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誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考。来日20年。満を持して日本に帰化した石平(せきへい)が、日本人が、知っているようで本当は知らない中国の真相に迫る。

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2009/06/02

石平(せきへい)のチャイナウォッチ No.045号

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2009.06.02 No.045号
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 〜誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考〜

石平(せきへい)のチャイナウォッチ

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「毛沢東崇拝」競う政治新星
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4月16日掲載の本欄で、中国国民の「毛沢東崇拝」を利用する
「野心家」が出てくる可能性について書いたところ、
友人や読者から「もうちょっと説明してほしい」との要請があった。

もちろん、私がそう書くにはそれなりの根拠がある。

実は近年、中国の政界で頭角を現している
次世代指導者の候補たちに競って
毛沢東という「ご本尊」を奉ろうとする現象が起きているからである。

たとえば湖南省省長の周強氏は、2007年3月に47歳で
省長に就任したとき、真っ先に飛んでいったのは
同省内にある毛沢東の故郷の韶山(しょうざん)である。

彼はそこで、省長の最初の公務として毛沢東の銅像に献花し
3度のお辞儀をもって礼拝したという。
その翌年、彼はまた韶山に「毛沢東広場」を造り、
12月26日の毛沢東の生誕日を選んで落成式を催したと報じられている。

現在の国務院副総理で、温家宝総理の後を継ぐと目される
李克強氏も同じようなまねをしている。

今年3月、湖南省で地方視察を行ったとき、
彼はわざわざ韶山へ赴き、毛沢東広場で毛沢東の銅像に礼拝した。

もう一人の政治新星である政治局委員・重慶市党委員会書記の薄煕来氏も、
毛沢東好きな政治家として知られている。

今年4月、彼は民衆からの直訴の処理について見解を述べたとき、
わざと58年前に毛沢東の書いた一通の手紙を持ち出して
「仕事の指針」としたことが話題を呼んだ。

最近、薄氏はまた、毛沢東時代にはやっていた
27曲の「革命歌曲」を選び出して、重慶市の青少年たちに歌わせている。

そしてこの5月4日、彼は何と、
1300万以上の重慶市民の携帯電話に毛沢東礼賛のメールを送信し、
毛沢東の言葉を褒めたたえた、と報じられている。

一般市民の携帯に何の断りもなくメールを強制的に送信するとは、
まさに毛沢東流の独裁横暴政治をほうふつさせる強引な権力乱用であるが、
とにかく今、中国共産党政権の未来を担おうとする“新星たち”は、
そろいもそろって毛沢東を礼拝してその看板を継ごうとしているのである。

一方、彼らがトウ小平の故郷を訪ねたり
トウ小平像に礼拝したりするような報道はまったく聞かれていない。
トウ小平の時代で頭角を現して昇進した彼らはむしろ、
先代の毛沢東に「先祖返り」しようとしている。

今まで、江沢民や胡錦濤などの最高指導者は、
「最後のカリスマ」のトウ小平に指名されて党の総書記になったわけだが、
トウ小平亡き後には、このようなカリスマはもはや存在しない。

今後、最高指導者のイスは次世代候補たちの間で競い合わされる可能性が大だから、
上述の新星たちは、来るべき「天下取り」の争いにおいて、
独自の政治路線を打ち出して自前の政治勢力を作っていく以外に勝ち目はない。

その際、「毛沢東」という一枚看板と毛沢東崇拝者層の存在は、
彼らにとって大変利用価値の高いものであろう。

彼らの中の誰かがこの点に目をつけ、毛沢東の旗印を掲げて
毛沢東路線への回帰を唱えることによって
党内外の支持を取り付けようと考えていても、何の不思議もない。

その際、多くの弊害を生み出してきたトウ小平改革に対する見直しと、
毛沢東流の社会主義的政治・経済体制の部分的復活が、
現実の流れとなってくる可能性も十分にあるのである。


時計の振り子のごとく、
左右両極端の間で揺れるのは中国現代史の常だから、
混沌(こんとん)を深める今後の中国ではどんなことが起きても
別に驚きにはならないだろう。

( 石 平 )


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