2008/08/15
なぜ外国人医師を迎え入れないのか
日本とインドネシアとの経済連携協定(EPA) に基づき、インドネシア人の介護福祉士と看護師 の候補者205人が8月7日に来日するのを控え、 朝日新聞8月3日付け社説は「ケアの開国 職場 の魅力が問われる」と題し、外国人労働者を受け 入れるにあたっての日本の心構えについて説いて います。 「高度な専門職に限っていた外国人の受け入れを、 それ以外の分野に広げる一つの節目に違いない。」 「…そこで互いの文化や技術を伝え合いながら歩 むことはいいことだ。交流すること自体は悪くな い。」と外国人の受け入れを積極的に肯定してい ますが、気になる点があります。 それは、高度専門職の代表格ともいえる医師につ いては受け入れを全く議論しないまま、少なくと も医師よりも高度専門職とは言えない介護士や看 護士の受け入れを奨励している点です。 昨年から今年にかけて頻発した救急病院による急 患拒否事件。病院側は拒否の理由として医師不足 をあげ、メディアもそうした病院の言い分を積極 的に取り上げました。その結果、政府は今年度予 算に医師確保対策として多額の予算を計上、さら に診療報酬の改定による勤務医の負担軽減、今年 6月には福田首相が来年度予算で医師不足対策に ついては社会保障費の歳出削減の別枠予算とする ことを表明、厚労省も医師養成数の増員を発表す るなど医師確保に多額の税金を投入する見通しと なっています。 医師確保にここまで手厚い支援を行われている 半面、介護士や看護婦の待遇改善についてはほと んど手が付けられていない状態です。医師の待遇 改善に向けられるほんのわずかな額でも彼らに向 ければ、彼らの待遇を改善、離職を引き止めるこ とは十分可能です。それも行わないまま、いきな り外国人労働者を迎え入れるとは納得できません。 もし、そのような手順が許されるのであれば、ま ずは医師の分野にこそ外国人を迎え入れるべきです。 医師の不足、正確にいいますと、地方や診療科目 による医師の偏在は深刻です。救急医療の現場は もちろん、離島では産科医がいなくなり妊婦が出 産のために本土に渡るなどの異常な事態が生じて います。 とはいえ、先ほど述べたような手厚い支援を行 ってもすぐには医師不足は解消しません。また、 たとえ医師数が増加しても、今のように自由に診 療科や勤務地を選べる制度のままでは、地域や診 療科ごとの偏在、つまり地方における小児科医や 産科医の不足、救急医の不足は解消できません。 つまり、医師不足は解消しないのです。 そうなると、外国からの介護士や看護師を迎え 入れる前に、外国人医師を迎え入れて医師不足を 解消する方が先ではないでしょうか? ちなみに、当社説には「まずは働く人がそこで がんばろうと思える職場に変えることだ。特に介 護の現場では重労働のわりに低い賃金が離職の主 な原因となっている。」と、介護士や看護士の待 遇改善を訴える箇所が登場するのですが、その続 きには「そのような労働条件を放置したままでは 日本で腕を磨こうと海を越えてくる人たちを失望 させてしまうのではないか。」とあり、あくまで 外国人の受け入れを前提とする議論の展開に落胆 させられます。


