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誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考。来日20年。満を持して日本に帰化した石平(せきへい)が、日本人が、知っているようで本当は知らない中国の真相に迫る。

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2009/06/04

石平(せきへい)のチャイナウォッチ No.046号[特別号]~天安門事件二〇周年をむかえて

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2009.06.04 No.046号
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 〜誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考〜

石平(せきへい)のチャイナウォッチ

                      http://www.seki-hei.com
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天安門事件二〇周年記念して
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今日は6月4日、私にとって終生忘れ難い日である。

今から20年前のこの日、北京の天安門広場を本拠地にして
民主化運動を展開した学生や市民にたいし、
中国共産党軍は戦車部隊まで出動して血の鎮圧を行った。

中国現代史のもっとも暗黒な一幕である。

私自身、まさにこの日において人生一度の「心の死」を体験し、
中華人民共和国との精神的決別を告げた。

それから20年の歳月が流れたが、
かの国では何かが起きて来たのだろうか。

1992年2月、血の鎮圧の決定者であった
トウ小平は有名な南巡講話を行い、

「経済の発展がすべてだ」

と語って市場経済への全面的移行を呼びかけた。

それ以来、中国は「経済発展一辺倒」の時代に突入して
「成長と繁栄」のわが世の春を迎えた。

今から考えてみれば、この時代の出発点となった
南巡講話の根っこは、やはり天安門事件にあったのではないか。

つまりトウ小平は、人民とエリートたちを市場経済の中での
富の追求に狂奔させることによって天安門事件に対する
彼らの記憶を希薄にし、経済の成長と繁栄をもって
血の鎮圧を正当化しようとしたのである。

その一方、天安門事件の直後に誕生した江沢民政権は、
南巡講話の発表とほぼ同じ時期から、もう一つの国策級の戦略を打ち出した。
「反日教育」の推進とセットされた愛国主義精神高揚運動の展開である。

実はそれもまた、「天安門」を強く意識した政権の策略であろう。

国民の憎しみを日本という「外敵」に向かわせて
共産党の犯した罪をもみ消し、崩壊した共産主義の神話に取って代わって
「愛国主義」を政権維持の新しいイデオロギーに奉ったわけである。

言ってみれば、90年代初頭から中国の二大「潮流」となった
経済成長と愛国主義高揚運動の展開は、
いずれも共産党政権による「天安門善後策」の産物であると理解できよう。

そして、この十数年間における中国の政治的安定と経済の「繁栄」は、
政権の「善後策」が挙げた魔術的な成果であると言ってよい。

しかしここまでくると、「安定と繁栄」の時代をもたらした
共産党政権の魔術は、いよいよその効力を失おうとしている。

2005年春、反日教育によって育てられた「愛国青年」の巻き起こした
反日デモの嵐は、反政府運動へと転化する一歩先前となった。

それ以来、共産党政権は「愛国攘夷」という
もろ刃の剣を安易に使えなくなったのである。
そして2008年からの世界同時不況の影響を受け、
対外依存型の中国の高度成長もいよいよ、その終焉を告げようとしている。

その一方、政治改革を頑に阻みながら資本主義的市場経済をひたすら拡げる
トウ小平路線が推進された結果、貧富の格差の拡大や腐敗の蔓延などの
深刻な問題が生じて来て、政権に対する国民の不満が日に高まって来ている。

そして本欄でも記述していたように、
国民的不満の高まりを背景にした
「毛沢東崇拝」が今や一種の社会的風潮となっており、
体制崩壊への切迫した危機感から、
政権による「先軍政治」推進の兆しは見え始めたのである。

天安門事件から20年目にして、
中国はふたたび、混迷と激動の時代を迎えようとしている。

血の鎮圧を代償にして図られた「成長と繁栄」が
音を立てて崩れるのは当然の報いだが、この巨大国の今後の行方は、
われわれ東アジアにとって、やはり最大の懸念であろう。

20年前のこの日、若き命を失ったわが同志たちの魂は、
いつになって浮かばれるのだろうか。

( 石 平 )

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