2008/11/20
古典落語の世界-日本人の笑いの原点≪蔵丁稚≫
【前置き】
噺の中に歌舞伎や浄瑠璃など、古典芸能が引用されて
いるものが多くあります。
お芝居は今でも盛んな娯楽です。
当時は娯楽の少なかったなか、庶民の大きな楽しみだ
ったでしょう。
今日のお噺は、お芝居好きな丁稚定吉さんが主人公。
まだ子供のくせに、と思われるでしょう。
やはり分不相応は無理がきますね。
お灸をすえられてしまいます。
『仮名手本忠臣蔵』がこの噺の題材になってます。
その中でも四段目の『腹切り場』をクローズアップ。
(定吉さんが大好きで、台詞も暗記しているくらい。)
松の間で執事の高武蔵野守師直から「鮒侍」と罵られ
た塩冶判官高定。
ついに堪忍袋の緒が切れて刃傷に及んでしまいます。
その責任をとらされ切腹させられるのがこの幕。
幕府から遣わされた検視役石堂右馬之丞と薬師寺次郎
左衛門の前で切腹します。
家老の大星由良之助はまだ来ません。
「力弥!力弥!由良之助は…。」
「未だ参上つかまつりません!」
何とか時間を稼ごうとしますが、タイムリミット。
判官さん、ついに切腹してしまいます。
そこへ大星由良之助、息せききって花道から登場。
石堂さんに許され、判官さんに近づき平伏する由良之助。
「御前〜!」
「由良之助かぁ…。待ちかねたぁ…。」
このお芝居の大きな見せ場です。
≪蔵丁稚≫
丁稚の定吉さん、用事を言いつけられ朝から外出。
せんばのお店から島ノ内のお得意先までのお使い。
普通なら小一時間もあれば済ますことができます。
しかし、夕方になっても店に帰って来ません。
旦那さんが心配してます。
そこへ定吉さんが帰ってきます。
旦那さんに呼ばれて、定吉さん言い訳たらたら。
母親にバッタリ会った、などと嘘までつく始末。
旦那さん、定吉さんが仕事中にまた芝居を観に行った
と確信しています。
さっき佐助さんから、道頓堀で定吉さんを見かけた、
と聞いています。
島ノ内と道頓堀では全く方向違い。
言い訳につまってついに芝居なんて大嫌い、とウソぶく定吉さん。
そこで旦那さん、かまをかけます。
明日お店全員で芝居見物。
久しぶりの『忠臣蔵』の通し。
みんな楽しみにしているけど、芝居嫌いは留守番と。
え?( ̄□ ̄;)!!
明日皆で芝居行き!?
自分も行きたいけど、嫌いと言った手前狼狽えます。
そこへ旦那さんがもう一つかまをかけます。
五段目の猪の出が見物。
有名な役者二人が前肢と後肢を分担するとか…。
それを聞いた定吉さん、笑い転げます(`▽´)ケロケロ
猪は舞台裏の人間が一人でやるもの。
それを、成駒屋と松嶋屋がやるなんて!(>д<)
わしは佐助さんに聞いた、とあくまで言い張る旦那さん。
旦那さんは佐助さんに聞いたんでっしゃろ(;¬_¬)
わては今しがた観てきた(o^v^o)エヘン
ほれ、白状しやがった!
あっ!しまったぁo(T□T)o
やはりまだ子供です。
老練な旦那さんの巧みな誘導尋問にはかないませんでした。
はかるはかると思いしに、かえってちゃびんにはから
れたぁ〜(>д<)
なにをいいくさる(-_-#)
いきなり二、三回頭を殴られる定吉さん(;_;)☆ポカリ
もう今日という今日は勘弁ならん、お仕置きします!
(`ε´)プンプン
定吉さん、相当前科があるようです。
ずるずると引きずられながら蔵の中に閉じ込められて
しまいます!
朝ご飯から何も食べてない定吉さん。
腹ペコで死にそうです(>д<)
なんとか許してもらおうと泣いて謝ります(>人<)
しかし、聞く耳を持たない旦那さん。
相当腹に据えかねたのでしょう。
そのまま定吉さんを蔵に残したまま立ち去ってしまいます。
蔵の中に閉じ込められた定吉さん。
蔵の中の暗さで恐いのと、空腹とで泣きべそをかいています。
この三番蔵、夜になるとタヌキがでてきて相撲を取る
ともっぱらのうわさ。
考えただけでもおしっこをチビりそうです。
空腹も限界に達し、大声で旦那さんを呼んでみます。
「旦さん、ご飯食べさせてぇなぁ…。」
しかし、何の音沙汰もありません。
そこへ同じ奉公人のおきよさんが通りかかります。
「おきよどん!おきよどん!おにぎり持ってきて!」
おきよさん、同輩として気にはなってます。
が、旦那さんの手前、余計なことはできません。
「ちぇ、無視しやがって!今度漬物石持ったらへんど!」
悪態をつく定吉さん。
「も、ええわい!死んでもたる!新聞記者が書きよる
ど!"封建的なる雇主、使用人を餓死せしむる…"て
旦さん、ご飯食べさせてぇなぁ…。(泣)」
いよいよ限界…。
と、思ったのですが、好きなお芝居のことを考えたら
空腹も忘れるかな、と。
今日観てきたお芝居を反芻します。
四段目の『腹切り場』。
判官さんと堪平(塩冶家臣)とは同じ役者さんが演じるのが慣わし。
堪平も不遇のうちに切腹してしまいます。
同じ役者が大名と侍とで腹を切り分ける。
そこもまたこのお芝居の見所。
定吉さん、その辺もちゃんと押さえています。
そうだ!お芝居を演じたらもっと気分が晴れるのでは?!
幸い今いるのが蔵。
小道具に事欠きません。
葬列の時に旦那さんが使う脇差し。
三方の代わりに書見台。
丁稚の定吉さん、すっかり判官さんになりきってしまいます。
着物の前を左右に分けて、「ご覧あれ!」とピカピカ
光る刀をお腹にあてます。
さっき無視したことが気になっていたおきよどん、様子を見に来ます。
そっと覗くと、ちょうど定吉さんが刀をお腹に突き刺そうと
しているところ!
あわてふためいて旦那さんのもとに駆けていきます。
「旦さん!蔵吉どんが定の中で!」
あべこべやがな(>д<)
「えっ!なんやて?!定がお腹切ってる!?」
旦那さん、おひつを抱えてバタバタっと蔵にとんでいきます。
戸をガラッと開けるなり、定吉さんの前におひつを突き出し、
「ごぜ〜ん(御膳)!」
「蔵のうちでか…。待ちかねたぁ…。」
ц<(_ξ_)>
【後書き】
落語家さんが噺の中で演じる四段目は歌舞伎そのものです。
もちろん舞台と高座では『動』の部分で大きな開きがあります。
しかし、台詞は感情表現を含め、舞台そのもの。
先月浅草の浅草寺境内で、平成中村座十月大歌舞伎
『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』を観てきました。
雨にもかかわらず、満員御礼。
いわゆる『腹切り場』はこの歌舞伎の大きな見所。
特設小屋の屋根に雨が激しく降り、場の雰囲気がいっ
そう盛り上がりました。
忠臣蔵は赤穂浪士の討ち入りでお馴染みの、主君の仇
討ちものです。
日本人の魂をくすぐる名作で、いつの間にか引き込ま
れてしまいます。
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