2009/07/26
生みの親より育ての親
四国のある企業が地下立体駐輪場システムを開発したという事例が先日ある番組で紹介されていました。 地中の鉄骨を騒音や振動を出さずに埋め込む技術と工業用ロボット技術を応用し自転車を格納する点でこの企業の強みを生かした 事業開発戦略として注目されます。もともと地中空間工事を手がける事業者で振動や騒音を出さずに地中空間の工事を行う技術をも っており、それに工業用ロボット技術で回転、昇降、出庫をすばやく行う自転車の自動格納システムを開発しました。 この地下駐輪システムは、円筒形の地中空間に認証カードをかざすだけで地下に格納された自転車を地上に自動搬出すまでになんと 17秒しかかからないため利用者からは大変な好評のようです。 自転車は100年以上も前から人々の生活の中に浸透した移動手段で、徒歩よりも行動範囲を広め、自動車やバイクのような制約 が少ないため根強い人気があり保有台数7,000万台、普及率83%の成熟化した商品です。昨今はCO2問題への関心の高まりや電動アシ スト自転車の普及とともに、改めて自転車の価値が見直されてきており、大型の自転車専門チェーンも出てきています。それまで横 ばいだった自転車出荷台数は2007年、2008年と2桁成長ということですから自転車関連の分野に新たなビジネスチャンスが 発生してきます。 駅前や商店街、商業施設はどこも自転車対策に頭を悩ましていて、以前から社会問題化してきています。駐輪場を設けるところも ありますが、有料、遠い、出し入れがわずらわしいなど利用者の評価は必ずしもよいものでは無いようです。 駐輪場システムに関しては、私のかかわったプロジェクトでもしばしばアイデアテーマとしてあがってきましたが、なかなか決め 手となる魅力的な企画にはならず別のテーマが優先されるのが常でした。先にあげた地中立体駐輪場システムは、駐輪をめぐる問題 解決の決め手となる要素も多く、利用者の手を煩わすことなくスピーディーに自転車が出し入れできるあたりで潜在ニーズを発掘し ていけば今後普及し、駐輪に関する多くの課題をクリアしていくものと思われます。 新規事業開発のポイントは、自社の強みと市場ニーズとのマッチングですが、実際にはなかなかその一致点を見出すことは難しい のが実態です。先にあげた駐輪場をめぐる問題解決のニーズは確実にあり、そのためのアイデアも多く出されますが、技術やシステ ム、あるいはビジネスモデルを具現化し実用化していくところまで行かなければ問題解決にはならないため、新規事業として離陸し ていくことはできないわけです。 発明や特許に関しては実用化するのが難しいといわれますが、この点をクリアする自社の強みが発揮できるかどうかが究極のポイン トとなります。まさに生みの親より育ての親というわけです。


