2009/05/11
ロシア「領土拡張」主義の復活とロシア人アイデンティティーの拠りどころ
★★ 「現代ロシア政治・経済の展望」 ★★
(2009年5月11日)(月)
★ ロシア「領土拡張」主義の復活とロシア人アイデンティティー
の拠りどころ
5月9日、赤の広場で「対独戦勝64周年記念」軍事パレードが
「盛大?」に行なわれた。
最新兵器の代表、大陸間弾道弾「ISKANDER‐M」や「TRIUMF」を誇示し
戦略爆撃機TU-95,TU-160を300メートルの低空飛行でデモンスト
レーション、最新型戦闘機スホイ−34を初披露し、これに対抗
できる戦闘機はないと豪語するロシア。
5月10日の産経(電子版)に注目すべきレポが載っていた。
佐藤貴生モスクワ支局長の「陸続きの隣人」。
ロシアの本質、第二次世界大戦とソ連の崩壊、そして今後の国際情勢
の展開に関し、多くの示唆を与えてくれるものである。
エストニアの老人が語る「1940年6月16日」の悪夢。突然の
ソ連軍の侵攻。スターリン・ロシアが独ソ不可侵条約の付帯秘密
議定書に基づき、バルト地区を併合する野心を実行に移した。
そして、1991年のソ連崩壊により独立を獲得したにも拘わらず
今なお、ロシアの存在が「脅威」であると心底思う隣国民の苦悩を
直裁に伝えている。
考えてみれば、日本も隣国である。日露戦争、シベリア干渉軍7万人
の出兵、満州侵略、第二次世界大戦と北方4島問題と、ロシアとの
関係は複雑であり、今後ともロシアとの関係を切り離すわけには
いかない。
そして、2000年に入り、プーチン大統領の誕生と共に経済復興
を成し遂げたロシア、そして昨年、グルジアとの戦争で、南オセチア
アプハジア共和国を「併呑」したロシア、世界経済危機下で混迷する
今日のロシアが、明らかに国家戦略を「領土拡張」に切り替えた今、
今後の状況を深く考えるべき時が来た、と判断する。
帝政ロシアから近代国家に発展する歴史の発達段階としては「異種」
の社会主義体制を脱皮し、ソ連崩壊後、一気に「近代民主主義」
段階に「飛躍」したのは良いのだが、結局は人間の発達段階同様
「とばした」発達段階に「退行」(例、親に甘えられなかった子供が、
思春期になって突然、オシメを交換して欲しいなどと要求すること
もある)し、その段階を「完結」しなければ、次の発達段階には
進めない。
今のロシアは、いったん進んだ「現代民主主義」段階から「近代国家」
(日本の大正デモクラシー段階?)に「退行」しているのかも知れない。
やがて、再び、「現代民主主義」段階に進化できるのだろうが、
時間は掛かりそうである。
この間、経済危機で高まる国民の不満を、昨年、18年ぶりに復活
した「戦勝記念軍事パレード」を更に規模拡大し、赤の広場だけでは
なく、大都市の至るところで、軍事パレードを行なった。そして、
国営TV局による社会主義時代の「赤軍美化」映画の大放出で、国民の
愛国心をくすぐり、軍事パレードの軍事力誇示で国民に自信を回復
させる方法が意図的に行なわれ始めている。
ソ連崩壊後喪われたロシア人のアイデンティティーがこのような
「復古主義」の形で再形成されることは、不幸なことではあるが、
一種の「退行現象」で、発達段階としては不可避であろう。
願わくは、早々にこの段階を終了し、現代民主主義の確立で経済繁栄が
実現されることを祈りたい。
★ NATOはヒットラー・ドイツの再来?ロシアの防衛本能と
被害者意識の混乱
来年は対独戦勝記念の節目年、すなわち65周年。すでに、
2010年の軍事パレードの規模拡大と盛大な記念行事の企画が
練られているらしい。
広島原爆追悼記念集会が長く続くのと同列に理解すべきか?
2000万人とも言われる戦争犠牲者(スターリンによる虐殺被害者も
入っている可能性はあるが)を出したロシア人にとって、ナチス・
ドイツの悪夢は脳裏に焼きつき、戦争を知らない世代にも映画や
ドキュメンタリー、小説、博物館、老人による口伝などを通して、
明らかに記憶の「再生産」が行なわれている。
プーチン首相が「ロシア周辺国におけるNATOの行動には無関心
ではいられない」と言うのも理解できる。しかし、NATOは
ヒットラー・ドイツではなく、ロシアの領土に野心を抱くものでは
ない、と断言できるのに、何故、それほどまでに「軍事力」に頼ろう
とするのか。それは、「国土保全」が主ではなく、しきりに口にする
「 旧ソ連だった地域」への「領土的、政治的」支配への潜在的欲望
が潜んでいるのからであろう。
その再形成されつつある「ロシア人のアイデンティティー」が
旧ソ連圏とスターリン下で無理やりソ連の衛星国とされた東欧諸
国民にとっては、逆に「悪夢」の再来と映っていることをロシアの
指導者は理解すべきであろう。
★ メドベージェフ大統領、「国内ソフト路線」と「外交強硬路線」
でプーチン氏の影武者役
野党系マスコミなどとのインタビューで世間の注目を集める
メドベージェフ大統領、赤の広場での軍事パレード演説や記念
パーティーでの演説では、「軍事力こそ国の基幹」とのたもうた。
「レーニン廟」の壇上からではなく、赤の広場に設えた控えめな
「特設ステージ」(高さが1メートルも無いのでは?)から、と言う
のがせめてもの「救い」。
しかし、「17年間の信頼すべき同僚」(プーチン氏の決まり文句)
は、結局はプーチン氏を「超えられない」(革命的な改革は無理)。
メドベージェフ氏を批判できないのは、それでも、「1歩」でも
「民主化」の方向に前進している点で、贅沢は言えないロシアの
発達段階。
ロシアの権力者、国民が真に自らの国力と体制に自信がもてるよう
になるまで、「不安感」の「代償行動」として、「軍事力誇示」に
走り始めた今日のロシア。
★ プーチン首相来日、「微笑外交」の狙い
簡単。経済支援(表現は「投資」)。うごめく日本とロシアの
「マフィア経済人」。広義では、プーチン氏も「国家マフィア」
の代表?
北方4島問題など、日本政府の足並みの乱れを見越して(あるいは、
ロシアの諜報機関の手に乗せられた「日本人」の自由な発言を
引用し)、「時期尚早」と。
文責 ヨーゼフ・サハロフスキー
それにしても歴史の評価は難しい。ロシア人にとっての
第二次世界大戦(大祖国戦争)の意味と周辺国にとっての
「ナチス・ドイツからの解放」と「ソ連のくびき」、そして
「社会主義崩壊による解放」の意味。
中国は経済発展と社会構造の変化が比例しない。未だに
「大きな時差」付きの矛盾。大規模な子供の人身売買が罷り
通っている国の未熟さ。中国首脳陣も必死に頑張ってはいる
のだろうが・・・。
ただ、内陸部の内需拡大政策で成果を挙げ、世界経済危機を
救ってくれるかもしれないのは評価に値する。
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