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2009/01/17

通 貨   その1

  
昨年の12月12日、91円半ばから始まった対米ドルの円相場は、
午後12時ごろから突然上昇をはじめ、13時30分ごろには
88円台に突入。
13年4ヵ月ぶりの高値です。
米自動車大手救済法案が米上院で合意に至らず廃案となった
情報が伝わった直後でした。
株式市場においても、日経平均は600円を超える下げを記録。

同日13時45分ごろ、財務省の篠原財務官の「マーケットの状況に
応じて適切に行動する」というコメントが市場に伝わり、円売り介入の
警戒感が広がりました。
米ドルは買い戻され円は89円台まで下落。
14時ごろには中川財務相の円高けん制発言も市場に伝わり、
さらに円は下落。17時過ぎには90円台前半まで下落しました。

日本の現在の不況は、サブプライム問題に端を発した金融危機、
世界同時不況に伴う不況です。
加えて、円高不況でもあるわけです。
需要の低迷から単にモノが売れないだけでなく、輸出大国である日本は
円高により利益が減少します。
円は米ドルだけでなく、ユーロ、ポンド、豪ドル、ウオン、カナダドル、
スイスフランなどすべての通貨に対して野中の1本杉のように独歩高です。

昨年3月、米金融不安で1ドル98円台まで米ドルが急落。
同様に、ユーロに対しても急落したのです。
米証券大手ベア・スターンズの経営危機が表面化し、世界的なドル安、
株安に歯止めが利かなくなった時期でした。
米国は日欧の通貨当局とドルの買い支えの協調介入を画策しましたが、
実施には至りませんでした。
このときは秘密合意と言われています。
基軸通貨としての地位を米ドルが失えば、各国の通貨ベースで
物の売買を行うことになります。すると通貨戦争的な様相を呈する
ことになります。
現在の各国の通貨の地位や価値は、米ドルが基軸通貨として存在している
から保たれています。
米国にしても同じことが言えます。
ドルの力が弱まることは自国の凋落を意味します。
双子の赤字(財政赤字、貿易赤字)と家計の赤字は、米国債権を
他国が購入していること、他国からの投資が行われていることで、
何とか平穏に保たれてきました。

協調介入は過去に何回も行われました。
主なものを上げますと次の通りです。
・85年10〜12月 円買い介入(プラザ合意を受けてドル高修正)
・87年3〜4月  円売り介入(ルーブル合意を受けて円高修正)
・88年12〜88年1月  円売り介入(ブラックマンデーによるドル安阻止)
・95年3月    円売り介入(円高・ドル安阻止)
・95年8月    円売り介入(円高・ドル安阻止の継続)
・98年6月    円買い介入(アジア通貨安を招いたドル高・円安進行
を阻止)
・00年9月    ユーロ買い介入(ユーロ安を阻止)

こうして過去の協調介入の歴史を見ると、米ドルと円が絡んだ介入が主です。
人によっては米ドル、ユーロ、ポンドを世界三大通貨といいますが、一般的
には米ドル、ユーロ、円を世界三大通貨といいます。
バブル崩壊によって落ちぶれたとはいえ、世界が日本をいまだに経済大国
と認知している所以です。

米国主導で画策された3月の協調介入、しかし、結局その後も実施されず、
現在に至っています。

昨年の3月以降、円は平穏を保ち8月には110円台でしたが、
9月に入ると105円台となり、円高傾向が再燃します。
10月27日には、G7の財務相・中央銀行総裁が「円の過度の変動を
懸念する」と異例の発表。
しかし、その後も円高傾向は変わらず12月12日の88円台に至ったのです。

その5日後の12月17日、ついに米ドルは86円台に急落。
翌18日も86円台でした。
これは、12月16日に米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和を行った
からです。
金融緩和の内容は政策金利を0.0〜0.25%に引き下げ、市場のマネー
を増やす量的緩和を宣言、即日実施したのです。
この措置により日米金利の逆転が起こり、円が買われたのです。

これを受け、日銀は12月19日、金融政策決定会合を開催し、政策金利を
0.	3〜0.1%に引き下げて即日実施。
併せて、長期国債の買い入れ増額やコマーシャルペーパーの買い取りなど
を行うことを決めました。
コマーシャルペーパーとは、信用力のある優良企業が短期の資金調達の
ために発行する無担保の約束手形のこと、CPとも言います。

この日銀の対応によって徐々に米ドルは回復。円高は解消されつつ
あります。
現在では90円台前半を維持していますが、予断を許しません。
というのは、政策金利などはFRB,日銀双方同等の対応と
言ってよいでしょう。
しかし、ターム物の金利が違うのです。
ターム物とは、金融機関同士の資金の貸し借りを行うコール市場で
1年未満の期日で決済する取引です。
FRBより日銀の決定した金利の方が高いのです。
もう一つ懸念されることは、何と言っても米国の実体経済の動向があります。
雇用統計などの結果が悪ければ円高要因にもなります。
このため、円高が進みやすい状況にあるといえます。

米国発の金融危機ということで、昨年前半から米ドルは日欧などの通貨に
対して安くなっていました。
そうした状況の中でも買い支える者もいました。
基軸通貨であるということと米国に投資しているという理由からです。
代表的なものとしてあげられるのがオイルマネーでしょう。
しかし、12月のFRBの金融政策を受けて米ドルは急落したのです。
ゼロ金利政策で米ドルに投資する魅力が薄れたうえに量的緩和で
米ドルの需給が悪化するのではないかという懸念が急速に
高まったからです。

日本の米国に対する債権はドルベースで購入しています。
他に債権大国としては中国があげられるでしょう。
当然、中国もドルベースで購入しています。
こうしたことから、日本や中国は為替介入を避けられないだろう
という観測があります。

98年の日本企業は少なくとも100円台と想定していたはずです。
それだけに80円台、90円台は予想外だったでしょう。
それに耐えきれず、現在では海外市場において値上げに踏み切る企業も
出てきています。
これにより日本企業の競争力は落ちます。

昨年12月22日、2009年3月期の連結営業損益が1500億円の
営業赤字となると発表したトヨタ自動車。
車が売れないだけではありません。
ここにきて下期の米ドルの為替レートを100円から93円、ユーロは
130円から123円に変更。
円高が1円進むと半期ベースで米ドルでは200億円、ユーロでは
30億円、その他通貨では2000億円の営業損益が失われるといいます。
そのため販売費や製造コストなどすべての費用の見直しを進め、
経費の抑制に努めている現状です。
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