2008/10/16
熟恋 最終回
その夜、昔の夢を見ました。 いつものお店で、寄り添う私とUさん。 Uさんは、赤ワインを飲みながら、京訛りで優しく話し掛けてくる。 好きでもないのに優しくする彼の罪。 その偽りの優しさにすがってしまう愚かな私。 Uさんは私のグラスにもワインを注ぎ、勧めてくれる。 酔ってしまえば、彼を拒むことはできなくなることはわかっている。 好きだから。 どこまで行っても同じことの繰り返し。 出口のない堂々巡り。 楽しいより、苦しいよ。 その時、店の扉が開きました。 入ってきたのはYさんでした。 何も言わずに、一杯の水を手渡すとず出ていきました。 Yさんが出ていった後の扉は開いたままで、薄暗い店内に光が射し込みました。 カーテンの隙間から漏れる眩しい朝日。 ぼんやりした頭でUさんのことを考え、Yさんのことを思いました。 大好きだったUさん。 新しい一歩を踏み出すために、出会ったYさん。 Yさんとの恋は始まる前に終わってしまったけれど、 この出会いを無駄にはしたくはない。 Yさんがちゃんと振ってくれたことで、たぶん私はまた次の一歩を踏み出せる。 失敗を重ねながら、私は一歩一歩、前に歩いて行く。 私は起き上がると、カーテンを開け、窓を開けました。 窓から入ってきたのは、夏の終わりを告げる、柔らかな日差しとさわやかな風。 この風がきっと次の豊饒の季節を運んでくれることでしょう。 完 ・・・・・・・・・・ これで『熟恋』は終わりです。 次回はあとがきになりますが、是非最後までお付き合い下さい。


