2009/09/30
◆◇【1000年水】Vol.52 2009/9/30発行「八ツ場ダム建設予定地を見てやはり中止と思った」
━━━━━━━━━━━━━━━━ アクアスフィア 橋本淳司事務所 ━━ ◆◇【1000年水】おいしい水きれいな水を次世代へ ◇◆ Vol.51 2009/9/30発行 ━━ http://www.aqua-sphere.net/ ━━━━━━━━━━━━━━━━ ─■ CONTENTS ■───────────────────────── ★HOT TOPICS ◆オーストラリアの町でボトル水が発売禁止に ★きょうの話題 ◆「八ツ場ダム建設予定地を見てやはり中止と思った」 ★メディア掲載情報 ◆月刊ジュニアエラ2009年9月号「今月の本棚」で『水の大研究』が紹介されました。 http://www.aqua-sphere.net/media/pdf/2009/junioraera0910.pdf ───────────────────────────────── ◆ おはようございます。橋本淳司です。 ◆ オーストラリアの小さな町で、 9月26日、ペットボトル入りの飲料水(以下ボトル水)が販売禁止になりました。 ◆ 小さな町とは、オーストラリア南東部にある人口2000人の町バンダヌーン。 ボトル水メーカーによる同地の地下水層開発に反対する運動のなかで、 住民はペットボトルの環境に与える影響を学び、 ボトル水販売を禁止を提案する地元小売商に賛同が集まりました。 ◆ 店舗の棚からはボトル水が撤去され、 水飲み場や給水所で水をくめる再利用可能な容器に置き換えられました。 ◆ 欧米を中心にここ数年ボトル水を見直す動きが起きています。 ◆ ワールドウォッチ研究所は、「ボトル水は環境に有害」というレポートのなかで、 以下の3点を強調しています。 (1)天然の鉱水・湧水が過剰に取水され、地域の河川や地下水が脅かされる。 (2)製品の生産と輸送に多大なエネルギーが消費される。 (3)製造に石油由来のプラスチックが使用されるが、そのほとんどはリサイクルされていない。 ◆ こうしたことからボトル水を見直す動きが欧米を中心に広がり、 米サンフランシスコ市などでは市役所内と市関連施設で ボトル水を公費で購入することを禁止していますが、 町全体での禁止は世界初の事例と思われます。 ◆ 町の関係者は、「小さな地方の町でも環境に役立つ本物の変革をもたらすことができる」と胸を張っています。 こうした動きについて詳しくは、以下の毎日新聞の記事を読んでください。 http://www.aqua-sphere.net/media/pdf/2009/mainichi090917.pdf □★□★ きょうの話題 ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「八ツ場ダム建設予定地を見てやはり中止と思った」 (→水と暮らしのはなし) http://www.aqua-sphere.net/1000/ws/kurashi/kurashi.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□★□ ◆ 「ここまで造ったのにもったいない」、「住民の怒りはおさまらない」。 八ツ場ダムについての報道が毎日洪水のように溢れ出ています。 いま本当に必要なのは「情報洪水に対する治水ダム」ではないかと、 思ってしまいます。 ◆ 八ツ場ダムは、僕の住む群馬県に建設予定のダムなので、 今年8月に見に行ってきました。 ◆ よく「県民性」が話題になると、 「群馬県人は『上毛かるた』(群馬県の名所旧跡、偉人などを読み込んだカルタ)で盛り上がる」 といわれるのをご存知でしょうか? ご存知ない方は、周囲にいる群馬県人に「『上毛かるた』知っている?」と 聞いてみてください。その後、10分くらい講義してくれるはずです(苦笑)。 ◆ さて、『上毛かるた』のなかに、この地を呼んだ 「耶馬渓(やばけい)しのぐ吾妻渓谷」という札があり、 八ツ場ダムができると美しい景観は壊され、この札の内容に偽りが生じるので、 個人的に現在の「や」の札の存在は危ういと思っていました。 そのあかつきには「や」の札は「八ツ場ダム 保守と土建のシンボルだ」に 変わるのではないかと思い、勝手に絵札作成作業に入っていました(嘘です)。 ◆ あるいは「八ツ場ダム 保守と世襲が支えてる」もいいかなと思っていました。 ダム予定地(長野原町)の選挙区からは 福田赳夫、中曽根康弘、小渕恵三と3首相が出てこの事業を推進し、 その後、世襲した福田康夫、中曽根弘文は隣の小選挙区と参議院、 ご当地からは小渕優子が後継し事業を後押ししています。 6人もの国会議員が描かれた絵札はこれまでの『上毛かるた』にはないので、 これもおもしろいかもしれません。 ◆ さて実際に八ツ場ダム建設予定地に行ってみると、まず、その大きさに驚きます。 「そろそと建設予定地か」と思っていると、 「もう建設予定地」というのが正直な感想で、 まるでお釈迦様の手のひらのうえの孫悟空のようです。 ◆ ただ、建設予定地だと気づかない理由は「広いから」ばかりでなく、 「工事がたいして進んでいない」からです。 「かさ上げ」道路の橋脚はすでにありますが、全体としてはまだまだです。 とはいっても、人々がかつて住んでいた家はそのまま放置され、 無人のだったぴろい土地がそこにあります。 ◆ 石原都知事が「大体7割できている」と言い、 最近のマスコミ報道にも「工事の7割はすんでいるのだから、 いまから中止にするはもったいないではないか」というものがありますが、 実際に見てみると、それが間違いであるのは一目瞭然です。 調べてみると、4600億円の予算の「7割」使用したということで、 工事の進捗状況とは何の関係もありません。 むしろあまりできていないのに予算の7割を使用してしまったということは、 継続された場合さらに金がかかるということです。 ◆ この「7割はできているんだからもったいない」に代表されるように、 報道されている情報には誤りも多いようです。 あるいは感情のベールに包み込まれて、 客観的な事実が見えにくくなっている部分もあるようです。 そこで八ツ場ダムをめぐる情報を客観的に見ていきたいと思います。 ◆ まず中止を打ち出した民主党の「中止理由」は何でしょうか。 民主党は選挙前に掲げたマニフェストのなかで 「国の総予算207兆円を徹底的に効率化。ムダづかい不要不急な事業を根絶する」 とし、公共事業の節約額1・3兆円の説明の中で、 「川辺川ダム、八ツ場ダムは中止。 時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直す」 としています。 つまり暮らしのために必要な予算のために、 不必要なダムを中止するというのが民主党の主張です。 ◆ そうなるとこの民主党の主張に合理性があれば中止、 なければ継続ということになります。 いいかえればダムの必要性を訴える側の、 「治水目的」「利水目的」という2つの目的に合理性があるかどうかです。 ◆ まず治水についてですが、国土交通省HPに 「増水時に貯水し少しずつ流すことで洪水発生を防ぐ」ため、 「6500万トンの調節容量を確保し毎秒2400トンの流水を調節」し、 「群馬県内の下流沿岸はじめ利根川下流の茨城・埼玉・千葉・東京等首都圏の 洪水被害が軽減」されるという記述があります。 こうした数字は机上で計算されているだけなので、 ちゃちゃを入れるつもりもないのですが(笑)、 毎秒2400トンだと7時間31分で満タンになってしまいます。 大雨による増水は7時間31分でおさまるのでしょうか? 実際、国交相官僚が国会答弁で、 「カスリン台風のときのような雨の降り方においては、 八ツ場ダムの効果は期待できないという計算結果も出ております」 と言っています。 ◆ 続いて利水です。 計画当初は、八ッ場ダムを「首都圏の水ガメ」とするはずだったのですが、 人口増加がストップし、主要な工場がアジアに移転されたことなどから、 首都圏の水需要が低下し、現在ではダム建設目的から外れています。 加えて上流からの水質が強い酸性であるため、ここの水を飲むには、 水に大量の石灰を混ぜて中和しなければなりません。 そのため1日53トンの石灰が必要となり、 また、水処理したあとの廃棄物を捨てる場所も必要となります。 ◆ このように治水面においても利水面においても必要性は乏しいといえます。 ◆ 1つあわせて考えておきたいのは、 日本の国家財政は破綻寸前であるということです。 縮小していく予算規模のなかで、 必要なものに重点配分し、必要でないものを削ることを迫られています。 少なくとも「暮らしのための政策」を犠牲にしてまで、 「ダム建設」を優先するべきではありません。 ◆ じつは、こうした論理的な部分は誰でもわかっているのだと思います。 論理を越えた感情の部分、 「いまさらどうしてくれるんだよ!」という怒りや悲しみの部分が、 論理の行く手を阻んでいます。 あるいはダム建設そのものが生活であるという人もいます。 ◆ ダム中止によって実害を被るのは、 すでに多額の資金を拠出している各自治体、 見込まれた収入がなくなる建設業者およびそれに従事する人々、 実害についてはわかりませんが、 「国の身勝手に翻弄され」精神的な負担を強いられる住民などでしょう。 ◆ 前原国交相は、「中止の場合、自治体がこれまで拠出した負担金を 治水費も含め返還を検討する」との考えを明らかにしていますが、 その場合、 1都5県がこれまで負担した総額1985億円+生活再建費を返還することになります。 国が陳謝し、きちんと対話をしながらこうした保障することで、 感情的な部分もしだいに解決方向に向かうのではないでしょうか。 ◆ 建設業者はパラダイム変化の好機と考えるべきです。 国を頼りダムと道路をつくる時代はすでに終わっています。 このことに早く気づき、 事業転換を図らなければ生き残ってはいけないでしょう。 実際、公共事業の減少で仕事がなくなった建設業者が、 農林業分野に進出するケースが増えています。 2005年9月から全国展開された構造改革特区制度により 一般企業の農業参入が可能になったことで、 ハウス栽培や水耕栽培などに取り組む建設業者が増えているのです。 またバイオマス事業に関心を持っているところも多い。 国や地方自治体にとって、 こうした事業者が環境対策、 地球温暖化対策につながる新しい事業に参入すること、 産業転換することを推進する仕組みや組織をつくり、 細かな点まで行き届いた支援を行う必要があります。 ◆ そして、いちばん重要なのは、 このダム中止という決断が、 未来にとってすばらしいものだというコンセンサスを 日本人全員がもつことでしょう。 関係者は、いまはたいへんつらい思いをされているでしょう。 ですがこの中止は、 すでに進捗している無駄な公共事業見直しの先例となりますし、 次世代が生きていくための環境保全にも繋がります。 未来から見たら、 「勇気ある中止」「将来を見据えた行動」と賛辞されるはずです。 ◆ 少なくとも『上毛かるた』の「や」の札は守られることになります。 【1000年水バックナンバーはこちらから↓↓】 http://www.aqua-sphere.net/1000/1000_index.html □★□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 近日開催される講演・セミナー情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□★□ ★ みずのがっこう特別授業&交流会<日時> 9月30日(水) 特別授業:19:15〜21:00(開場 18:45〜) 交流会 :21:00〜22:00 <会場> 東京ミッドタウン・デザインハブ インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター http://www.liaison-center.net/content/view/29/72/lang,ja/ <主催> Think The Earth Project <詳細> https://pro.form-mailer.jp/fms/197456f13710 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ くまもり東京シンポジウム(ビデオ出演) <日時> 10月4日(日)13:00〜17:00 <会場> 早稲田大学国際会議場 <主催> 日本熊森協会 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□★□ ★ 館林市民大学講座 <日時> 10月28日(水)19:00〜20:30 <会場> 館林市文化会館大ホール <主催> 館林市民大学講座実行委員会/館林市教育委員会 <問合せ> 館林市市役所生涯学習課生涯学習係/TEL 0276-72-4111 <詳細> http://www.aqua-sphere.net/seminar/2009/pdf/091028.pdf ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□★□ ★ 東京学芸大学講演 <日時> 11月5日(木)10:30〜12:00 <会場> 東京学芸大学 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□★□ ★ 東大和市中央公民館講座 <日時> 11月19日(木)10:00〜12:00 <会場> 東大和市中央公民館 <主催> 東大和市中央公民館 <問い合わせ先> 東大和市中央公民館/TEL 042-564-2451 □★□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ メ デ ィ ア 掲 載 情 報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□★□ ◆毎日新聞「水道水:もっと飲もう エコで味、質とも向上」にてコメントしました。 http://mainichi.jp/life/food/news/20090917ddm013100124000c.html ◆月刊ジュニアエラ2009年9月号「今月の本棚」で『水の大研究』が紹介されました。 http://www.aqua-sphere.net/media/pdf/2009/junioraera0910.pdf ◆『世界が水を奪い合う日、日本の水が奪われる日』(PHP研究所)を書評などで紹介していただきました。 http://tinyurl.com/ndr6vm ●毎日新聞「今週の本棚」森谷正規氏評(2009年7月26日) http://www.aqua-sphere.net/media/pdf/2009/mainichi090726.pdf 「世界的な水不足は、輸入食料価格の高騰、さらには入手難となって、 日本にも重大な影響をもたらす恐れが大きい」 ●上毛新聞「三山春秋」(2009年8月4日) http://www.aqua-sphere.net/media/pdf/2009/jomo090804.pdf 「水問題は、著者によると、地球と人間社会との不調和が生んだ問題の一つ。 エネルギー問題、食料問題と密接に絡み、 これら〈三つ子〉の問題が地球温暖化という現象として現れてきた」 ●小学館「本の窓」9・10合併号 PHP研究所大久保龍也氏「私の編集した一冊」 http://www.aqua-sphere.net/media/pdf/2009/honnomado090820.pdf 「世界の水争奪戦を俯瞰するとともに、水ビジネスの動向なども交え、 今後、日本がとるべき対策を解き明かす。 資源・環境問題を考えるに欠かせない一冊である」 ●日刊工業新聞「話題の本」(2009年8月21日) 「本書は、世界各地で起きている水の争奪戦の実情を見ていく。 水争奪戦は、水資源をめぐって国際間の紛争・戦争だけでなく、 水利権や上下水道ビジネスをめぐる経済戦争でもある。 企業間や、企業と地域社会のケースもある。 また、エネルギー・食料・水の“三つ子問題”は、 人類が地球の恩恵を無秩序にむさぼり続けた結果である地球温暖化の問題児でもある、と。」 ●中日新聞「新刊案内」(2009年8月30日) 「日本人は水だけは自給自足できていると少なからず錯覚しているが、 食料輸入という形で世界中の水を大量に消費している。 一方で、日本の豊かな森林(水源地)は外国による買収の標的にもなりつつある。 世界各地の水事情やグローバルな水企業の巨大ビジネスを紹介し、 日本も決して無縁ではいられない水問題の輪郭を浮き彫りにする。」 □★□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「水」のことがやさしくわかる!橋本淳司の本 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□★□ ◆いろいろな水問題をバケツ1杯というものさしではかってみましょう。 『明日の水は大丈夫?バケツ1杯で考える「水」の授業』(技術評論社) http://tinyurl.com/ksgsx3 ◆水問題の「いま」がわかります! 『世界が水を奪い合う日、日本の水が奪われる日』(PHP研究所) http://tinyurl.com/ndr6vm ◆小学校の総合学習教材として採用されています! 『人と地球の生命のみなもと「水の大研究」不思議な世界をのぞいてみよう』(PHP研究所) http://tinyurl.com/24hn5f ◆「水」を勉強するための入門書として好評をいただいております! 『おいしい水 きれいな水』(日本実業出版社) http://tinyurl.com/3bzy7t □★□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「水」の講演、出前授業!いたします ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□★□ ◆水の不思議や水問題について橋本淳司がわかりやすくお話しします。過去の講演実績はこちらからご覧ください。 http://www.aqua-sphere.net/seminar/water_s.html ◆ご依頼はメールにてお願いします。 welcome@aqua-sphere.net ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1000年水】おいしい水きれいな水を次世代へ Vol.51 2009/9/30発行 ────────────────────────────────── 編集・発行:アクアスフィア 橋本淳司事務所 http://www.aqua-sphere.net/ メールでのお問合せ、ご感想は welcome@aqua-sphere.net まで 登録解除のお手続きは http://www.mag2.com/m/0000273841.html バックナンバーは http://www.aqua-sphere.net/1000/1000_index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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2009/11/25 ◆◇【1000年水】Vol.60 2009/11/25発行「地方の町が「おいしい水」を飲み続けるためには」
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2009/11/18 ◆◇【1000年水】Vol.59 2009/11/18発行「水はサプリメントではない」
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2009/11/11 ◆◇【1000年水】Vol.58 2009/11/11発行「グローバル水企業の資金源」
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2009/11/04 ◆◇【1000年水】Vol.57 2009/11/4発行「【1回2杯から1杯2回へ】トイレでジャバーと流れる水は減少中」
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2009/10/28 ◆◇【1000年水】Vol.56 2009/10/28発行「水の循環をさまたげない暮らしを考えてみよう」


