2008/09/09
産科医無罪判決 その3 産科医の処置に過失はなかったのか?
今から遡ること2年、朝日新聞は2006年4月12日の記事 において、今回の逮捕の経緯について次のように伝えています。 「05年3月に公表された医療事故調査委員会の報告書は、事故 の要因として癒着胎盤の無理な剥離や輸血対応の遅れなどを指摘。 執刀医は今年2月、県警に業務上過失致死と医師法違反容疑で逮 捕され、3月に起訴された」「福島県立病院の医療事故では、院 外の医師3人からなる調査委がまとめた報告書の公表が捜査の端 緒となった。」 さらに、20日の判決を控えた8月17日、朝日新聞は判決予 告の記事において次のように述べています。 「病院側は、外部の専門家3人による医療事故調査委員会をつ くり、手術内容を検討。調査委は、加藤医師の判断ミスを認め、 ▽胎盤が子宮の筋肉に付着していることに気付かず、通常使わな いはさみを使って切り離した▽大量の出血が続いたのに、院内の 他の医師に応援を頼まなかった、などと指摘。報告書は県に提出 された。」 以上の記事から分かるのは、今回の産科医の措置についてミス があったと指摘する声が医師の中にも厳然と存在していたという ことです。少なくとも、外部の3人の医師は産科医のミスを明確 に認めているのです。 ところが、今回の無罪判決を伝えるメディアは、そういった事 実に触れないばかりか、今回の当該産科医の処置が医療界の常識 であるかのように報道しています。 朝日新聞は判決翌日の8月21日、社説で次のように述べてい ます。 「判決は医療界の常識に沿ったものであり、納得できる。検察 にとっても、これ以上争う意味はあるまい。控訴すべきではない。 今回の件では、捜査するにしても、医師を逮捕、起訴したことに 無理があったのではないか。」 また、同日付紙面には、日本産科婦人科学会(吉村泰典理事長) が20日に行った「癒着胎盤は困難な疾患で診断も難しい。重篤 な疾患を扱う医療の困難さとそのリスクに理解を示した妥当な判 決だ。」との会見の内容を掲載。 また、長崎新聞8月21日付け紙面には東京都立府中病院産婦 人科の桑江千鶴子部長の「私も医療現場の立場だったら、同じ治 療をしていたい。日本中の医師の思いが共通していたので、これ ほどの動きが広がった。」とのコメントを掲載しました。 今回の産科医の処置が医療界の常識であるなら、医療事故調査 委員会の指摘は何だったのでしょうか?それを検証することなく 今回の判決を全面的に評価する医療界とメディアの姿勢はいかが なものでしょうか?


