遺言書作成倶楽部 第14号 実践編7
今回は「負担付相続」の遺言を作成してみましょう。
負担付相続とは、特定の相続人に財産を多く相続させる代わりに、何らかの債務を課すことです。
相続人は負担である債務を履行しないと、相続を取り消されることがあります。
負担付相続を受けた者は、相続の利益を受けるか又は放棄するかの選択ができます。
〜モデル設定〜
遺言者には妻と長男及び次男がいます。
長男及び次男は、それぞれ独立し家庭を持っています。
遺言者の死後、妻は一人暮らしとなり、生活が困難となることが予想されます。
そこで長男に多く相続させる代わりに、自分の死後は妻と同居し、世話をしてもらうことを考えています。
なお、今回は包括遺贈とします。
〜遺言書の例〜
遺 言 書
1. 遺言者山田太郎は、以下のとおり各相続人の相続分を指定する。
妻 山田花子 8分の2
長男 山田一郎 8分の5
次男 山田二郎 8分の1
2. 長男山田一郎は、第1項の財産を相続することの負担として、以下のことを定める。
(1)妻山田花子が死亡するまで同人と同居すること。
(2)妻山田花子の必要な生活費を支出すること。
(3)妻山田花子の毎日の食事を準備する等して扶養すること。
3. 遺言者は、次の者を遺言執行者に指定する。
住所 OO県OO市OO町OO丁目OO番OO号
氏名 鈴木三郎
生年月日 昭和OO年OO月OO日
4. (1)遺言執行者は、第1項に定めた相続財産の分割を実現するものとする。
(2)遺言執行者は、第2項に定めた長男山田太郎の負担が適切に履行されるよう監督するものとする。
平成OO年OO月OO日
遺言者 山田太郎 印
〜ポイント〜
法定相続分、遺留分に関しては、すでに十分理解されていると思いますが、一応以下に掲げます。
法定相続分
妻 4分の2
長男 4分の1
次男 4分の1
遺留分
妻 8分の2
長男 8分の1
次男 8分の1
本遺言書第1項では法定相続分と異なる相続分を指定していますが、各相続人の遺留分は確保されています。
従って遺留分減殺請求される心配はありません。
次に第2項を見てみます。
長男が遺言者の妻を扶養するのが適当であっても、扶養のための財産を所有していない場合があります。
本ケースでは、長男への相続財産で妻を扶養させることを想定しています。
しかし、長男が第1項で定めた相続分を相続したものの、扶養の義務を果たさないという事態もありえます。
また、果たした扶養義務が適切かどうか争いが生じることもあります。
そこで最低限、第2項に書いた程度には扶養の内容を具体的に特定しておいた方がよいでしょう。
長男が第2項の負担を果たさなかった場合、他の相続人は相当の期間を定めて負担の履行を催告することができます。
その期間内に履行がないときは、その負担付相続の取り消しを家庭裁判所に請求することができます。
家庭裁判所により取り消しがなされると、長男は第1項に定めた相続分を相続できなくなります。
第3項に定めた遺言執行者は、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利と義務があります。
第4項(2)のように、長男が負担を適切に履行するよう、遺言執行者による監督を定めることもできます。
他の相続人による監督はトラブルの素にもなりかねませんので、本ケースのように第三者による監督を定めたほうがよいでしょう。
なお、負担付相続には、民法における「負担付贈与」の規定が準用されます。
負担付贈与では「遺贈の目的額を超えない限度においてのみ負担した義務を履行する責任を負う」と規定されています。
遺言書を作成する際には、相続財産に比べて過重な負担をさせないよう気をつけなければなりません。
そのためには、相続財産の価値をしっかりと把握することが必要です。
==========今号の特集==========
〜一般危急時遺言〜
今回は特別方式遺言のひとつである一般危急時遺言を紹介します。
一般危急時遺言は、疾病等の事情により死亡の危急が迫っていると遺言者が判断したときに、証人3人以上の立会いによってなすことができます。
遺言者は証人の1人に対し、遺言の趣旨を口述します。
口述を受けた者がこれを筆記します。
筆記にはワープロやタイプライターを用いても構いません。
また、筆記する内容は口述の趣旨が筆記されていればよく、口述と一言一句同じである必要はありません。
次に、口述を受けた者は筆記した内容を他の証人、遺言者に読み聞かせ又は閲覧させます。
各証人は筆記内容が正確であることを確認したら、これに署名押印します。
出来上がった遺言書は、遺言の日から20日以内に証人の1人又は利害関係人が家庭裁判所に請求して確認を得ます。
家庭裁判所の確認のない一般危急時遺言は無効となります。
また証人には証人適格を有する者でなければなれません。
例えば証人3人の中に1人でも推定相続人などの利害関係者がいた場合には、遺言は無効になります。
なお、遺言者が危急状態を脱し、普通方式の遺言ができるようになって6か月が経過すると、一般危急時遺言の効力は消滅します。
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