2009/04/21
石平(せきへい)のチャイナウォッチ No.040号
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2009.04.21 No.040号
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〜誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考〜
石平(せきへい)のチャイナウォッチ
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中国版「先軍政治」の危うさ
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3月の中国関連ニュースを眺めていると、
「軍」が一つのキーワードとなっていることに気がつく。
3月13日に閉幕した全国人民代表大会(全人代)では、
2009年度の国防予算が14・9%増となった。
同年の政府予算は去年と比べて財政赤字が9倍以上と大幅に膨らんでいる。
その上での軍事費増加だ。
これに先立つ3月4日、軍の閲兵に関するニュースが伝わった。
中国海軍は、海軍創立60周年の記念日である4月23日に、
海上で大規模な閲兵式と模範演習を行うことを決めた。
胡錦濤主席が自ら閲兵式に臨むとの情報もある。
そして3月11日、全国政治協商会議に出席した中国軍の羅援少将は、
建国60周年の10月1日に天安門広場で行われる予定の軍事パレードに触れ、
「それが世界中に中国の実力を見せつけ、敵への威嚇に効果的だ」
と語ったと伝えられている。
胡・温政権が「平和的台頭論」を唱えて
国際社会の「中国脅威論」の火消しに躍起になっている中、
「力による威嚇」の論理が現役の軍人から堂々と吐かれることは、
軍の傍若無人ぶりを如実に語っている。
3月24日付の香港紙はまた、
中国軍は最近、将兵の給与を大幅に引き上げることを決めたと報じている。
最大の引き上げ幅は50%で、新兵の月給が約1000元にも上がるという。
今の中国では、就職難が深刻化している中で、
大卒の初任給が1000元以下に抑えられるケースも多くあると報じられている。
もし香港紙の報道が確かであれば、中卒でもなれる解放軍新兵の月給が、
大卒の初任給を上回るような「異常事態」が生じてくる。
軍がどれほど優遇されているかがよく分かる。
そして、3月に出た軍関係ニュースの極めつけは、
中国の梁光烈国防相が3月20日、日本の浜田靖一防衛相と会談した際、
国産空母建造の意思を明確に表明した一件である。
中国軍は、「海洋制覇」の道へのさらなる一歩を踏み出そうとしているのであろう。
力の誇示、待遇の改善、軍備の増強、軍人の欲しがるもののほとんどすべてが、
まんまと中国軍の手に入ってくるのだ。
2009年という年は、中国軍にとって、
まさにやりたい放題の「わが世の春」となるのだろうか。
しかしその一方、温家宝首相自身も認めているように、
2009年はまた、中国の経済と社会にとって「大変困難」な年である。
経済が失速して財政収入が減り、失業が拡大して人民の生活が脅かされている。
最近、中国政府が幹部による公費外遊に対して、
禁止令を出したのもこの辺の国内事情への配慮からであろうが、
軍に対してだけは、やはり、欲しいものはすべて与えて、
やりたいことはすべてやらせる方針のようである。
あたかも、北朝鮮の「先軍政治」がそのまま、
中国に移植されてきたかのような異様な光景である。
結局、経済の失速に伴って国内の不安がますます高まっていく中、
政権の最後のよりどころである軍を何としても手なずけておきたいというのは、
胡・温政権の本音中の本音であろう。
しかし、このような「先軍政治」が長くやっていくと、
今度はそれが国家財政と民生を圧迫して経済の破綻(はたん)を加速させ、
社会的不安をいっそう高めるような結果にもなりかねない。
そうすると、共産党政権はますます軍の力に頼っていくしかないだろうが、
それが逆に軍のますますの増長を招くに違いない。
この悪循環の行き先に何があるのか、東アジアの平和維持からすれば、
まさに憂慮すべき前景であろう。
(石 平)
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