2008/08/30
福島県立大野病院事件その2 医療が萎縮する?
今回の産科医逮捕を巡っては、医師側からは、 「医師の治療行為の萎縮につながる」「だれも 高度医療に手を出さなくなる」といった主張が 繰り返され、メディアもそれを頻繁に取り上げ ました。 判決翌日の8月21日、朝日新聞は本件記事 中で、「医療界は『医療全体の萎縮を招く』と して強く反発していた。」、「医療界で『結果 が悪いだけで、警察が介入すれば、医療現場は 萎縮する』という批判の声が高まった。」と、 医師側の主張に何の検証も加えることなく取り 上げています。 しかし、医師を刑事罰の対象とすることが医 療行為の萎縮につながるのでしょうか?仮に萎 縮につながるとしたら、医師は刑事罰の対象か ら外すべきなのでしょうか? これに関して興味深い記事を見つけました。 長崎新聞は08年2月27日、昨年10月に 厚労省が医療事故調査委員会の原案を公表した ことを受け、「『医療事故調』構想まとまる」 との特集記事を掲載します。この記事では、「 届け出を受けたもののうち、故意や重大な過失 など刑事事件を追及すべきケースについては新 組織が速やかに警察に連絡。」とする原案に対 して、医療関係者から「届け出義務や警察への 通報は萎縮医療を招く」「医療事故に刑事罰を 課すべきではない」といった反対意見が続出し ていることを紹介。その一方で、そうした考え と一線を画するある医師のコメントを紹介して います。 登場したのは、心臓バイパス手術を年間20 0例以上もこなす心臓外科医・南淵明宏(49 歳)大和成和病院長。過去に数多くの本を執筆、 ブラックジャックの異名をもつ医師でもありま す。以下、記者とのやり取りの一部を引用します。 −政府案に対し「医療従事者に刑事責任を問う べきではない」との主張があるが。 「どのような職業でもリスクはある。良かれと 思って一生懸命やったことで人が死んだ場合に、 医師だけが刑事責任を免責される理由はないだ ろう。ある集会で『刑事罰を受ける可能性があ るなら萎縮して判決などかけない』と話した裁 判官がいたが、そんな心づもりではプロの裁判 官とはいえない。プロとは常に自分を追い詰め、 ぎりぎりのところで仕事をしている人のことだ」 −司法の介入は「医療崩壊」につながるとの指 摘もある。 「刑事事件と医療崩壊を結びつけた議論は、医 師社会の幼稚さや秩序の無さを露呈させている。」 −医療事故の原因究明にどんな方法が必要か。 「例えば、記録ビデオもなしに手術の内容を事 後検証するのは無意味だ。自分の車が車上荒ら しにあわないよう病院の駐車場に防犯カメラを 設置する医師は多いが、自らの医療行為につい て映像での記録と活用が必要と考えている医師 はまだ少ない。インフラが整った今、手術室の 映像を記録するのはコストは掛からず方法も単 純だ。ビデオへの記録を全国の病院で必須とす るのは当然のことだ。」 −大和成和病院でも導入しているのか。 「もちろん、手術時の映像を希望する患者さん には渡している。手術や病棟の映像が残れば、 事故があった際に医師側が都合のいいストーリ ーをつくることを妨げる。一方で、恣意的な批 判に対しては医師の側が身を守る手段にもなり うる」 いかがでしょうか?こうした南淵医師の主張 に対して反論医師がどれだけいるでしょうか? また、どうしてメディアはこうした医師の意見 を取り上げないのでしょうか?


