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物理の「なぜそうなのか?」を分かり易く説明します。なるべく数学を使わない定性的な物理です。物理の基本を理解したい受験生や曖昧に覚えている箇所を正しく軌道修正したい受験生のためのメルマガです。力学、波動学、電気学の順に配信し、9月からは磁気学、熱力学です。

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2008/06/16

理系受験生のための基礎物理    第29号

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◆◆◆==== Basic physics ====================

         理系受験生のための基礎物理    第29号

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 ■ 「万有引力」について  (1)

前回までは一般的な物体の円運動についてのお話でしたが,
今回から少しスケールの大きい話になります。
学校の教科書では,円運動の次に単振動になっているものも
ありますが,万有引力も単振動もどちらも円運動に関係します
ので,順序はそれほど問題ではありません。
ただ単振動は運動が,より複雑になりますので,このメルマガ
では後日配信することになります。

さて,「万有引力」という言葉はみなさんも知っているように,
宇宙に存在するすべての質量のある物体どうしが互いに引き合っ
ている力です。
宇宙というと,私達の日常からかけ離れているように思われま
すが,私達の地球も宇宙の一部ですし,私達の生活空間そのもの
も宇宙の一部です。
ということは,私達全てが引き合っています。
(男どうしで引き合うのはキモイですが,仕方ありません)

万有引力の大きさは,質量の積に比例し,中心間距離の2乗に
反比例します。
質量 M〔kg〕,m〔kg〕の物体どうしが距離 r〔m〕離れ
ているときにはたらく万有引力の大きさ F 〔N〕は

    F = G (Mm)/(r^2)   です。

 G は万有引力定数で,約6.67×10^(−11)〔(Nm^2)/(kg)^2〕

何故このような式になるかは,ニュートンによって数学的に証明
されたのですが,(話が前後しますが)ニュートンより以前にケプ
ラーが惑星についての3つの法則を発見しました。
(ケプラーの法則については,後日配信します)
ケプラーは惑星の運行の「法則」を見つけたのですが,どうして
そのような法則になるのかについてまでは踏み込めませんでした。

その後,ニュートンが運動の法則と万有引力の式を用いて,惑星が
ケプラーの発見した法則で運行するためには,太陽と惑星の間に
F=G(Mm)/(r^2)となる力がなくてはならないことを数学的に
示したのです。
(この証明は非常に難解です)
さらにキャベンディッシュという学者によって,実験室内での実験
から万有引力定数 G が 約6.67×10^(−11) であることが実測
されました。

この値からわかるように,G の値は桁数が 10^(−11) ですから
非常に小さいものです。
私達の体重を,仮に50kgだとして,2人が1m離れているときにはた
らく万有引力の大きさは,約1.7×10^(−7)〔N〕となり,非常に
小さい力ですから人間の感覚ではわかりません。

でも,この万有引力が目に見える現象となって現れるものがあり
ます。
そのひとつは海の潮の満ち引きです。
これは地球と月との万有引力で海水が引かれたりしているのです。
(発行人ケンは,中学の理科の授業で,この話を聞いたとき,宇宙
 の力が目に見える現象として現れていることに感動しました)

G の値は小さくても質量が大きければ万有引力も大きくなります。
私達一人ひとりの質量は小さくても地球の質量はとてつもなく大き
いです。
(地球の質量は 約6×10^(24)kgです)
地表にある物体(私達も含めて)は,地球と万有引力で引き合って
いますが,地球のほうが質量がバカデカイ(重い)ので,軽いほうの
私達が地球に向かって動いていきます。
これが地表の物体にはたらく重力による「落下」です。

重力は,地表の物体と地球とが引き合う万有引力の片方の力です。
正確には,地球が自転していますので私達自身も地球とともに円
運動(加速度運動)していますから遠心力がはたらいています。
地表の物体にはたらく重力は,正しくは「万有引力と遠心力との
合力」です。
でも,そこまで考えると少し複雑になるので,このテの問題では,
ふつう地球の自転を無視して考えます。

地表にある質量 m の物体にはたらく力について考えてみましょう。
地表の重力加速度 g で表すと

         mg   ・・・・・・・・・・(*)

              です。

また地球の質量を M ,半径を R の球体とすると
(地球の質量が地球の中心に集中しているとして)
地表の物体にはたらく万有引力は

     G (Mm)/(R^2)  ・・・・・・・・・(**)

              です。

(*)式と(**)式は表現の仕方が違うだけで,実は同じ力を表してい
ますから

      mg = G (Mm)/(R^2)   となり,

両辺を m でわると

      g = (GM)/(R^2)  ・・・・・・(***)

                   となります。


【注意】
 (**)式を求めるときに,地球の質量が地球の中心に集中して
 いるとして考えましたが,現実的には地球全体に質量があり
 ます。
 これは高校範囲を超えてしまうのですが,地球のある微小
 部分と物体との万有引力を考え,別の微小部分との万有引力
 を考え,地球全体の微小部分についての万有引力として合力
 を計算します。
 地球の体積全体について積分するのです。
 すると地球全体からの合力は,地球の質量が地球の中心に集中
 している場合と同じになるのです。



(***)式はとても意味のある式です。
重力加速度 g の値は 約9.8 です。
万有引力定数 G の値はキャベンディッシュの実験より
 約6.67×10^(−11) です。
ということは,地球の質量 M の値がわかれば地球の半径 R が
わかります。
逆に,地球の半径 R がわかれば地球の質量 M がわかります。
現在,地球の質量や地球の半径はわかっています。
どうやって測ったのでしょう。


現代の科学では人工衛星の衛星写真から地球の半径を正確に調べる
ことができますが,実は,今から2000年以上前の紀元前約220年頃に
既に地球の半径は測定されていました。
今回は,ついでにこの話をしましょう。

アフリカのエジプトにアレキサンドリアという都市があります。
かつて古代には,ここに多くの学者達が集まっていろいろな研究
をしており,多くのパピルス(古代の紙)の書物が蔵書されていた
図書館がありました。
(この図書館は歴史的に焼き討ちに合い,全てのパピルスは焼失
 してしまいました)
ここで館長をしていたエラトステネスという人がいました。
あるときエラトステネスの読んだパピルスの中に
「シエネ(現在のアスワン地方でアレキサンドリアより南にある町)
 では,夏至の日の正午に,垂直に立てた棒の影がなくなる」と書い
てありました。
そして井戸の底に太陽が映るというのです。
つまり,シエネでは夏至の日の正午に太陽が真上に来るというのです。

そこでエラトステネスはアレキサンドリアでも同じことが起きるか
実験したところ,棒に影ができました。
エラトステネスは考えました。
「もし地球が平らで,太陽がかなり遠くにあり,太陽の光が平行光線
 で来るとしたらアレキサンドリアでも同じことが起きるはずだが,
 アレキサンドリアの棒に影ができたということは,地面は曲がって
 いるのではないか?
 地球は丸いのではないか?」と・・・・

地球が丸いとすると,シエネの棒とアレキサンドリアの棒の延長線は
地球の中心で交わります。
このとき棒の先端と影の先端を結ぶ線が棒となす角は,

        |\
        |↑\
        |  \
        |   \
        |    \
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
平行線の錯角の関係より,シエネとアレキサンドリアで垂直に立てた棒
の地球中心方向へ延ばした延長線のなす角です。
つまりシエネとアレキサンドリアを弧の両端とする扇形の中心角です。
エラトステネスは人を使ってアレキサンドリアからシエネまで歩かせて,
その距離(弧の長さ)を測らせました。
そして地球の半径を約7400kmと算出しました。
現在わかっている地球の半径は約6400kmです。

今から2000年以上も前の測量技術や測定誤差を考慮すると,約7400kmと
して計算されたということは,ほとんど正確に答えを出していたという
ことです。
昔の人はすごかったんですね。




Google Earthで地球を見ると,空気がベールのようになっています。
普通に生活していると,空気はかなり高いところまであるような気が
しますが,実際にはとても薄い層です。
また,カイロの近くのピラミッドを見ると,底辺の4辺が正確に東西南北
に作られているのに感動します。
スフィンクスも太陽が昇る真東を向いています。



今回はここまでです。


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