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ミウはナオに恋をした。ミウとナオが付き合い始め、ただただ幸せなはずの恋、のはずが、どうやらそうはいかない恋へと展開していく。ナオを信じられないのに消えないミウの恋心の結末は?

  • 周期 不定期
  • 最新号 2008/06/26
  • 発行部数 13
  • マガジンID 0000263605
  • 個別ページ
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2008/06/26

恋心 (62)最終回

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nanaデス!

いよいよ最終回です。
これれまでほぼ毎日の発行に
お付き合いくださいまして、
どうもありがとうございました!

ミウの選択、
よかったと思うのですが、
あなた様はいかが?

また、別の物語を発行するかも知れません。
その際には、どうぞよろしく!

誰かを愛することって、
とてもステキなことです。
恋心は生きるエネルギー。

あなた様も
ミウに負けない恋心を抱き
熱く素敵な恋をしてくださいね!


☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆


とうとう、彼に話す時が来た。
私はカクテルを一口含み、
喉を潤した。

「うん。…うちの親ね、
私が中学二年の時離婚したの。
母に好きな人ができて出て行ったの。
その後母とは一度も会ってない。
今どこでどうしているのかも判らない。
そりゃ、本気で探す気になれば、
何とか見つかるとは思うけどね。
今は少し気持ちも変わってきたけど、
少し前までは憎んでいたから。
ものすごくね。
何で、今気持ちが変わってきたと思う? 
ナオのお母さんの話を聞くようになって、
母がいなかったら、
私を産んでくれなかったら、
私はナオを愛して
ナオに愛されて、
こんな幸せな思いもできなかったんだなって気づいた。
ナオに恋をしたから、
ナオを本気で愛したから、母の気持ちが判ったの。
母も本気の恋をしてしまったたんだって。

一生のうち本気の恋が一度だけなら、
父と私の側にいてくれたと思う。
でも、たまたま二度目がきちゃったんだよね。
今になって、自分の気持ちを
私や父のために諦めないで行動した母を、
ちょっとだけ許せる気持ちになったの」

「そうなんだ。ミウのお母さん、働いてたの? 」

「専業主婦」

「専業主婦でも、出会いってあるのかな? 」

「私、その相手のこと、
全然知らないし、
どこで出会ったのかも、
それはあんまり想像したくない。
母が誰かと出会って
恋に落ちていくところなんて。
それでね、たぶん父は
すごくつらかったと思うんだけど、
頑張って仕事をしていたの。
私は母の代わりに
家事を毎日やることになった。
父は家事を一切してこなかったのに、
無理してやろうとするんだけど、
全然ダメで、
特に料理のセンスがまるでないの。
だから私がやるしかない。
大変だった。

高校一年の時ね、
あろうことか父の勤めていた会社が
倒産したの。
大きい会社で
倒産なんてあり得ないと思っていたのにね。
それで、父は
元同僚と会社を興したんだけど、
失敗して負債抱えちゃった。
返済のために知人に貸していたお金を回収に行ったとき、
口論になって刺されたの。
私が病院に駆けつけた時、
父の意識ははっきりしていて、
私は「助かった、大丈夫だ」って思った。
それなのに父はこう言ったの。

―美雨にこれだけは言っておかないと…。
借金だけは絶対するな。
また人に金を貸すな。
美雨は女だから気をつけろ。
女に金を貸せと言う男はロクでもないからな。
タチの悪い人間とは関わるな。
深入りしてはいけない。
金の貸し借りは人間を変えてしまう―
それだけ言って父は目を閉じたの。

それが最期の言葉だった。
ごめんね。ナオ。
あの時、ナオが本当に困っている時、
手を貸せなかったのは、
父がこんな死に方をしたためっていうのもあるの。
父がこんな言葉を遺して死んでいったためなの。
それに、私、ナオに本当に立ち直って欲しかったんだもの。
貸すのが愛か、貸さないのが愛か、
わからなくて、本当に悩んだけど、
最後に、やっぱり
本当にナオを思うなら、
ふたりの将来を思うなら、
貸さないのが愛だって、
気づいたから。。。」

彼の目から真っ直ぐに、
涙が頬を伝った。
顔をくしゃくしゃにして、
声を振り絞るようにして言った。

「ミウのお父さん、
そんな風にして亡くなったんだ…。
ごめん、ミウ。
そんなことを抱えて生きてきたのか…。
俺がミウを支えなきゃだったのに。
俺、今まで何やってきたんだろう? 
ミウ、よく頑張って生きてきたな。
そんなに辛いことがあったのに」

彼は早口で一気に喋りきった後、
テーブルにうつ伏せてしまった。
五分以上そのままでいた彼のつむじを、
私はずっと見つめていた。

「俺、ミウが頼れるような男になりてえ。
なってやる。俺について来い、って
一年後にはミウに言えるように、
俺、本気でやるよ」

それだけ言うと、
彼はまた脱力したかのようにうなだれて、
黙ってしまった。

私は、マミとカズの話や
行きつけになった店の話を
一人で喋り続けた。
私は喋りながらも、
一つのことを考え続けている。

午後九時、レストラン・バーを出て
あの夏の思い出の海岸へと足を向けた。

雲が切れて星がところどころに瞬いていた。
思いの他、ひんやりとした空気は、
また今年も冬が近づいていることを告げる。
砂浜に下りるとあっと言う間に
靴の中は砂だらけになった。

「この辺にパラソル立てたんだよな」

「そうそう。暑かったよね」

「ミウの水着姿、可愛かったな」

「ナオの泳ぐ姿、カッコよかったな」

「ミウが帰って来たら、
俺、今度こそ、ちゃんと、するから」

私は、彼に素直な言葉を返せない。

「口では何とでも言える。
未来のことは誰にも判らないよ。
明日のことだって、
一時間先のことだって、
一分先のことだって、
もしかしたら判らない。
約束なんてしても、
意味がないと思わない? 
破られた時哀しいから、
私はもう約束なんてしない」

「約束っていうか、
じゃ、目標。俺ミウが帰って来たら、
ミウが一生落ち着ける場所をつくってやる。
そして、ミウを幸せにする。
それが俺の目標。
これなら、いいでしょ? 」

彼が誰もいない夜の海に向かって何か、叫んだ。
彼は大声で叫んでいるのに、
私は彼の言葉が聞き取れない。

先のことは判らないけれど、
今この瞬間すぐに触れられる場所に
私との未来を考えてくれるといった彼がいる。
そして離れていても、
裏切られたことを知っても、
彼を愛し続けた自分がいる。
これだけのことは確かだ。

彼が私を抱き締めようとする。
私は彼の腕がきつく私の背中に巻きついたのを、
静かにほどいた。

「ナオ。ナオのこと好きだよ。
今でも変わらずに。
ずっと心にナオがいた。
こんなにも大好きなのに、
ナオが何を言ってくれても、
私はナオを信じられないの。
自分でもそのちぐはぐな気持ちがよくわからない。
だから、すごくもどかしいし、苦しい。
でも信じられないってことだけは
はっきりしているの。
それだけは……」

彼は驚いた顔をして息を飲んだ。
長い沈黙の後、

「俺たち、もうやり直せないってことなの? 」

「わからない。
でも、ナオのことを考えると、
必ず胸の奥に痛みのようなものが走るんだもの。
もやもやとしてきて、
苦しくなってくるんだもの。
好きなのに。本気で好きなのに。
ううん。好きだから苦しいのかも。
どうしても、信じられないんだもの―
ナオを好きな気持ちを
自分の中に確認すると
心に雲がかかるんだもの」

「俺、さんざんミウのこと、
苦しめてきたんだもんな。
俺、ミウの前から姿を消した方が、
ミウのためなのかな」

それだけ言って、
再び彼は強く私を抱き締めた。
彼が力を入れるほどに、
私の心は静かに、
そして冷めていった。

「私、やっぱり留学する前に
ナオとは別れる。
別れてから行くね。
ナオが待っていたら、
留学を決心した意味がないもの。
戻ってきても、
今と何も変わらないことになっちゃいそう。
私とナオの組み合わせでは
幸せにはなれないんだよ。
きっと。ふたりとも。
ナオにとっても私ではダメで、
私にとってもナオではダメなんだと思う。
だから別れよう」

「いやだよ。
俺、ミウをずっとずっとずーっと、
思い続けてきた。
こんなに誰かを思い続けたことないよ?
ミウと別れるなんて
俺マジ生きていけないよ。
やっぱりさ、
留学なんてやめて
結婚して俺のふるさとで暮らそうよ。
今度は絶対ミウを幸せにする自信ある。
ミウにつらい思いはさせない。
だから、俺のところに来て―」

波音が絶え間なく耳の奥まで打ち寄せて、
彼の訴え、
心音、
息が、
掻き消されていく。

今、私の耳には、
この思い出の海の波音以外、
もう何も届かない……


fin 



☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆



恋心
nana



☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆・・・☆☆☆

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