そのため国は保障する』、としています。 そこで国は、職安で職を斡旋し、能力の無い者に公共職業訓練を行うことに よって働く力を付けさせ、労働に従事させることによって、『最低限の生活を 保障する』ことを実践していることになります。反対に言えば、『最低限の 生活を営むため、その賃金は会社が保証しろ』、という意味も含まれており、 日本に年功序列型賃金が生まれました。 終戦後、占領軍によって労働法関係の整備を行われましたが(憲法第27条 第2項で定める法律が労働基準法です)、法律だけでなく、賃金制度について も整備を進め、当初アメリカは日本に『職能給』(仕事に対して給与を 支払う)を導入しようとしました。 これは「従来10人で作業をしていたところに、新しい機械を導入すると 5名の人員で事足りる。だから5人は解雇」としたいところ、労働組合は断固 として解雇を認めませんでした。では会社は「5名は解雇しないが、配置転換 をして雇用を続ける」としたところ、労働組合は、職務が変わっても従来の 賃金は維持しろ、と迫りました。となると、賃金を仕事に付けると(職務給)、 配置転換により賃金額が減少する可能性があるので、賃金を人に付けた(属人給。 いわゆる年齢給や職能給)のです。その結果、職務給は早くに姿を消し、 属人給が日本の賃金制度の主流となり、現在でも脈々と生きているのです。 そもそも、ここで5人を解雇できたならば以下の問題は起きなかったのです。 法律上は解雇自由なのです。それを解雇『不自由』にしてしまったのは、 その後の裁判例や見解によるものです。あくまで、労働契約といえども 「契約」であり、契約は契約締結(採用)・契約内容の変更(労働条件の 変更)・契約の解除(解雇)は自由です。 それが不自由になったところから、使用者は、できる限り従業員を解雇せず に使い続けなければならない。しかし、右肩上がりの賃金を如何に仕事に 見合った賃金にするか、処遇をどうするか頭を悩ませました。これが 『不利益変更』の法理です。 先程の例で、5人を配置転換させる時に、仮に日給1万円の者を配置転換 する際に「明日から8千円。嫌ならクビ」と言えれば、不利益変更の問題は 生じないのです。しかし実態は、「明日から8千円にしていただけませんか? クビにはしませんのでどうかお願いします」と使用者は労働者に同意を得る 必要があります(同意については、個別同意と包括同意の手法がありますが、 後日解説)。 ここで本人が同意しなければ、使用者は頭を抱えることになります。 それら賃金の問題にしても、後述するように就業規則で明記することで、 解決できることも多々あります。 次回は、7月下旬に「就業規則の解説(中編)」を掲載します。 ************************************************************** 配信責任元: 岡西労務管理センター(社会保険労務士事務所、行政書士事務所) 日本経営労務総合研究所(経営・労務コンサルティング、 人材育成・能力開発コンサルティング会社) ジェイオーマネジメント(給与計算・総務・経理・福利厚生管理 アウトソーシング会社) 発行責任者:岡西労務管理センター代表 岡西豊博 **************************************************************


