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2008/07/18

理系受験生のための基礎物理    第44号

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◆◆◆==== Basic physics ====================

         理系受験生のための基礎物理    第44号

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 ■ 「ドップラー効果」について

以前に配信した「音波」のところで,音波とは空気振動であり,
その振動が私達の鼓膜を振動させることにより,音として認識
されることをお話しました。
また,振動数が大きいと「高い音」,振動数が小さいと「低い
音」と感じることをお話しました。
今回は,波源(わかりやすく音源としましょう)と観測者が相対
的に近づいたり離れたりするとき,観測者にはどのような振動
数として観測されるかを考えてみます。

もともと振動数とは,1秒間での振動回数でした。
例えば,100Hzの音源というのは,1秒間に100個の波を送り出す
音源ということです。
いっぺんに100個の波を同時に送り出すのではありません。
1秒の間に1つずつ100個の波を順番に送り出すのです。
ですから1秒後には100番目の波を送り出した直後ということに
なります。

いま振動数 f0〔Hz〕(f0の0は小さい字の添え字)の音を出す
音源 S があり,その音を聞く観測者 P がいるとします。
音速を V〔m/s〕とし,話を簡単にするために S と P は V〔m〕
離れているとしましょう。

始めは,S も P も共に静止している場合を考えます。
このとき P は,当然,振動数 f0〔Hz〕の音を聞きます。
下図で順次みてみましょう。

時刻0にSが音を出し始めます。

 S(1番目の波)→          P
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           V

時刻1に(1番目の波)がPのすぐ側まで来ています。
Sからは(f0番目の波)が送り出された直後です。

 S(f0番目の波)→   (1番目の波)P
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           V

このときPはまだ音を聞いていません。
Pは,音が自分のすぐ側まで来ていることすら知りません。

その後,時刻2に,(1番目の波)がSから 2V〔m〕の位置まで進み,
Sは(2f0番目の波)を送り出した直後です。

 S(2f0番目の波)→        P(f0番目の波)→  (1番目の波)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           V

時刻1から時刻2までの1秒間にPの鼓膜を振動させた波は(Pを通過
していった波は)f0個の波です。
Pは振動数f0〔Hz〕の音として観測します。


では,Pが速さ u〔m/s〕でSに近づく場合を考えてみましょう。
時刻0にSが音を出し始めます。
(まだPは動かないとします)

 S(1番目の波)→          P
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           V

時刻1に(1番目の波)がPのすぐ側まで来ています。
この瞬間からPはSに向かって速さ u〔m/s〕で動き出すとします。
                    ←u
 S(f0番目の波)→   (1番目の波)P
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           V

その後,時刻2に,(1番目の波)はSから 2V〔m〕の位置まで進み,
Sは(2f0番目の波)を送り出した直後です。
Pはもとの位置から u〔m〕動いています。

 S(2f0番目の波)→     P (f0番目の波)→   (1番目の波)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                |←u―|―――――― V ――――――|

時刻1から時刻2までの1秒間にPの鼓膜を振動させた波は(つまりP
より右にある波は), f0 個ではありません!
もっと多くの波が通過していきました。
Pは「f0より高い音」として感じたはずです。
では,この1秒でPを通過していった波の数(Pが観測した振動数) 
f は,2Vの中に2f0個の波がありますから,V+u の中にある
波の数 f は

   2V : V+u  = 2f0 : f  より

          f = f0(V+u)/V   です。

(V+u)/V は分母より分子のほうが大きいですから1より大きい
分数です。
したがって,f は f0 より大きい数になり,Pは高い音を観測
しました。


次にSが速さ v〔m/s〕でPに近づく場合を考えてみます。
時刻0に(1番目の波)を送り出すと同時にSはPに向かって動き
出すとします。
 v→
 S(1番目の波)→          P
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           V

ここで気をつけるのは,音源の速さと音速です。
音は空気振動が伝わるものですから,空気が静止していれば(風が
なければ),一定の速さ(音速)で伝わります。
音源から出た音(波)は,音源の速さとは関係なく音速で伝わります。
このときの音速を V+v として音源の速さまで加算してはいけま
せん。(気をつけましょう)

時刻1に(1番目の波)がPのすぐ側まで来ています。
Sは(f0番目の波)を送り出した直後です。
ですが,この1秒間にSはもとの位置から v〔m〕動いています。

     S(f0番目の波)→(1番目の波)P
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 |―v→|          

音源Sが静止していれば,距離 V〔m〕の中に f0 個の波があり
ますが,この場合は V−v 〔m〕の中に f0 個の波があります。
つまり,波長が縮んでいるのです!
(逆に,SがPから遠ざかるときは,Pにやってくる音波の波長は
 長くなります)

時刻2に,Sは(2f0番目の波)を送り出した直後です。
(1番目の波)はもとの位置から 2V〔m〕進んでいます。
Sはもとの位置から 2v〔m〕動きました。

        S(2f0番目の波)→   P       (1番目の波)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 |――2v―→|           2V−2v         |

2V−2v の中に 2f0 個の縮んだ波がありますから,時刻1から
時刻2までの1秒間にPの鼓膜を振動させた波の数 f は

  2V−2v : V  = 2f0 : f  より

          f = f0V/(V−v)   となります。

同様にして,Sが速さ v〔m/s〕,Pが速さ u〔m/s〕で互いに
近づく場合に観測される振動数 f は

          f = f0(V+u)/(V−v)  となります。
      (これは,みなさんが自分で導いてみて下さい)


以上の例は,SとPが近づく場合を考えましたが,離れる場合は
符号が変わるだけです。
静止しているときは v=0 や u=0 とすればいいことになります

ドップラー効果は,波源と観測者が相対的に近づくか,離れる場合
に起きます。
共に動いていても,その間隔が変わらなければドップラー効果は起
きません。
実際に電車の警笛などで観測することができます。
電車が警笛を鳴らしながら近づくときは高い音として聞こえますが,
通り過ぎた直後から低い音になります。
みなさんも,実際に実験してみるとわかると思います。
でも,そのときに観測しやすい位置として真正面で聞かないように
して下さい。
近づくときの音を観測することはできますが,遠ざかる音は観測で
きません。
(だって,轢かれて死んじゃってますからね・・・)

ドップラーが,この現象の実験をした頃には電車などありませんで
した。
馬を走らせ,ラッパを鳴らして観測したそうです。

ドップラー効果は音波だけでなく,波の性質があれば光波や電磁波
でも生じます。
テレビの野球中継ではピッチャーが投球した直後に,画面のスミに
球速が表示されますが,これはキャッチャー側からスピードガンと
いう装置で電磁波を送っていて,ボールに反射してもどってきた電
磁波の振動数を計測し,コンピューターで瞬時に解析しています。
これもドップラー効果を応用しています。



ドップラー効果の実験をするときは,轢かれないようにしましょう。



今回はここまでです。


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