2009/10/03
最近の為替動向について
9月28日、外国為替市場で米ドル・円相場は円が1ドル88円台前半まで上昇。 8カ月ぶりです。 米国の金融緩和が長引くとの見方で投資家が円買いに走ったのです。 これに加えて、藤井裕久財務相の発言も大きな影響を与えています。 藤井財務相は28日朝、「(円相場の)トレンドは異常でも何でもない」と発言。 これによって、91円40銭台の円が88円前半まで急上昇したのです。 藤井財務相はそれ以前にも「安易に円売り介入はしない」と発言しています。 28日正午には「やや円高に偏ってきている」と牽制しました。 円は89円台後半まで戻ります。 さすがにこれではまずいと思ったのでしょう。 同日の講演会では「円高是認とは言っていない」、講演会終了後には 「(為替介入について)それは言うべきことではない」と言っています。 翌日午前、記者団に対しては「異常な事態になれば(介入など) いろいろなことがあり得る」とこだわりだしています。 続いて同日午前の閣議後の記者会見では、「(相場が)異常に動いたら 国益のためにしかるべき措置を取ることもあり得る」と言っています。 私にすれば今、異常な事態ではないですか?とお聴きしたいぐらいです。 彼の指南役であり、ミスター円と呼ばれた榊原英資氏も、27日のテレビ番組 の中で円高容認発言をしています。 彼の影響が大きいのではないかと推測します。 藤井財務相はこのほかにも円高容認発言をしています。 「緩やかな動きなら介入に反対」(9/16) [人為的な通貨安定策はおかしい」(9/28) 外国為替市場の通貨の動きは為替デーラーたちによって人為的に操作されて います。 人為的に操作されているものを、人為的に修正することは問題のあることでは ありません。 過去に日本は幾多の円高阻止のための介入をしているではありませんか。 円高容認発言をした榊原氏も行いました。 また、多くの諸外国も自国通貨や自国民の生活を守るために介入しています。 藤井財務相は自身が財務相という地位にあり、要人であるという自覚 に欠けているとしか思えません。 自分が発言をすれば市場にどういった影響が出るかということを認識していない と言えます。 理想論だけでは経済は成立しません。 28日は円高によって東京株式市場でも業績不安から輸出関連企業の 株価が下落。 輸出関連企業の株価だけでなく、日経平均も下落し、株式市場が縮小したのです。 終値は256円安でした。 野村証券の発表した国内400社の09年度の経常見通しは前期9.5%の減。 円高による日本の景気に与える影響は極めて大きいのです。 昨年12月、日本の輸出企業は血のにじむような思いで、円高に対して 経費の抑制を推進しました。 こうした努力を理解していないのでしょうか。 企業の想定為替レートは93円台から97円台ぐらいだと思います。 1円円高になると利益への影響は大きなものです。 トヨタ自動車は、円高が1円進むと半期ベースで米ドルでは200億円、 ユーロでは30億円、その他通貨では2000億円の営業利益が失われると 言います。 対米ドルで円高になると、すべての通貨で類似した動きになるのです。 米国の消費に依存した経済を是正するという意味で藤井財務相は発言した と思いますが、米ドルは世界の基軸通貨です。 諸外国との商取引での支払いの80%は米ドルで行われるのです。 藤井財務相の発言はあまりにも不用意と言わざるを得ません。 民主党の考えは内需主導の経済成長を目指し、輸出産業保護のための 通貨切り下げ競争とは距離を置くとしています。 グローバル化した現在、多くの製造業は輸出に依存しています。 なぜ、地方から製造業が海外移転をしたか民主党は理解していないんでしょうか。 日本の総人口の50%の人間が3大都市圏に、なぜ集まってきているか 理解していないんでしょうか。 民主党の号令一下、明日から日本は内需主導の国に変わっていくんでしょうか。 日本は人口減少、したがってパイが小さくなっていきます。 内需だけでは苦しいものがあります。 1973年、日本の円は変動相場制に移行しました。 それ以前の対米ドル価格は1ドル360円。 9月30日午後4時5分現在、円は89円60銭~65銭。 固定相場制の時代から考えれば4分の1以下です。 ということは、単純に考えれば日本の人件費も4倍になったということです。 人件費は当然のことながら製造品の価格に反映されます。 これでは中国との輸出競争には勝てっこありません。 海外へ工場を移転するのは当然のことです。 エルピーダメモリ、この企業の名前を聞いたことがあるでしょうか。 日立製作所とNECのDRAM事業を統合して1999年に発足した会社です。 DRAMというのはパソコンなどの記憶媒体に使用される半導体です。 エルピーダは国内唯一のDRAMメーカー、DRAM業界では世界第3位。 しかし、生産過剰、この不況で需要低迷などにより 価格が暴落、これにより1788億円の連結最終赤字となってしまいました。 エルピーダの坂本社長の考えたことは台湾企業との統合です。 台湾企業と統合すれば、台湾当局の支援も受けられます。 台湾当局の支援の条件の中では、エルピーダ側の技術やソフトの提供が 含まれています。 坂本社長は台湾当局に説明すべく台湾に出かけます。 そこへ坂本社長の後を追うように日本の経済産業省の職員が駆けつけ、 この話はペンデング(保留)となったのです。 この間のことはNHKで放送されました。 日本では世界同時不況の経済対策として改正産業活力再生特別法が昨年成立。 その第1号としてエルピーダは認定されました。 日本政策投資銀行が300億円を出資、官民総額では1600億円の 資金支援を受けられることが決まったのです。 坂本社長の持論は、DRAM業界トップの韓国のサムソン電子と エルピーダを軸とした世界2強体制の確立です。 これを最終レースと考え、価格もある程度安定すると考えています。 そのためには日本の技術やソフトを海外に持ち出しても構わないと考えています。 企業の業績には為替動向が大きくかかわっています。 技術やソフトの進化だけでは国際競争に勝てないのです。 いままでも技術やソフトの海外流出、さらには頭脳流出が叫ばれてきました。 為替動向以外では、政府の法規制、税制、産業保護のあり方がきわめて 問題です。 これ以上国内産業が空洞化にならないためにどうするか、 政権与党である民主党も薄っぺらな論理を振り回さずに、 日本の現状を見据えて考えるべき時期に来ているのではないのでしょうか。


