大道芸人と愉快な仲間たち冒険記  RSSを登録する

3年の月日が流れる間に僕は世界を半分周り、そして僕は大道芸人となっていた。独特の世界観で人の世を渡り歩きその優しさに触れています。2008年夏の物語、舞台はヨーロッパ。『人生大学』-旅を大学ととらえた青年の人生物語である。

  • 発行周期 週刊
  • 最新号 2009/09/29
  • 部数 15部
  • メルマガID 0000279995
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2009/02/05

ヨーロッパの旅No.

今日も良い天気だった。太陽が強くじりじりと肌が焼けそうだった。
起きた今、一体何時なのか分からない。
太陽の位置からして10時くらいだろうと思う。
時計は持っていない。不思議と誰も持っていない。
ここに来る人たちは、携帯電話も持っていない人たちが多い。


お腹が減ったがご飯はまだだろう。一日2回あると聞いていた。
シャワーを浴びようと思った。
村の入り口にシャワー場が設けられていたが、なんとお湯シャワーを浴びれるようになっていた。
ホースでひいてきた湧き水を鉄の管に通し、そこの部分を焚き火に入れて温めている。
ぬるま湯だが、湧き水は冷たすぎるためそれでも十分良かった。
石鹸は地球に優しい天然物でなければならない。
それか、何か分からないが、手作りの石鹸が置いてあった。
食器などは皆、炭で洗っていた。

シャワー場では、男も女も皆全裸で一緒だ。
素っ裸で遊んでいる人達もいる。
不思議なもので、それが当たり前の光景となると何も感じない。
僕も素っ裸になってシャワーを浴びた。青空のした大自然の中で浴びるシャワーは気持ちが良かった。

道を歩きすれ違う人々は本当に心地良い。
皆、目をみて挨拶をする。日本人の僕が珍しい人もいるようだ。
ドイツの10人で暮らすデニスの家へ訪れ皆に最初に挨拶した時、リビングルームで寛ぐ全員が僕をちゃんと見て歓迎してくれた。
当たり前のことかもしれないが、こんな事はあまりない。皆の心が開いている証拠だった。
レインボーにいる人達は皆心が開いている。
裸で歩いている人達は、その象徴のように思う。

まささんという日本人と出会った。
彼は長髪でバンダナをしていて、80年代を思わせる風貌をしていた。
30歳くらいで、7年くらいもう日本に帰っていないと言っていた。
彼はスペイン領のカナリア諸島という西アフリカ沖にある小さな島にずっと
住んでいたらしく、流暢にスペイン語を話す。
スペインで行われるレインボーギャザリングにはよく来るらしく、
ここでも彼の友達はたくさんいた。
バス停で出会ったチェコ人のテレサも彼と仲が良かった。

そしてみこさんという人と出会った。彼女はスペイン人の旦那さんがいて、
子供が二人いて家族で来ていた。
長男の大和が活発盛りで、よくそこらじゅうを駆け回っていたのが印象的だった。
南スペインのある場所に、ヒッピー村があるらしく、そこで電気もない自給自足の生活をしていると行っていた。面白そうなのでいつか遊びに行くと約束した。

あと、こうじ君だ。
28歳で彼も旅人だ。彼はあまり喋る人でなく、人の顔をじっと見ている。
彼もジャグリングをし、火を使ったファイアーパフォーマンスが得意だった。
いつもどこかで瞑想していた。
一度、ババと呼ばれる老人のテントへ皆で遊びに行った時、彼がきて、愛情のこもった美味しいチャパティーを作ってくれたのが印象的だった。
チャパティーとは、小麦粉を水で練っただけのもので、火で焼くとパリパリになる。
パンのようにして食べる。簡単で小麦粉以外何もいらないので、お腹がすいた時は皆いつでもこれを食べている。
水加減と、揉み方が大事で、こうじくんはまさに職人だった。ちなみにこれもインド料理である。

変な日本人たちだ。でも色々な面白い話を聞けて楽しかった。



14時くらいになった時、フードサークルの声が響いた。
何が出たか覚えてはいないが、レインボーの食事はだいたい、豆類、野菜類、イモ類、ご飯、チャパティー、フルーツ、シリアル、そしてたまにスパゲッティだ。
たまにイスラエル人がイスラエル料理を作ったり、ドイツ人がドイツ料理を作ったりしてくれるが、通常はよく分からないものが出てくる。
ヘルシーで美味しい日本料理をいつか作ってあげたいと思っている。
こちらでは日本食は有名で、みんな大好きだ。


フードサークルが終わると、賑やかな音楽と共にマジックハットが周ってくる。
音楽隊が付き、踊りたい人も勝手に付いてくる。そこにこうじくんもいた。
マジックハットにご飯代を入れるのだ。
いくらでも構わない。
お金がなければ、ハットにキスをする。つまり心だ。

食後はワークショップの時間だ。
ワークショップとは、自分の特技や人に教えられることを教えるのだ。
例えば、マッサージの仕方を知っていれば、先生となり、それを習いたい人が集まってくるので教えてあげるのだ。
瞑想、ヨガ、コンタクトダンス、マッサージ・指圧、などのワークショップが出た。

僕はジャグリングをしたかったのですることにした。
皆、思い思いに時間を過ごす。
ここは縛られるものが何もない。時間もなく、全てが昔のように流れている。
そんな場所だ。

またUFOでも呼ぶようなことをしている人達もいる。
不思議な空間に自分も一体化していることに何も違和感を抱かない。

皆、ここでいったい何をしているのだろう?

その後仲良くなったフランス人の女の子がこんな事を言っていた。

「バビロンでの生活をずっと続けていると疲れてきちゃって、
心がどうしても狭くなってきちゃうのよ。
だから私はこういった場所で全てを開放できる時間が必要なの」

彼女らの言うバビロンとは、社会という意味だ。
納得した。けれども長く旅をしている僕は社会から離れた生き方をずっとしている。
今の自分にとって彼女の言っている深意は本当のところよく分からなかった。


僕はバビロンと聞くと、ガーナの友達たちを思い出す。
彼らは、夢を求めてバビロンへ行こうとしている。しかし、アフリカ人がヨーロッパなどの先進国に行くのはそう簡単ではない。
行けるのは本の一握りだ。そしてそこでの成功なんて約束されているはずもない。
ガーナで出会った人のなかには、運良くバビロンへ行ったが、帰ってきた者もいた。

僕はそのバビロンに今帰ってきて、彼らのことをよく思い出す。
ここでどれだけ成長して、いつか彼らにまた会いに行くのが僕の夢でもある。


いよいよ明日は満月だ。
様々な人間がいるこの場所は、今の自分にとっていったい何を学べるのだろうか。
月が昇ると、真っ暗闇だった村に光が射した。同時に「ワオーン」という鳴き声が響いてきた。狼じゃない。人間だ。皆、月を見て叫んでいるのだ。
僕も叫んだ。寂しかった。
アフリカ以来色々と変わった自分にとって、旅のスタイルも大きく変わった。
たくさんの人と出会い、仲良くなり、そして別れていく。
そんな事に少し疲れていたのかもしれない。今の僕に前ほどのパワーはなかった。

レインボー2日目が終わる。今日から僕は新しい友達のウリというイスラエル人のテントで寝かせてもらえることになった。
ティピはうるさいし寒かった。それに一人になれる環境がやっぱし欲しかった。
ウリのテントは二人用で決して大きくない。それでも快く僕を泊めてくれた。
なんて良い奴なんだ。たくさんの感謝をし、ゆっくりと寝袋に包まった。
今夜もティピからは賑やかな音楽が永遠と聞こえてきたのだった。


続く


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