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OECDエコノミスト、大学講師、シンクタンク研究員としての経験を活かし、私、金子洋一が景気や金融、国際問題など時事的な経済ニュースをテーマとして、その向こうにある経済の将来の姿について解説します。質問も歓迎です。一緒に考えましょう!

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サンプル誌

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 ---         ◇ 「エコノミストニュース」      -------------------------
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 ---------------------------  平成20(2008)年6月1日号   --------------
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  ◇中華人民共和国の農村部の過剰人口が底をついた1
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  胡錦濤中華人民共和国国家主席の帰国直後に四川省の大地震がありました。中
 華人民共和国の国民、特に被災地域の皆さんにはこころからお見舞い申し上げた
 いと思います。あの国の政府・与党は大嫌いですが、被災された国民には同情を
 禁じ得ません。(ほんの些少ですが貧者の一灯でカンパもさせていただきました。)
 
  さて、マスコミもその問題に忙殺されてしまっているようですが、訪日からこ
 の方の論調を見ていてもまったく触れられていなかったことが、日中間のパワー
 バランスが確実に変化してきたということでした。
 
  日中間のパワーバランスなどと書くと、「中華人民共和国のGDPが(購買力平価
 による)為替レートで日本を追い抜く」といったことを連想される方もいるかも
 しれません。しかしそれは本質的な問題ではありません。というよりも今、私が
 考えていることはむしろ逆のことです。
 
  以前、《そもそも現在の中華人民共和国の経済成長は、我が国の高度成長期と
 同様に、農村部からの過剰人口が工業分野で労働力と化しているという一度経過
 すれば再現不可能な現象と、人民元の将来の値上がり期待による外国からの過大
 な投資によるところがほとんどだろうと考えています。農村部の過剰人口が解消
 されたり、米国や日本で第二次世界大戦直後に生まれたベビーブーマー達が貯蓄
 や年金を取り崩し始めて、世界的な資金不足が生じれば、たちまち成長に急ブレ
 ーキがかかることに疑いはありません。》(インド、中距離弾道ミサイル実験成
 功で中国を射程距離内に)と書きました。今回は、以上の問題意識の延長線上の事
 柄について書きます。
 
  中華人民共和国政府は、最近、人民元高を容認しつつあります。このことは
 「自国の最大の武器であった過剰労働力が枯渇したことを認めたこと」であり、こ
 れは従来の中華人民共和国の最大のポイントが失われたことを意味しています。
 そして、このポジションの悪化を交渉材料として使えなかった我が国政府と与党
 の対応は極めてつたないものであったといえます。このブログの更新も前回から
 2ヶ月近く経ってしまいましたが、何回かに分けてしばらくは、我が国の隣国の
 問題について考えてみたいと思います。
 
  まず第一の論点は、過剰人口の問題です。
  以前、農村部の過剰人口は中華人民共和国の経済成長のいわば燃料でした。
 
  中華人民共和国の農民一人当たりの耕地面積は日本以下であり、逆に農地面積
 からみれば、人口が多すぎるわけです。この多すぎる労働力は実際はきわめて生
 産性が低く、特に開発経済学の観点からは、これらの労働力を過剰人口とよびま
 す。
 
  農業の生産が伸びないのですから、当然、彼らは、農村にいても稼ぎが増えな
 い。それでも生存のためには食料などが必要ですから、国全体で見ればまったく
 非効率な状態にあります。国からすれば、どんなに彼らが生産性が低くても、農
 業で働いているよりも生産性が少しでも高ければそこで働いてもらえば都合がい
 い。逆に、彼ら過剰といわれている人々にとっては、いくら賃金が安くても、待
 遇が悪くても仕事があれば喜んで働きに出ます。具体的にはそれが上海などの大
 陸沿海部の工場です。
 
  中華人民共和国では、農村部の国民は農村戸籍しか持てず、都会の人間と決定
 的に差別されています。これ自体中華人民共和国が現代に生き残る最大の帝国で
 あることの有力な証拠です。そして、都会での生活は農村戸籍しか持たない彼ら
 にとって、教育も福祉もなにもかも厳しいものですが、それでも喜んで出稼ぎに
 いく。
 
  なにもかもの根本的な原因は農村部の低い労働生産性です。最近の中華人民共
 和国の政策は農村の生活改善に力を入れはじめたとされています。それが、農業
 での労働生産力の向上につながればなおのこと農村部の過剰人口がなくなる方に
 作用しますし、生産性向上抜きで生活のみが改善されるようなことが起きたとし
 たならばそれは沿海部からの所得移転に過ぎません。
 
  繰り返しになりますが、中華人民共和国全体を考えれば、この過剰と計算され
 ている部分の人々には、何とかして働いてもらって、いくらでもいいから稼いで
 もらいたい。これが従来の中華人民共和国政府の考え方だったのだろうと思いま
 す。
 
  実はこの考えこそが、数年前までの人民元安を支えた大きな理屈付けでした。
 なぜなら、経済のロジックからすれば、自国の通貨が安いということは、国内の
 労働力が安く輸出されてしまうことを意味します。ということは人民元が実勢よ
 りも低いことは、本来あるべき数量よりも過剰に輸出が行われてしまうというこ
 とになります。これは日本のような普通の経済にとっては損失が大きいものにな
 ります。つまり、労働力が本来あるべき価格よりも安く海外に輸出されているこ
 とになるからです。外部から見れば、労働力のダンピングが行われていると感じ
 るかもしれません。
 
  しかし、中華人民共和国の経済の場合には、安く輸出されているのは本来なら
 ばまったく有効に活用されなかったはずの農村部の過剰人口です。これならば、
 政府から見ればいくら人民元が安く維持されていても問題はないどころか、歓迎
 すべきことです。それで喉から手が出るほどほしい外貨が稼げるのですから。「
 人民に農村でプラプラされているよりも都会の工場で低賃金で働いてもらった方
 がいい」というのが中華人民共和国政府の本音だったわけです。(以下、続く)
 
 
 
  
 
 
 
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