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鳥取県西部に伝わる再生神話をもとに古代都市国家成立の小説、“スサノヲ”を配信します。

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2009/07/08

古代都市国家成立物語"スサノヲ"

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□●●○●●●  古代都市国家成立物語"スサノヲ"
□●●●●●●              作:荒人
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◆◆あらすじ◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
紀元百年頃、フツを頭とするモンゴル系鉄造りの民が、島根半島に漂着した。
その地は三代前に流れ着いた同胞のオロチ衆が、鉄と暴力で支配していた。
鉄造りの道を閉ざされたフツ達は、銅・錫・鉛を発見したことにより、
青銅造りとして生きる場を与えられる。
息子のフツシは、明日に希望の持てない現状を打破しようと、戦いの準備を始める・・・
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  第九章 策謀 七
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ヒグラシの声が森中に響き渡る夕暮れ時、サタの小屋に三人の男が集まっていた。
サタとフツシ、そしてヨシダの山の長《おさ》タナブだった。
「この間のケラ出しの時にトルチがな、今年のヨシダは鉄砂掘りは精を出したようだが、鉄出しは去年と変わらぬ。
砂鉄の含みが減ったのかな、とぬかした。儂は一瞬背中に冷や汗が流れた」
 タナブの目には怯えがあった。
「ほう、ケラ出しの時にしか来ないトルチに、どうしてそのようなことが分かるのかな」
 サタの目が光った。
「鉄砂を掘る山の、崩れ具合じゃ。お前さんに頼まれた砂鉄を出すために、うっかり堀場を横に広げた。
そしたら掘り幅が広くなってしまってな。トルチでなくとも気付く」
「それで、なんと言い繕ったのじゃ」
「堀方が精を出した訳ではない。奥に進まず、横に広げただけじゃ。と言うてやったわ」「それで納得したか?」
「しとらんな・・・堀方の所に行って、何人かにあれこれ聞いておった。堀方達も儂と同じ説明をしたので、一応納得した。
しかし、堀場の奥の方にまで入り込んで、辺りを眺めておった。当分の間、砂鉄は出せんな」
「これまで出して頂いただけで間に合わせますから、大丈夫です」
 少し離れて座っていたフツシが話しに加わった。
「何に間に合わせるのじゃ?」
 今度はタナブの目が光った。
フツシは思わずサタを見た。
タナブはそれを見逃してはいなかった。
「サタよ。水臭いぞ・・・儂が何も気づかずに手を貸していると思うておるのか?」
「そうよな・・・儂らは一蓮托生・・・ヨシダの山には、シオツの娘も何人か嫁入りしておる。フツシよタナブは身内じゃ」
 サタはフツシに頷いた。

 フツシは二人ににじり寄り、これまでの経緯と、これからの計画を話した。
黙って聞いていたタナブは、フツシが話し終えると尋ねた。
「お前はオロチ衆を討った後、この地をどうするつもりなのじゃ?」
「これまでは、全ての衆が、上納に追われてびくびくしながら暮らしております。そのようなことは無くすべきです」
「上納を無くすということか?」
「そうではありません。今の三が一ではなく十が一なら、どの衆にも楽に出せると思います」
「上納など必要ないのではないか。オロチ衆は何もしておらぬ。何もせぬ連中が食って行くには上納が頼りじゃ。
しかしお前達は青銅造りをしておる。儂らは鉄を造り、サタ達は獣を獲る。互いに必要な物を交換し合えば事足りる」
「俺の親父は辰韓からこの地に渡って来ましたが、辰韓の前は高句麗という地で暮らしていたそうです。
辰韓とか高句麗というのは、土地の呼び名ではなく、王が取り仕切る地域の呼び名だそうです」
「王?王とはなんじゃ?」
 タナブがサタを見ながら尋ねた。
サタは儂も知らぬというように首を振った。
「長《おさ》はその地域の衆を束ねる者です。海の向こうには、何百という衆の住む広い地域を束ねる者がいるそうです。
その者が王です」
「長《おさ》を束ねる長《おさ》じゃな」
 サタが言った。
「なぜそのような者が現れたのか?」
 今度はタナブが言った。
「親父が言うには、小さな衆同士の争いを収めた者が、争った衆を合わせた長《おさ》になった。
そのような衆が争い、より大きな衆ができた。やがて大きな衆が争い、それを制した者が
現れた。その者が全ての衆の長《おさ》となり、王と称するようになった。この王が制する地域を、クニと呼ぶそうです」
「クニになれば、争いは無くなるのか?」
 サタが尋ねた。
「いえ、クニ同士が争っているそうです。辰韓と高句麗も争っているそうです」
「海の向こうでは争いが続いておるのか・・・クニはいくつもあるのか?」
 再びサタが尋ねた。
「親父は高句麗と辰韓を見知っているそうですが、近くに馬韓というクニもあり、高句麗の西には、
この三つのクニを合わせたより遙かに大きな漢というクニがあると聞いていたそうです」
「王は争いに負けぬため上納を集めて兵士を養っておるのだな。
今の話だと、いずれどこかの王が全てのクニを制することになる・・・クニとはどのような広さなのであろう?」
 サタがタナブの顔を見た。
「この地の何倍か?・・・何十倍か?・・・想像もつかぬが」
 タナブがフツシに答えを求めた。
「俺にも想像がつきません。実はなぜ争うかも分からないのです」
「それは分かる。儂らのように狩猟をしておれば、獲物を追ってあちこち出かける。
出かけた所に他の狩猟の衆がおれば、狩り場争いが起きる。
獲物の少ない年は、食い扶持を確保するために殺し合いになることもあった」
 サタが遠くを見詰めながら言った。
「それは儂らとて同じじゃ。楽に鉄砂が掘り崩せる山が欲しい。オロチ衆が線引きをしておらねば、とうの昔に争いになっておる」
 タナブが同意した。
「この地では、オロチ衆の力が争いを止めていたことになりますね。実は高句麗の遙か西に、
大秦(ローマ)というクニがあるそうです。このクニはその一帯にある全てのクニを制しており、
何代も続いていた争いを無くしたそうです。ですから最も力の強いクニの王が全てのクニを制すれば、争いはなくなります」

□次号へつづく



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