2009/07/06
第26回:カリスマ営業に学ぶ銀行商品販売の秘訣
こんにちは。「銀行ビジネス鳥の眼/虫の眼」第26回のメルマガです。 今回は、5月1日のバードさんのニューズレターの翻訳です。 彼女が銀行の店頭で出会った、リテール金融商品販売のプロについての話です。 先に色々語るよりも、まずはニューズレターを読んでもらう方がよいでしょう。 私のコメントは、その後で。 ---------------------------------- 2009年5月1日発信 <BANKING INSIGHTS FROM A SALESSTAR> <カリスマ営業に学ぶ銀行商品販売の秘訣> -記事要約- ニーズベース販売を効果的に行うために何が必要かを銀行の全営業部隊に 知らしめるには、現在が好機だ。 ―本文― カロリーナが銀行営業の「コービー・ブライアント」的存在であることは、会って 5秒もすれば分かる。私が椅子に腰掛けるが早いか、カロリーナは問いかけてくる。 「アナット、私はカロリーナです。今日はどんなご用件でしょうか?」 平凡にも聞こえるが、その中にある素晴らしさに私は気付いた。 カロリーナはある銀行に8年以上勤めているベテラン行員だ。彼女はインストア ブランチで働いているのだが、非常に安定した顧客基盤を持って高い営業実績を 上げている。人々はは彼女がいることを知って、金融ニーズについてどうすれば いいかを聞きにやってくる。顧客は彼女のことを信頼しており、自分の側に立って くれるものと心から信じている。 カロリーナに尋ねてみると、彼女は以前に何年も勤めていたディズニーストアの スーパーバイザーから多くを学んだということだった。彼女が「もともとの」資質を 持っていることは疑いを入れないが、それでも彼女が語ったものの見方は納得 できるものであり、私はそれを皆さんと共有しようと思う。 彼女が話してくれたのは、次のようなことだ: 1.常に顧客のファーストネームで呼ぶこと : ディズニーのルール「その1」は、 顧客の名前をすぐに覚えてそれを繰り返し使うことだ。 2.顧客が望んでいるものを見つけ出すこと : 我々自分がは売りたいもの (預金?)を念頭に置いて話を進めることが多すぎる。そのため「売り文句」を 考えるのに忙しすぎて、顧客が私達に示してくれるヒントやカギに耳を傾けないのだ。 顧客のパーソナルなものごとで、記憶できて次回以降も言及できることを見つける ことだ。顧客が言うことによく耳を傾け、彼らのニーズに応えよう。 3.自分の商品に熱中しよう : 顧客は熊のプーさんのファンだろうか?顧客の 子供たちはアリエルに夢中だろうか?顧客が何を求めているにせよ、それが 手数料無料の当座預金であったとしても、あなたがその商品自体への熱意と 思い入れを示すことだ。 4.顧客に求められたものより2つ多くの商品を販売することがゴール : ディズニーで 仕事をしていたときにカロリーナは、他の商品について「特別に販売しています」と 話の中で触れるか、顧客が気に入るかもしれないものを指し示すだけでもやっていた。 銀行では、彼女は最低で3つの商品をクロスセルする。それは、顧客は買おうとして いるもの以上のニーズを持っていることが明らかだからだ。 5.当事者意識を持つこと : カロリーナから話を聞いていたとき、彼女は「私の 支店」「私のATM」という話し方をしていた。彼女の気持ちが銀行と自分のいる 支店に向けられていることは明らかだった。彼女は自分のいる組織に誇りを 持っていた。その誇りと熱意全体が彼女を輝かせており、それは皆に伝染する。 顧客はそれが好きなのだ。 6.人が好きで、売ることが好きなこと : 人が好きでないとセールスには向かない。 あらゆるレベルの人との交流が好きで、交流や販売活動が苦にならなければ、 成功することができる。 7.商品を信じること : 自分が売っているものを信じていれば、顧客はそれを 分かって買ってくれる。信じていない商品は売れない。 8.将来の「スペシャル」について話すこと : 顧客が今日は他に何も買わないとしても、 特別金利定期預金が1~2週間のうちに発売になるとか、ローンのキャンペーンを 準備中だという情報を評価してくれるかもしれない。将来の需要に向けて 種まきをすることは、セールスの流れを安定させる大事な方法だ。 カロリーナは「自然に」そうした資質を備えていだけでなく、知恵を巡らせる面でも 他の人に劣ってはいない。彼女が語ってくれた秘訣は、あらゆる販売活動、 あらゆる商品に対して有効だ。銀行業で、商品や銀行を他と差別化している 要因は金利ではない。差別化要因は「あなた自身」なのだ!その力を活用して、 顧客によりよいサービスを提供し、ニーズに十分対応しよう。あなたから全力で サービスを提供され、あなたの専門性や提供する商品ラインから日々のプラスを 得ることができれば、顧客はそれに応えてくれるはずだ。 ---------------------------------- こういう話、私は好きですね。 さて、この話でカロリーナは「何を」売っているのでしょうか? 物理的に売られるのは銀行商品です。しかし、それは同じ銀行ならどの支店で 買っても品質も価格も同じでしょう。 しかしこの話では、顧客は彼女の話を聞きつけて、彼女の話を聞きにやって来る。 そして「彼女から」買うのです。つまり売上は商品として立ちますが、ニューズレターの 最後に書いてあるように、実は売れているのは彼女の話、または彼女自身の キャラクターです。 どこで買っても同じなのに、なぜカロリーナから買うのでしょうか。 いくつか理由が考えられます。大きく分けると次の2つでしょうか。 (1)何を買えばよいか分からないことに対応してくれる (2)銀行の店頭でイヤな思いをしたくないどころか、プラスの気持ちにさせてくれる 一つずつ、すこし詳しくみていきましょう。 (1)何を買えばよいか分からないことに対応してくれる 「何を買えばよいか分からない」は、さらに2つに分かれます。 ・そもそも、何が必要なのか分かっていない ・どんな商品がよいか分かっていない、の2つです。 まず「何が必要なのか分かっていない」から考えてみましょう。 金融生活面で、現在の自分の状態について分かっていて、将来について 備えができている人は、おそらくほんのひと握りしかいないのではないかと 思います。 現在の状態が分かっていなければ、当然、何が必要なのかも分からない でしょう。 ニューズレターの中では、我々が販売に気を取られ過ぎているために、 「『売り文句』を考えるのに忙しすぎて、顧客が私達に示してくれるヒントや カギに耳を傾けないのだ。」と書かれています。 ここでの「ヒントやカギ」とは、販売する商品自体に関するものではなく、 顧客のニーズに関するヒントやカギです。顧客の現状や、それに付随する 懸念・悩み・不安などの情報を集めて「ニーズ」という形に翻訳することが 必要です。 顧客のニーズを理解できたからと言って、「それ行け」とばかりに販売モードに 入るとうまく行きません。なぜなら顧客自身が「自分にはそのニーズがある」と 確信できていないからです。この段階でいきなり商品を売りつけられても、 顧客は当惑するでしょうし、不信さえ感じかねません。自動車ディーラーの ショールームで、そんな体験をしたことがないでしょうか。 自分が語った現状や懸念・悩み・不安がなぜ生じているのか、それはどう すれば解決できるのかということが理解できてはじめて、顧客はニーズを自覚 するようになります。 ニーズの実現手段として、ここでようやく商品・サービスが登場します。 この段階からが2つめの「どんな商品がよいか分かっていない」への対応が 始まるわけです。 次に(2)銀行の店頭でイヤな思いをしたくないどころか、プラスの気持ちにさせて くれる、はどうでしょうか。 そもそも金融商品・サービスは、「目的」ではなく「手段」です。 一般の形がある商品(例えば液晶テレビ)や、マクドナルドなどの飲食、ディズニー ランドなどのエンターテイメントは、それを使ったり、食べたり、そこで過ごす時間 そのものが目的です。 しかしおカネは、それを使って何かを得たりするための手段です。おカネ自体が 目的ではありません(もちろん、ごく一部にそういう人はいるでしょうが・・・)。 例えば、宅配便や交通システムなどのサービスも同じ部類に入ります。 こうしたサービスは手段であるがために、利用者がそのサービス自体に大きな 付加価値を感じることは、あまりありません。それよりも先に「不快でないこと」、 つまり利用するために障害・障壁がないことがポイントになります。もともと 楽しんでやることではないので、イヤなき持ちにならないことが重要なのです。 さらに、金融サービスの中身は一般の人には分かりにくいものなので、そういう ものを利用しようとすること自体にも抵抗が生じます。誰しも得体の知れない ものには不安を感じます。そうすると、ちょっとした障害が利用を諦めさせる 原因になってしまうのです。 金融に関する話は、多くの場合パーソナルな内容を含んでいます。それだけに、 顧客は自分のことについて話すのに慎重になります。相手が自分のことを 話すに足る人物かどうか判断できるよりも前の段階で障害があると、それを 乗り越える前に引き返してしまうのです。 しかしカロリーナは、そうした障害を顧客に乗り越えさせて、自分のニーズを 認識させ、それに対する解決策を提示しています。サービスを受ける側は 「自分の問題が明らかになったうえに、それを解決できた」というという、 ベネフィットとプラスの気持ちを持って帰れます。 この結果、顧客は次の機会もカロリーナのところに来ようとします。わざわざ 他のところに行って、イヤな思いをするリスクを負いたくないですし、カロリーナは むしろよい気持ちにさせてくれるからです。こうしてリピートオーダーが得られ、 固定客がつくられていきます。 さらに、顧客は自分がしたよい経験を知り合いに話します。そして口コミで 新しい顧客がやってくる。口コミは最もおカネのかからないマーケティングです。 その新しい顧客がまた固定客化するという好循環が生まれていきます。 新規顧客の獲得コストが大きい場合、既存顧客の離反率を低く維持し、 一方で新規顧客獲得コストを低減することができるこの営業モデルは、 非常に魅力的なものと言えます。 さて、カロリーナの話は、彼女個人の資質に関するものです。 どの金融機関にも、カロリーナのようなカリスマ営業がいるはずです。 しかし金融機関にとって重要なのは、これを個人のストーリーに終わらせない こと。つまり、いかに第二、第三のカロリーナを作り出すか。そして、それを 組織として生み出していける「仕組み」を作ることができるかです。 そのためには、次のような一連の作業が必要になるでしょう。 ・顧客が金融商品の購入に際してどのような意思決定の手順を踏んで いるかを理解し、標準化する ・そのプロセスの中で、顧客が何を感じ、何が障壁となり、どうすればその 障壁がクリアされるかを理解する。 ・カロリーナのようなカリスマ営業が行っていることを分析し、標準化する ・営業推進プロセスに関するモデルを構築する ・モデルをテストし、必要な修正を行う ・教育・育成および評価のしくみを構築する ・組織全体に展開する これらは、リテール担当部門とか、営業企画部門などが単独で実施するのは ムリがあります。一定の時間と資源を必要としますし、それ以上に、業績評価や 採用・育成などとも密接に係わってくるからです。 とは言え、すでにリテール営業力の標準化+強化に着手している金融機関は あります。 上記の手順を推進して目に見える効果を得るには一定の時間がかかるだけに、 競合に先んじて整備にとりかかれば、かなりの時間のアドバンテージを得ることが できると考えられます。 取組みの差は、今後徐々に目に見えるものとなってくるでしょう。 では、また次回。 ------------------------------------------------------------ このメルマガの転送・コピーは自由です。 (ニューズレターの著作権はバードさんに帰属しますので、無断での商業利用は ご遠慮下さい)。 何か感じられた方は、コメントを送っていただけるとすごく嬉しいです。 (メールアドレスはbankingview@aol.comです) あと、私がこのメルマガで翻訳しているニューズレターの原著者、Anat Birdさんの サイトも訪れてみてください(http://www.anatbird.com/)。 英語だけど面白いですよ。 それでは、また。


