小説「絡糸」  RSSを登録する

自分だけが知らない事実がそこにある。その事実は知らなくても不穏で重い何かが自分の前に暗い壁となって立ちはだかっている気配はわかる…そんな主人公の苛立ちから始まります。小説「絡糸」です。

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2008/10/17

重い対決

いつも読んでくださってありがとうございます。

このたびは、大幅に発行が遅れてしまいました。

とももかくも 何やかやと忙しくて・・・

と、いうのは言い訳ですね。

本当にごめんなさい。

続きものの小説で こんなに遅れるなんて

物書き失格です。


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いつのまにか もう秋!

今年の夏は 暑いと思ったらすぐに雨続きで

気づいたら 夏に戻ることなく

残暑もなく

肌寒い秋になっていましたね

紅葉は とてもきれいです

だけど

ひとつ

気づいたことがあります。

柿が美味しくないということです

暑い日が少なかったせいでしょうか?

柿は 正直ですね

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          絡    糸

            舞子


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 数日後、兄から電話があった。

「今度、おまえと話がしたい」と、唐突に兄は言った。

「いいよ」

「また、後で電話する」

 兄は、それだけ言って電話を切った。僕に電話するのが、嫌

で嫌でしようがない。仕方がないからかけたのだと言わんばか

りの口調だった。

 いまさらながら、僕は、兄の僕に対する憎しみを感じていた。

 僕は一体何をしでかしたのだろうか? 兄に聞いたら、兄は、

素直に答えてくれるのだろうか。

 でも、いつかはそのことについて対決しなければいけないと

いうことが、この年になってやっとわかり始めていた。これ以

上兄弟の仲が悪くなることはないとわかったのだ。もう、修復

不可能のところまできている。でも今はまだだめだ。



 兄が入り口から入ってくる。堂々としている。背が高くて足

が長くて颯爽としている兄の姿は周りを威圧する。やはり、生

まれ育った境遇のせいだろうか。それとも、そう見せているだ

けなのだろうか。

 綾子が夢中になるのもうなづける。僕は、奇妙に兄を畏敬の

まなざしで見ていた。

 兄は、また前置きもなしに唐突に言った。

「俺は、綾子と交際している」

「知ってたよ。だけど、まだ、僕の彼女だ」

「綾子は、俺の方がいいと言っている。だから、もう、連絡は

するな」

「兄貴は、いつもそうだな。僕の物をいつも奪い取る」

「たまたまそうなるだけだ。おまえより、俺の方が一段上だとい

うことだ」

「今回だけは、はいそうですかってわけにはいかないよ、兄貴」

「おまえの気持ちなんて、どうでもいいんだ。要は彼女の気持ち

が最優先だ。そういうもんだろ?」

「いや、そういうわけには行かない」

 兄は、眉間に皺を寄せた。

「何が望みだ」

「綾子を取り戻すことが僕の望みだよ、兄貴」

「いや、綾子は、もう俺の女だ。俺の好みに仕上げてある。お前

では満足できないよ」

 また、この話題だ。兄の頭の中では、女はそういう役目しかな

いのだと思っているみたいだ。

「綾子は、俺を喜ばせてくれる唯一の女だ。おまえは、俺の喜び

を奪い取るほど間抜けではないだろ。俺は、詩音寺家の当主だか

らな」

 僕は、唖然とした。兄は何を勘違いしているのだろう。詩音寺

の名前がどれだけ重要だというのだろうか。この現代の世の中で

何人の人間が詩音寺のことを知っているというのか・・。

 たまに、分厚い専門歴史の本に一行か二行出ているだけのこと

だ。今は、その気配すらあの家にはない。もう滅亡したも同然の

家系じゃないか。言葉も出ないほどしらけた僕を残して兄は、来

た時と同様颯爽とした風情で去っていった。が、少し兄の動きが

ぎこちなくておかしい。昔からそうだったのだろうか。


 数日後、僕は綾子に電話した。

 ひそひそと綾子が喋る。きっと、兄と一緒なのだろう。

「今は、まずいのよ、健太郎」

「何がまずいの? 兄のこと? それならだいじょうぶ。兄には

宣戦布告してあるから」

「あ・・」綾子の小さな悲鳴が聞こえた。

「健太郎か。あれほど連絡するなと忠告していたはずなのに」

「僕は納得した覚えはない」

 電話は一方的に切れた。

 僕は、すぐに、彼女に電話を入れた。電話先の彼女が恐る恐る

答える。

「あの、詩音寺でございますが・・」

「俺だよ、健太郎」

 大きなため息が聞こえた。安堵のため息だ。

「何かあったの? 幸太郎さんなら留守だけど」

「君に電話したんだ。ちょっと出てこれない?」

「・・・」

「ちょっとだけでいいんだ。相談したいこともあるし」

「わかったわ。どこに行けばいい?」

「新宿まで出れる? この前のスナックわかる?」

「ええ」

「僕は、これからそこに行っているから、できるだけ早く来て」

「わかったわ」

 僕は、友人に鍵を借りて、スナックに入った。目の前にモディ

リアニの女の絵が飾ってある。哀しげな雰囲気の絵だ。

 僕は、これから始まるであろう新しい展開に胸を躍らせていた。

彼女には、絶対にここで納得させなければいけない。そうしな

ければ、二度と会えなくなる恐れがある。それも、もう時間の問

題だろう。

 重厚なドアのノブが動いた。彼女が用心深く入ってくる。僕は

熱い血が一気に体中を駆け巡るのを感じていた。ほんとうに久し

ぶりの感動だ。彼女は、僕を見るなり言った。

「まだやっていないのね」

「友人の店なんだ。ここは夜しか商売しないんだ」

「そうなの。そんなお友達がいるって便利ね」

「うん、よく使わせてもらうんだ」

「とてもいい雰囲気だわ。あら、モディリアニね。このお店の人

の趣味の良さがわかるわね」

 彼女は、しゃべり続けている。緊張した時の彼女の癖だ。

「座って」僕は、カウンターの僕の席の横を示した。でも、彼女

は、僕との間にひとつ席を置いて座った。

「あの、話って?」

「その前に、何か飲みたくない? お酒もあるよ」

「いえ、いいの」

 だけど、僕は、カウンターの中に入ってコーヒーを沸かし始め

た。彼女が心配そうに見つめている。

「無断で使っていいの?」

 僕は、思いっきりの笑顔でうなづいた。彼女に安心してもらい

たい。彼女に警戒心を解いてもらいたい。

「いいんだ。それも了解済みなんだ」

「ほんとに、親しい友人なのね。うらやましいわ」

「君にもいるだろ? そんな友達」

 彼女は、首を横に振った。

「ほら、あの頃、すっごくさばさばした友達いたじゃない。なん

て、名前だったっけ」

「かずみね」

「あ、そうだ、そうだ。かずみさんだ。あの時のこと、覚えてる?

かずみさんが、僕に酔って絡んできた時のこと。いやあ、あの

時は参ったよね」

 彼女が、かすかに笑った。

「今、彼女はどうしてる?」

「今は・・・連絡取り合ってないの。だから、どうしているの

かわからないわ」

 僕は、コーヒーを彼女の前に置いた。

「ミルクだけ入れるんだよね」

 彼女がうなづいた。

「かずみさん、出版社に入社できたのかなあ」

「できたと思うわ。頑張っているって、年賀状来てたから」

「彼女はやり手だから、今は、ばりばりだな。男なんてってね」

「そうね」

 僕は、カウンターから出て彼女の隣の席に座った。ゆっくりと

コーヒーを飲む。

 彼女が緊張する。

「あれから、ローンどうした?」

「・・・」

「ちゃんと返せてる?」

「ええ」

「大変だろ?」

「そうね。でも、なんとかしてるから、その話はもう・・」

「やっぱり僕が用立てることにしたよ」

 彼女が顔を上げた。

「お願いしてないわ」

「いや、もう決めたんだ」

「そんなこと勝手に決める権利はないわ」

 僕は、彼女がいじらしい。これが綾子だったら、可愛いらしく

舌を出して甘えてすぐに了解するだろう。頑なに拒否する彼女は、

僕の知っている彼女だった。でも、僕は心を鬼にした。

「兄に言わざるを得なくなる」

「・・なぜ?・・」

「ほおうっておいても、絶対ばれる。兄は、そういうことには、

とても敏感だ」

「わかっているわ」

「だったら、何故、そんなに頑なに僕の話を断るの」

「関係ないから」

「僕は、義理でも今は君の弟だよ。姉のために何かをしたいと思

うこともだめなの?」

 くそっ! 姉だって! ふざけるな!

 僕は、心の中で腹を立てた。

「でも・・」

「何もあげるとは言ってないよ。用立てるって言ってるんだ。君

が、月々返してくれればそれでいいんだ。利息はつかないし、数

日遅れたからって電話がかかることもない」

 彼女は考えていた。たぶん、独立心と打算と元来の性格とが、

今、彼女の頭の中では戦っている。僕は、コーヒーをのんびり飲

んだ。

「とても有難い話だと思うわ」

「だろ?」

「でも・・」

「電話を兄が取ったら、どうする?」

「・・・」

「兄はたぶん返済するよ。ああいう性格だから。でも、その後君

に対してどうだろう?」

 彼女の体が硬直した。その緊張がひしひしと僕に伝わってくる。

よほど、兄が怖いのだろう。幼い時のぼくのように・・・

「でも、私、健太郎さんにお世話になるわけにはいかないの」

「それは、他の人だったらいいということ?」

「そういうわけじゃないけど・・ただ、幸太郎さんの手前あんま

り連絡とれないんじゃないかって」

「兄が、僕のこと嫌っているから?」

 彼女は何も言わない。

「君が僕のことを好きだって疑っているから? それとも、僕が

君にまだ未練があると思っているから?」

 また彼女は黙り込んでうつむいた。でも、彼女の横顔が僕に話

しかけている。彼女は、未だに純粋で素直だ。だから、嘘がつけ

ないし、ごまかすこともできないでいる。

「もう少し、ずるくなってもいいと思うよ。そうしなければ、つ

ぶされてしまう」

「私は、嘘つきだわ」

「そう?」

「私は、打算的だわ」

「そう?」

「私の心の中は憎しみでいっぱいなのよ。そんなに良いように見

ないで」

「そりゃしようがないさ。計算されて絡み取られて、にこにこし

ているようなお人よしだったら、それこそ、馬鹿だよ」

 彼女が目を見開いた。心底驚いているようだ。

「知ってるんだ。だから、そんなに頑なにならなくていいんだ」

 彼女の目から大粒の涙が落ちた。涙は、そのまま止まることな

く流れ続けていた。彼女は、涙が出ていることを知っているのだ

ろうか。目を見開いたまま僕を見つめ続けている。

 僕は、彼女の頬に流れた涙を人差し指で拭いた。びくっとして

彼女は一瞬体を引いた。その瞬間にカウンターの小さな席から彼

女は落ちた。

「だいじょうぶ?」

 彼女は、落ちたままその場に座り込んだ。そして、声を殺して

泣き続けている。

 僕は、彼女の傍にひざまづいた。

「もう大丈夫だから。もう心配しなくていいから。ごめん。ほん

とにごめん」

 彼女は泣き続けた。

 僕は、彼女の肩を抱いた。

 彼女は、僕の胸に顔を押し付けて泣いている。

「僕が用立てるからね。君は、毎月僕に連絡をくれればそれでい

いよ。その時、返済できてもできなくても、君が連絡くれれば、

返済する気持ちがあるということで、僕は待っているから」
 
彼女は、僕の胸の中でくぐもった返事をした。

「ありがとう。ありがとう」と、僕には聞こえた。

「ごめんね、ほんとに辛い思いをさせてしまって、ごめん」

 彼女が、僕の胸から離れようとしていた。

 僕は、引き寄せたい気持ちをぐっと我慢した。

「あんまり辛かったら、いつでも、僕のところに電話して」

 彼女はうなづいた。



 僕は、またコーヒーを沸かした。

 彼女の顔が明るくなった。そして、彼女は、コーヒーを飲む。

「僕が馬鹿だったんだ。家から出ていたから、まさか、兄が僕の

行動を把握しているなんて、考えもしなかったんだ」

「何が原因なのかしら」

「兄の行動のこと?」

「そう・・・とてもあなたに嫉妬しているみたい・・」

「嫉妬? それは違うと思う。兄は、僕が生まれたこと事態が憎

いみたいだ」

「なぜかしら?」

「わからない。でも、それは兄弟二人だけのことで、君まで巻き

添えにする権利は兄にはないはずだ」

彼女は答えない

「兄は、君を愛していたと思う?」

 彼女は首を横に振った。

「君は?」

 彼女はまた黙り込んだ。

「君は、兄を少しでも愛した?」

「銀行口座の番号教えてくれる?」

「え?」

「返済するのに必要でしょ?」

「いや、それこそ、危険だよ。万が一にもそれが兄に知れたら。

だから、会って渡してくれる?」

「会うほうが危険じゃない?」

「その方が言い訳しやすいよ。口座のメモが見つかるよりいい」

「そうかしら・・・」

「そうだよ」

 君一人を兄の矢面に立たせるわけにはいかないんだ、と、僕は

心の中で付け加えた。

「さっきの返事だけど」と、彼女がためらいがちに言った。

「私、あなたのお兄さんのこと好きじゃないの。たぶん一度も好

きになったことはないと思うわ。初めのころは、嫌いじゃないっ

ていう感じで。ただ、父に騙されて大金取られてしまったから、

私が償わなきゃって。そうしてくれって、彼に頼まれたから。あ

の時彼は、私に一目ぼれしたって言ってくれたわ・・・全部嘘だ

ったけど」

 僕は、胸を撫で下ろした。やはり、理由があったのだ。理由が

あれば、それだけで、僕は彼女を許せる。

「私、男の人に、好意もたれたことあんまりなかったし、男の人

と真剣に付き合ったこともなかったし・・馬鹿だった」

 なんてことだ。僕の思いはまるで届いていなかったのだ。僕の

アプローチが下手だったのか、彼女が鈍感だったのか・・。

「馬鹿じゃなくて、純粋だったってことにしておかない?」

「そうね、きっと、そうだったんだわ」彼女が、微笑んだ。久し

ぶりにみる彼女の明るい笑顔だった。

 僕は、その日の夕方までには、彼女の借金をすべて肩代わりし

た。早速彼女から電話が入った。

「ほんとに、ありがとう。毎月電話入れるわ」

 これで、僕は彼女と離れてしまうことはない。僕は、胸を撫

で下ろした。

                        続く

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遅れてほんとうにごめんなさい。

次は 極力早くに発行しますね。

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ぜひぜひ読んでくださいな♪

至上の微笑北條 舞子
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