遺言書作成倶楽部 第7号 今回は遺言事項について解説します
遺言書に記載したことすべてに法的強制力が生じるわけではありません。
例えば「兄弟で協力し、お母さんの面倒を見てほしい」、「遺留分減殺請求をしないでほしい」といったことには拘束力がありません。
また葬儀方法や、献体・臓器提供についての希望にも強制力がありません。
(このようなメッセージも強制力が働かないだけで、記載すると遺言全体が無効になるわけではありませんので、書くことは自由です)
遺言により強制力が生じる事項は、民法、その他の法律で定められています。
これを「法定遺言事項」といいます。
法定遺言事項として規定があるのは、大きく分けて以下の5つです。
1. 相続に関する事項
2. 財産処分に関する事項
3. 身分に関する事項
4. 遺言執行に関する事項
5. その他
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〜相続に関する事項〜
1. 相続人の廃除とその取り消し
以前に解説した「廃除」は遺言によっても行うことができます。
ただし相続開始後、家庭裁判所の審判が必要なことには変わりありません。
不行跡を理由に生前に廃除していた者を、その後の事情の変化により廃除を取り消すこともできます。
2. 相続分の指定又は指定の委託
遺言で相続分の指定を第三者に委託することができます。
受託できるのは第三者に限られます。
推定相続人を受託者に指定してしまうと無効になりますので、注意が必要です。
多くの場合、家庭の事情に通じた友人・知人に委託がなされます。
しかし、相続分の指定は遺留分を侵害することはできませんので、ある程度法律に詳しい者がよいでしょう。
3. 特別受益者の相続分に関する指定
特別受益者とは、相続人の中で被相続人から遺贈または婚姻・養子縁組のための生前贈与、生計資本としての生前贈与を受けた者です。
遺産の価額に生前贈与の価額を加えたものを相続財産とみなします。
4. 遺産分割方法の指定又はその委託
遺産分割方法とは、遺産をどのような形で分割取得させるかの方法です。
一般に現物分割、価格分割、代償分割、共有による方法があります。
詳しくは、またのちの号で解説していきたいと思います。
5. 遺産分割の禁止
遺産分割は様々な事情により一定期間禁止することができます。
しかし、その期間は相続開始から5年を超えることはできません。
6. 共同相続人の担保責任の定め
共同相続人は各相続人に対して、売買の時と同様担保責任を負うことになります。
遺言でこの担保責任について、法定されている以外の方法を定めることができます。
7. 遺贈の減殺方法の指定
通常、遺贈に対する遺留分の減殺は、目的物の価額に応じて行われますが、これを金銭で行うか、目的物の現物で行うかといったことを指定できます。
しかし、遺留分を侵害しない遺言をすることが無難です。
〜財産処分に関する事項〜
1. 包括遺贈と特定遺贈
包括遺贈とは、相続する財産の目的物を特定せず、「財産の3分の1」などといったように包括的に相続分を指定することです。
特定遺贈とは「土地はAに、預貯金はBに」など、目的物を指定する方法です。
特定遺贈と包括遺贈にはそれぞれ長所、短所がありますので、のちの号で詳しく解説します。
2・寄付行為
寄付行為とは財団法人を設立することをいいます。
遺贈に関する規定が準用されます。
自分の名前を冠した財団法人名を規定することもでき、相続人を理事に就任させることもできます。
ノーベル賞を運営している「ノーベル財団」が有名ですね。
3. 信託の設定
遺言信託は残された家族の生活費の確保や、永代供養を目的として利用されることが多いです。
例えば遺産を不動産会社に信託し、ビルを建築・管理させ、家賃収入を残された親族の生活費に充当するといったようなことです。
注意しなければならないのは、遺言信託がなされると、信託財産は受託者に帰属し、遺産分割の対象にならないことです。
また、相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分減殺請求の対象になります。
〜身分に関する事項〜
1. 認知
例えば正妻以外との間に認知されていない子がいる場合に遺言によって認知することができます。
認知された子は非嫡出子となり、相続人になることができます。
(しかし非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の2分の1です)
ただ遺言による認知は親族間でのトラブルの元になります。
できるだけ生前に行っていた方がよいでしょう。
2. 未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定
遺言者の死亡によって、未成年の子に親権者がいなくなってしまう場合に後見人を指定することができます。
後見監督人とは後見人と被後見人との利益が相反する行為について、被後見人を代表することをその任務としています。
文字どおり被後見人の利益のため、後見人を監督する者です。
〜遺言執行に関する事項〜
1. 遺言執行者の指定又はその委託
遺言執行者とは、相続財産の管理、遺産の分割など遺言執行に必要な一切の権利、義務を有する者です。
公正と専門知識が必要なため、弁護士や行政書士などの法律専門家を遺言執行者に指定することが多いようです。
また、遺言で遺言執行者の選任を委託することもできます。
〜その他〜
1. 祭祀承継者の指定
遺言では相続財産に関する事項だけではなく、祭祀の主宰者も決めることができます。
要するに喪主ですね。
〜生前行為でもできる事項〜
法定遺言事項には、一部生前に自らおこなっておくことができる事項があります。
「推定相続人の廃除とその取り消し」「認知」「寄付行為」「信託の設定」「特別受益者の相続分に関する指定」「祭祀承継者の指定」
これらについては、生前に行っておくことが可能です。
のちの紛争、トラブルを回避するには「生前にできることは生前にする」ということが必要でしょう。
==========今号の特集==========
〜遺言の訂正〜
遺言書の訂正は、変造・偽造防止のため厳格に方式が定められています。
作成した遺言の訂正をするには、遺言者がその場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更場所に印を押さなければなりません。
具体的には、まず訂正したい箇所を二重線などで抹消して、その場所に印を押します。
そして訂正した行の欄外か、遺言書の末尾に訂正した場所を示し、訂正した旨を付記します。
付記には自筆にて署名しなければなりません。
訂正に用いる印鑑は、遺言作成時に使用した印鑑を使うのが適切です。
例1 欄外に付記する場合
200
現金100万円を相続させる 本行3字訂正 山田太郎
印
※実際には「100」の部分を二重線などで訂正します
例2 末尾に付記する場合
200
現金100万円を相続させる ※「100」の部分を二重線で訂正
印
平成OO年O月O日
遺言者 山田太郎 印
付記 本遺言書O行目中100万円との記載を200万円と訂正した 山田太郎
訂正は遺言作成後だけではなく、作成過程の訂正でも法定の方式に従わなければなりません。
方式違背のある訂正は、訂正の効力が生じず、もとの記載が判読できる場合、訂正はなされなかったとして効力を生じてしまいます。
訂正に方式違背があり、もとの記載が判読できない場合は遺言そのものが無効になってしまいます。
遺言の訂正の方式は要件が厳格なため、遺言書自体を書き直すほうが安全かもしれません。
今号は法律用語も多く、いささか退屈な内容だったかもしれません。
しかし、遺言作成をするうえで重要な事項なので、あえて掲載いたしました。
次号からは、いよいよ実践編になります。
遺言に関するお問い合わせ、ご相談、ご依頼はこちらまで。
行政書士 古川法務事務所
メール furukawa-houmu@tulip.ocn.ne.jp
HP http://www.furukawa-houmu.jimusho.jp


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