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「銀行を変えたい!」と願う人、「銀行はどうなるの?」と考えたい人を応援するメルマガ。米国Anat Bird氏のメルマガ翻訳版(本人承諾に基づく)を紹介しつつ、銀行ビジネスについてのやぶにらみ的観察・感想を綴る。

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2009/06/22

第25回:カードの本体発行は成功するか?

こんにちは。「銀行ビジネス鳥の眼/虫の眼」第25回のメルマガです。

今回は、バードさんのニューズレターの翻訳はお休みにして、最近増えてきた、
クレジットカードの金融機関による本体発行について議論を整理してみましょう。

このテーマは、十分検討が尽くされずに話が進んでいるような気がしてならないので、
私なりの整理をかけてみたいと思います。

読者の皆さんの中には、「ウチはきちんと検討した上でやってるよ」という方が
おられるかもしれません。であれば、ぜひフィードバックをいただいて、より中身の
濃い議論をしてみたいところです。

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<カードの本体発行は成功するか?>

クレジットカードを本体発行へと切替える銀行が増えてきました。

なぜ、カードの本体発行をするのでしょうか。

私が銀行の営業企画の方と話をする時に、よく出てくる本体発行の理由づけは、
次の2つです。

1)いまや給振ではなく、カードや携帯電話料金の決済口座が顧客のメイン口座に
  なっている。カードを本体発行すれば、決済を自行の口座に集中できるはず。
2)クレジットカードの決済口座を自分の銀行に指定したとしても、決済金額は
  分かるが、顧客がどのようなおカネの使い方をしているかが分からない。
  本体発行にすれば、顧客のおカネの使い方が分かるのでもっと色々な
  アプローチができるはず。

しかし、「ちょっと待てよ」です。これはロジックが変です。

まず「本体発行カードを持ってもらえば・・・」という最初の理由づけを
検証しましょう。

メイン口座が給振からカードやケータイの決済口座に移っているという認識は、
正しいですね。おカネが「入ってくる」口座ではなく、「出ていく」口座が
メインです。

それはよしとして、カード発行の議論はどうでしょうか。

今や、ふつうの大人はクレジットカードをすでに何枚かは持っています。

若い家族では、奥さんはたいていショッピングセンターのカードを持っています。
なぜなら、スーパーで買物すると割引が受けられるから。さらに、ジャスコとかの
ショッピングセンターで特売日にカードを使えば、割増ポイントがたまって
さらにおトクだったりする。

ダンナはというと、ガソリンスタンドのカードを持っています。その月の利用実績に
よって、翌月、何円かでもバックしてくれるガソリンカードは重宝。

あとはマイレージカード。出張する人は、JRとか航空会社のカードがいい。JR東海や
JR西日本のエクスプレスカードは、携帯電話で新幹線の予約や変更が無料でできるし、
JALやANAでマイルを貯めれば、座席をアップグレードしたり、無料航空券や電子マネー
に交換できるなどのおトクがある。カードを利用するとポイントをマイルに交換
できます。

また自動車会社のカードを持っていれば、ポイントを貯めるとクルマの買い替えの
時に値引きしてもらえる。

だいたい、メインカードとサブメインカードがあって、これらの中から2枚くらいの
カードを中心に使い回しています。

そこに押っ取り刀で銀行がカードを本体発行にして「新しいカードが出ました。
切替えて使ってください」とやって来るわけです。

でも、奥さんもダンナも、メリットがあるから現在のカードを使っているので、
銀行系カードに何かそれを超えるプラスがなければ、メインかサブメインには
なれません。そして、メインか少なくともサブメインのポジションを獲らなければ、
たまに必要なときに使われる程度のカードになってしまいます。そして、メリットの
少ない銀行カードは、その「たまに」もあまり望めなくなってしまう・・・

つまり、ただカードを作って持ってもらうだけではダメなのです。

よく聞く話は、本体でカード発行したものの、広告宣伝だけでは売れ行きが
よくないので、渉外にノルマをかけて売らせるというものです。頼まれたお客様は
「仕方ないから」カードを作ってくれますが、彼らとてすでに使っているメインの
カードがあります。使うかどうかは上記のストーリーを読めば明白でしょう。

なお、当家の事情を申し上げるなら、私は銀行員であった時代に作った銀行系カード
(本体発行ではありません)を長らくメインカードとして使ってきましたが、
転職し、出張が多くなって、ここ10年くらいのメインカードは航空会社のと新幹線
のカードです。

家内は、ずいぶん前から百貨店のカードがメインですね。銀行系カードの家族
カードは作ってますが、基本は「サイフの肥やし」状態です・・・

ということで、決済を集中させることが目的ならば、本体発行を選択する必要は
ありません。その他のカードであれ、「カード決済を集中することが顧客にとって
おトクだ!」という施策を実施すればよいのです。

次に、カードデータがあればマーケティングが可能になるという話。
私は、カードデータがあってもマーケティングができない、とまでは言いません。
しかし、仮にデータがたまったとして、それを活用して有効なマーケティングが
できるかについては疑問符がつきます。ショッピングデータをうまく活用できている
カード会社が事実上存在しないからです。

そもそも、金融機関がデータを活用してカードビジネスで収益を上げるには、
どのような方法があるのでしょうか。基本的には次の3点でしょう。

1)カードを利用してより多くのショッピングをしてもらう
 (→加盟店手数料、取扱い手数料収入を増やす)
2)ショッピングに関連して発生するキャッシング、リボをより多く使ってもらう
 (→金利収入を増やす)
3)カードデータを活用して、他の金融商品を販売する
 (→金融商品の販売手数料収入を増やす)

1)と2)は従来から行われているアプローチです。

現実には、カード会社の主な収益源は、大手銀行系の場合は加盟店手数料
(と年会費)、流通系はキャッシングとリボです。まず加盟店手数料は、
今後大幅に増える見込みはありません。ショッピングの伸びでそれなりに
フィーを稼げるのは、過去の開拓実績により、数多くの加盟店を抱える
大手銀行系カード会社(とセゾン)のみです。すでにひと通りの小売業者は
カードを取扱っているので、新しいカード取扱先を見つける必要がありますが、
もはや限界収益はかなり低くなっています。

もちろん、カードを利用する局面(例えば、治療費や税金など)は今後も増えます
が、そこも加盟店争奪戦(=価格戦争)となることはほぼ間違いないでしょう。

年会費もディスカウントが進んでいます。複数の決済を口座に集中すれば、カード
年会費やATM手数料が無料というパッケージサービスも増えてきました。

次いでキャッシングについては、消費者金融と同じく、上限金利規制と、来年の
導入が見込まれる総量規制の影響を睨んで、増えるよりも減少の傾向にあります。
銀行系カード会社では「ショッピングリボが増えている」という喜びの声もある
ようですが、実態はキャッシング枠がきつくなった顧客がリボに流れてきている
面もかなりあるとみられています。

今後、総量規制の政策方向性が定まれば、それによって消費者金融を含む個人小口
金融ビジネスの再編が進むとみられています。それを見越して先手を打つか、
動向を見極めてから動くかの選択肢となりますが、これはかなりハイレベルの
戦略的意思決定になるので、経営陣の判断が入るでしょう。もっともそうなれば、
積極姿勢で臨む金融機関が多いとは思えませんが・・・。

なお、小口金融については、現時点でほとんどの業態が様子見の状況にあります。

3)については、保険商品の販売などは、従来からカード会社が行っています。

それ以外で銀行が得意な方法では、例えばカードデータから消費支出パターンを
分析し、キャッシュが一時的に不足して資金繰りが厳しい、しかし優良な利用者を
洗い出し、当座貸越サービス等を提供する(キャッシングやリボより低い金利で)
ことなどが考えられます。あるいは、そうした顧客が住宅ローンを抱えていれば、
早めにリスケする等のアプローチもありでしょう。

これらの方策を実施するためには、顧客データ分析と、心理・行動によるセグメン
テーションの能力を持つことが必要になります。これらはいずれもマーケティングの
基礎体力の部分なので、いったん能力を築くことができれば、様々な面で活用が
可能になりそうです。

能力構築にかかるポイントは、経営陣に「忍耐力」が必要という点です。勝ち
パターンを見つけ出し、しかもその販売施策を成功に導くためには、ある程度の
試行錯誤が必要であり、最初からうまく行くケースは少ないと考えられます。

「うまくいかないとみれば、理由の如何はともかく、すぐ止めて二度とやらない」
という従来の取組みパターンでは、実現は難しいかもしれません。

いずれにせよ、目的を明確にしないままに本体発行を行うと、「切替えたはいいが、
枚数も利用も伸びない」という事態に陥りかねません。銀行の都合優先ではなく、
顧客(消費者)を中心にすえて、その心理や行動を理解して施策を打つという、
マーケティング的な取組みが必要になります。

では、また次回。

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このメルマガの転送・コピーは自由です。
(ニューズレターの著作権はバードさんに帰属しますので、無断での商業利用は
ご遠慮下さい)。

何か感じられた方は、コメントを送っていただけるとすごく嬉しいです。
(メールアドレスはbankingview@aol.comです)

あと、私がこのメルマガで翻訳しているニューズレターの原著者、Anat Birdさんの
サイトも訪れてみてください(http://www.anatbird.com/)。
英語だけど面白いですよ。

それでは、また。

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