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誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考。来日20年。満を持して日本に帰化した石平(せきへい)が、日本人が、知っているようで本当は知らない中国の真相に迫る。

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2009/09/14

石平(せきへい)のチャイナウォッチ No.063号

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2009.09.14 No.063号
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~誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考~

石平(せきへい)のチャイナウォッチ

http://www.seki-hei.com
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「愛国主義高揚運動」から見た中国の異常さ
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さる8月30日に行われた総選挙の結果、
日本では久しぶりの政権交代が起きた。

が、二大政党が主義主張を掲げて政権を競った今回の国政選挙で、
国家観や国家のビジョンなどがほとんど語られていなかったことは
とくに印象的である。

政党も有権者も、手先の経済問題や生活問題に多大な関心があっても、
日本という国のあり方や行く末などのテーマにかんして
まったく興味を示さなかった。

日本国民の「国家意識」は結局この程度のものだったのかと、
改めて思い知られた。

日本人自身はそれで幸せだと思えばそれで良いかも知れないが、問題は、
日本の近隣にまったく違った考え方をもつ国々はいくつもあることだ。

北朝鮮はバリバリの軍国主義国家であるとは周知の通りだが、
民主主義国家であるはずの韓国も、
反日的ナショナリズムで固められているような異様な国家である。

もう一つの巨大隣国の中国はどうなのか。

実は、さる8月から、わが日本国民が「子供手当」などの餌に釣られて
「国家不在」の総選挙へ向かっていたとき、中国はむしろ、
全国人民が熱中するような異様な雰囲気に包まれている最中である。

10月1日の中華人民共和国成立60周年を記念して、
党と政府の主導下で大掛かりな「愛国主義精神高揚運動」
が展開されているからである。

失業の拡大などで社会的不安が高まり、
新疆ウイグル地区での民族抵抗運動が広がった中、
共産党政権はいつもの手として、
「愛国主義」の旗印を掲げて国内の「団結」を計ろうとしているのである。

その手法の一つはテレビの徹底的な利用である。

最近の中央テレビ局(CCTV)の番組表を見ていると、
「愛国主義」をテーマとした特集報道やドキュメンタリが溢れていることに
まず気がつくが、実はテレビドラマなどの娯楽番組までも、
いわば「愛国一色」の世界となっているのである。
8月初旬当たりから、各テレビ局はいっせいに
「建国60周年愛国主義TVドラマ放映キャンーペン」をスタートした。

共産党と共産党政権の「愛国実績」を讃えたり、帝国主義者の悪辣さを強調したり、
中国人民の「愛国的義憤」を喚起したりするようなTVドラマ、
連続ドラマの三十数本を作成し、
各テレビ局の「黄金放映時間」においていっせいに流し出した。
まさに絨毯爆撃式の放映作戦の展開である。

その中にはもちろん、いわば「抗日戦争」をテーマとしたものは数多くある。

「八路軍」と称される共産党軍が「日本侵略軍」との死闘を描いた『亮剣』。

湖南省の共産党部隊が「日本侵略軍」を相手にして展開する
ゲリラ戦を題材にした『血色湘西』。

華北部での八路軍根拠地の周辺で展開される両軍の攻防戦を描いた『狼毒花』。

日本軍の占領地域に潜入してスパイ活動を行った
共産党特務を主人公にした『野火春風闘古城』。

「日本侵略軍」が八路軍部隊の根拠地にたいする「殺戮掃討作戦」と
八路軍の反撃を再現した『烈火金剛』などなど、今から六十数年前の「抗日戦争」を
題材にするドラマが毎日のように放映されている有様である。

その内容にかんしては、「凶悪」の日本軍を撃退した共産党と
八路軍の業績を讃えるものが目立っているが、その対照として、
「日本侵略軍」の悪辣さ・残虐さ・野蛮さをことさらに強調するドラマも結構多い。

そうすることによって、観衆の「愛国主義義憤」を煽り立てる一方、
このような日本軍を「退治」した共産党への感謝の念を喚起することもできるからである。
いわば一石二鳥の妙案であるが、
その場合、とにもかくにも、「日本鬼子」が悪者にされるのはいつもの手口である。

「建国60周年愛国主義TVドラマ放映キャンーペン」の展開と同時に、
中国共産党政権はまた、「皆で歌おう愛国歌謡曲」の群衆運動の推進に力を入れている。

政府が認定した「愛国歌謡曲百曲」を選び出して、
全国民に歌わせようとしているのである。
その中にも当然、「抗日戦争」を題材にした「愛国歌謡曲」は多数含まれている。
たとえば『黄河を守ろう』、『大行山にて』、『ゲリラの歌』
などの「抗日名曲」も顔を出している。

そして、この百曲の「愛国歌謡曲」は、誇張に満ちた表現をもって
「共産党」・「国家」・「民族」といった
キーワードを過剰に強調しているのがほとんどである。
日本では、もっとも熱狂的な愛国者でさえ口にするのを恥ずかしく思うような
「国家賛美」が全国で堂々と歌われている光景である。

この「皆で歌おう愛国歌謡曲」キャンーペンの極めつけは、
8月26日に北京市内の超大型体育館で開かれた「愛国歌曲斉唱大会」である。

中国共産党宣伝部主催のこの歌謡大会では、
子供、老人、労働者、農民、解放軍兵士などの
一万人の群衆が動員されてきて、二十三曲の「愛国歌謡曲」
が次から次へと歌われていった。

最後には、「祖国を讃えよう」とのメロディが流されると、
全員はいっせいに起立して涙を流しながら斉唱し、
会場の雰囲気が「感激と興奮」のクライマックスに達したと、
人民日報の記事が伝えているのである。

以上は、最近になって展開されている
中国の「愛国主義精神高揚運動」の一端を示す
二つの「愛国キャンーペン」の実態であるが、
そこからは、日本にとっても無視できない重要な点が読み取れるのである。

要するに今の中国は依然として、過剰な「愛国主義精神」を
政権維持の手段に利用しているような異常な国であること、
そしてこの異常な国は、依然としてこの手あの手をつかって
国民の反日意識と反日感情の強化に努めていることである。

このような状況が続く限り、中国は健全な近代国家への脱皮は
依然として無理であるとは言うまでもないが、
核兵器と世界屈指の軍事力をもつこのような異常な国の存在はその周辺国、
とくに反日感情のターゲットとなる日本にとっては
常に潜在的脅威であることも認識してほしい。

このような国が存在している限り、日本の民主党政権の掲げる
「東アジア共同体建設」の政策目標はただの機上の空論ではないのか。

日本はむしろ、このような甘い幻想をさっさと捨てて、
もっと現実的な対中戦略を冷徹に構築していくべきではないか
と私が思うのである。

( 石 平 )


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