2008/11/15
ゼロアカ道場同人誌徹底比較
■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 不定期刊行物【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験】 第194号 2008/11/15日発行 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 1ごあいさつ 自分自身、同人誌やメールマガジンやを出したときに ほめられれば嬉しいし、けなされれば悔しいが 一番詰まらないのが黙殺されることで、 無反応というのが辛い。 そういう意味で、このはさんから、このメールマガジンの感想を http://www.tcup3.com/356/kidana.html に 頂いて嬉しかったし、取り合えずゼロアカで買った同人誌には 何らかの感想を書いてみたい。 公式の正しい講評はゼロアカの公式HPで出されると思うが 多様性の確保という意味でも、全く異なる解釈や評価が乱立するのは 良い事だと思うし、私個人の中でも前回のメルマガでは 素晴らしい同人誌だと書いた同じ本を、 次回のメルマガではダメだったと書くかも知れないし 自分の中での一貫性よりも、自分の中での多様性を重視したい。 そんなわけで 主観的な文章をゴミみたいに書き散らしてみます。 2ゼロアカ道場同人誌徹底比較 ・女性向け官能小説対決 腐女子の履歴書VSチョコレート・てろりすと テーマ:ボーイズ・ラブVS百合 ・二次元萌え対決 最終批評神話VS新文学 テーマ:ニコマスVSラノベ ・ポスト批評空間・総合誌対決 kefirVS筑波批評 テーマ:egg&構造主義&TVゲーム&ファッション&広告論 VS 建築&映画史&ネット規制&ルドロジー(遊戯学)&ケータイ小説 ・中心/周縁対決 Xamoschi(ザモスキ)VSPlateau(プラトー) テーマ:場所VS混血(クレオール) 3女性向け官能小説対決 腐女子の秘めたる本音を浮き彫りにするため、 10代から50代までの腐女子に アンケートを取った腐女子の履歴書。 秋葉原の男目線を意識し、半裸の女性二人が絡み合うイラストを 表紙に添えたチョコレート・てろりすと。 P25のインタビューで腐女子になったきっかけを 男にモテなかったからという話が出てくるように、 女性版非モテーズとも言えるスタンスで、 男子禁制の女の本音をぶちまける腐女子の履歴書に対して、 P24でモテ系女子を名乗るように、 男目線を計算に入れながら主導権を上手くコントロールする秀才女子チーム。 非モテで低偏差値の俺がどっちに共感するかと言えば 腐女子だろう。秋葉原という会場を正確にマーケティングして オタク男子向けの商品を投下した秀才に共感なんかできるわけない。 統計上売れる物、統計上正しい物ではなく、 作り手の切実な実存が見て取れるものを望むわけで。 でもさ、実存や本音の見せ方・引き出し方自体、 秀才女子の方が上手いわけで。 秀才チームP16で、百合にとって大事なのは 男に差し替えたら通用しない物と言っていて そこにこだわりがあるわけで、腐女子のP6は 攻は受けより背が高くなくちゃいけないと書いてて それは普通に男女のジェンダーを引き受けちゃってて 世間に対して私たちはノーマルですよという メッセージになってしまっている。 腐女子はアンケートで履歴書画像を使った結果 ページ辺りの文字数=情報量が少ない。 インタビューだと、2時間しゃべっていらない部分は切れるし 相手がしゃべりにくい部分、あまり言いたくない本音の部分を インタビュアーが掘り下げて聞く事も出来るが アンケートだと、掘り下げがどうしても甘い。 個人的に文尾さんと斎藤さんの対談がどうしても欲しかった。 森茉莉―中島梓という公式の文学史を語る斎藤さんに 二次創作という公式にはあってはいけないことになっている本音の部分を 文尾さんがぶつけて、それを斎藤さんが公式の文学史に回収してという 規範と逸脱の往復運動みたいな対談を読みたかったわけで それが無かったのが痛い。 秀才女子チームは、市場に合わせるだけでなく、 表現に到るまでの自らの実存の見せ方においても上手かった。 4二次元萌え対決 二次元萌えマーケットに対するデータベース論の啓蒙合戦ですが、 何故かそこに松平耕一さんの「特集:ゼロ年代の学生運動」が 入ってくる。特筆すべきはP79で、世界革命を呼びかける中核派を セカイ系だと言い切る部分だ。 これは、クオーツ時計よりも正確だとされる電波時計が、 デンパ系だと言い切る私の感性とも連動している。 かつて「雫」において毒電波を発した想像力は、 いまや腕時計にまで共有されている。 新文学p28「初音ミクに出馬させてみた」で論じられているのは、 二次創作・三次創作などのN次創作を許可する コモンズ(共有)についてだ。著作権フリーを宣言する クリエイティブ・コモンズやニコニ・コモンズなどの 共有(コモンズ)によって、 多くの新しい才能・制作物が創作されている。 このコモンズの思想とは、 著作権分野における私有財産制度の放棄であり、 著作権の公共化であり、 ある種の社会主義・共産主義思想とも呼べる。 コモンズによって制作された初音ミクが掲げる政策、 それは資本主義に対抗する新しい左翼運動とも取れる。 彼女が立ち上げる政党こそ、まさに現代の共有党だ。 対する最終批評神話で感動するのはDTPデザインに関してだ。 1ページ目の右半分をほぼ空白とトーンイラストだけにしながらも、 左半分に細かい文字を詰め込み、 その文字量と情報の熱さで読む者を離さない。 立ち読みのつもりが、立ち読みだけでは読みきれない文字量によって、 思わず買ってしまう雑誌の作りになっている。 写真と商品名と値段しか載っていないカタログ雑誌に慣れた目には 斬新に映るし、文字サイズや文字量が均等に配分された 活字月刊誌に慣れた目にも新鮮に映る美しい組版だ。 5批評空間・総合誌対決 筑波批評の表紙デザインがまんま批評空間で、 ANY会議関連のインタビューから入るスタイルは別冊批評空間そのもの。 対するkefirで論じられているファミコン・ファッション・広告は、 80年代初期の浅田彰によるニューアカブーム時代に論じられた題材の、 その後を追いかけるといったテイストが感じられる。 両誌とも硬派でアカデミック、 文芸批評というテイストから離れた総合誌的構成なのも似ている。 一見狭義の文学と無関係そうな論考の中で、 筑波批評の「『コンテテンツ植民地』日本」は、 学術雑誌もしくはネット上の学術コンテンツの輸出入に関して かなり具体的な数字を挙げて分析とビジョンを示している。 kefirのすばらしい所は8つの同人誌の中で一番文字が小さく ページ辺りの文字量が多く、情報が濃い部分だ。 インタビューでは先方がおそらく尋ねられたくないであろうテーマも ぶつけているし、対談も馴れ合いになることなく、 相手が避けているテーマをも掘り下げようとする。 友好な人間関係を犠牲にしてでも 知的緊張感と濃密な情報を維持するスタンスだ。 編集後記で半ページを写真では、 小池徹平風の表情で微笑む三ッ野陽介さんに、 やずやさんが無理矢理スプーンで ケフィア(ヨーグルト状の健康食品)を食べさせようとしている写真だ。 微笑みながらも拒絶する小池徹平の口に入れようとする スプーンや白い食品が何を象徴するのか。 やおい・BL文学研究所の方に是非うかがいたい一枚だ。 6中心/周縁対決 この二つは表紙のデザインが素晴らしい。 プラトーの赤黒い燃える太陽の色を見ると、情熱の炎、 日の丸のナショナリスティックな高まり、 ある種の熱狂が自分の中で発生する。 対するザモスキは青空と大地の映像にある種のホワイトノイズが入る。 大自然に囲まれた故郷と、記憶の中で薄れゆくふるさとの映像。 日の丸を連想させる太陽という中心を描いたプラトーと、 青空と大地という周縁を描いたザモスキ。 フランス乞食はコンセプトの見せ方が上手かった。 著名人に原稿依頼することなく、 すべてのページを自分達の論文で埋めるという硬派な見せ方。 文学の全体性を謳いながらも、ファッションや建築や哲学を扱わずに 狭義の文学にこだわった所。見開きの右上もしくは左下に どちらの記名原稿であるのかが背景に透かし画像で入っている点。 どれが自著要約原稿なのかが分かりやすく記載されている点など、 目次から目的の原稿への検索機能が非常に高い。 Xamoschiは私個人の関心と著者の関心が、 ズレているという事が分かった。 ザモスキの藤田直哉さんは北海道出身で東京に出てきていて 北海道出身の佐藤友哉さんに原稿依頼もしている。 ざもすきさんは観光論が専門の方だ。 私は京都出身でいま、東京に住んでいる。 (厳密には千葉だが、道路はさんで一歩千葉寄りに来るだけで 名義が千葉県になるだけで家賃がかなり安くなるので千葉だが 実質、東京だと言い張る千葉県民だ) 京都出身というと 「京都の人は日本の首都は京都だと思っているんでしょ?」 みたいな反応が返ってくるが、 京都でアイドル雑誌とか買うと、 オールナイト・フジとか渋谷系裏りんごとか 関東ローカルのTV番組情報が載ってる訳です。 これね、九州辺りだと一週遅れとかで東京の番組も見れるのですが 関西は吉本興業が強いので、吉本一社で関西ローカルの番組を 作って流してしまうわけです。 なまじっか都会であるために、独自の文化・独自の番組を流してしまう。 結果、東京幻想が強くなる人間も中にはいて、 自分もその内の一人だったわけです。 その中で自分が期待したのは佐藤友哉さんの 「ぼくのかんがえたほっかいどうちょうじん」みたいな原稿で でも藤田さんが書いているのは、テーマは場所で、 サイバースペース=インターネットについて書いているわけです。 それはちょっと違うのではないかと思わなくも無い。 ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□ 【賞なしコネなしやる気なしで作家を気取る100の実験メルマガ】 登録ページ http://www.pat.hi-ho.ne.jp/kidana/mmg.htm 登録と解除は上のページで。 関連HP:掲示板に感想・御批判入れて下さい。 http://www.tcup3.com/356/kidana.html ■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□■■■■□


