帰去来亭からの便り  RSSを登録する

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2008/12/27

宝   船  その1

いよいよ今年も押し迫ってきました。
光陰矢のごとしといいますが、月日の経つのは速いものです。
もうすぐお正月。
あなたは何回目のお正月を迎えますか?

お正月には多くの家庭内行事や風習がありますよね。
例えば門松や注連縄(しめなわ)類(こちらでは玄関に飾る藁で
編んだ中央にミカンをつけたすだれ状のものを正月様と呼び、
やはり藁で途中まで縄状に編み、そのままたらしたものをゴボウじめ
と呼びます)を飾ります。

歳の神が元旦に訪れる当たり、門松は目印であり、
注連縄(しめなわ)類は結界を表すといいます。
歳神(としがみ)は実りの神です。
一年の豊作を祈願し、家の繁栄を願うために歳神を丁重にお迎えします。
歳神が逃げないように注連縄類は飾られ、玄関、神棚、座敷、
水回りなどあらゆるところに飾ります。
また、注連縄類は縄状に編むことから代々家が繁栄し、子々孫々まで続く
ことを意味するそうです。

鏡餅も飾りますよね。
床の間に日の出や鶴亀などの縁起の良い掛け軸を掛け、その前若しくは
神棚に鏡餅を飾ります。
三種の神器とは天皇が即位をする際に代々伝えられるもので、
八咫鏡(やたのかがみ)、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)、
八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)のこと。
この三種の神器には神が宿っているといいます。
つまり、鏡餅の鏡にも神が宿るという意味があるのです。
餅も同様に稲の霊が宿るところとも言われ、訪れた歳神は
この鏡餅に宿るのです。
鏡餅を割って汁粉などにして食べる鏡開きは正月11日の行事です。

他には初詣に出かけたり、初日の出を拝んだり、福茶や屠蘇(とそ)、
それに雑煮など頂きます。
福茶というのは地方ではあまり習慣がありませんが、元旦に若水
(元旦早朝に酌む水)を沸かし、結んだ昆布と小梅を入れた湯呑に
煎茶を注ぎ飲むものです。
新年を祝うものであり、縁起ものとも言えるでしょう。
屠蘇はお屠蘇ともいい、家族で新年のあいさつを交わし、屠蘇器で
屠蘇を飲みながら病気をしないよう祈り、歳を一つ重ねたことを祝います。
元来は屠蘇散(大黄(だいおう、宿毒を輩出させる)、附子(ぶし、
代謝機能を活性化させる)、桂皮(けいひ)、和山椒、桔梗などが
入っています)を入れたものでしたが、最近ではお酒のことを指すようです。
ですから人によっては、いや〜、お屠蘇を飲み過ぎてしまってね、
なんて言う方もいます。

さて、前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、今日お話しするのは宝船。
正月2日の夜、枕の下に宝船の絵を敷いて眠るとよい夢を見るといいます。
これが初夢。
江戸の商人は大みそかの夜が明けるまで商売に追われ、
初夢など見る暇がなかった。
ハッつあん、クマさんへの借金の取り立てだったでしょうか。
ですから2日の夜見る夢を初夢といったそうです。
夢は見るものではなく叶えるものだというお話は、今日は端においておきます。

縁起物を枕の下に敷いてよい初夢を見るという風習は、
室町時代から始まったと言われます。
元来、「なかきよのとおのねふりのみなめさめなみのりふねのおとのよきかな」
(永き世の遠の眠りのみな目ざめ波乗り船の音のよきかな)
という上下どちらから読んでも同じ回文歌を敷いて寝たのが初めとのことです。
宝船になったのは江戸時代。
この宝船の絵からは回文歌のごとくのどかな波の音が聞こえてきそうです。

五条天神は京都の四条駅から約10分、住宅やビルに囲まれた一角に
あります。
祭神はオオナムチノミコト(大己尊命)、スクナヒコナノミコト(少彦名命)、
天照大神(あまてらすおおみかみ)です。
オオナムチノミコトは大国主命(おおくにぬしのみこと)のこと。
この神社で節分に出される宝船の絵は、船に稲穂が1本あるだけの
素朴な図柄です。
この宝船の絵は日本最古の宝船の図と言われています。

祭神である大国主命とスクナヒコナノミコトのことを考えると、古事記の話が
浮かんでまいります。
もっとも、この話はほぼ同様の内容で日本書紀にも載っています。

ある日、大国主命はお伴のものを連れて出雲の三保の岬に出かけました。
見ると、こちらに向かって小さな船がやってきました。
天(あめ)の蕹藦船(かがみぶね)です。
蕹藦船とはガガイモを二つに割って作った船です。
船には蛾の皮を着物にした小さな神が乗っています。

大国主命は名を尋ねたが、小さな神は微笑んでいるだけで答えません。
お伴のものも、だれも顔を知っているものはいませんでした。
そこで、物知りのクエヒコ(崩彦)を呼んで聴くと、カミムスヒノカミ(神産巣日神)
の御子のスクナヒコナノミコトであると教えてくれました。
大国主命が高天原(たかまがはら)のカミムスヒノカミに問い合わせると、
自分の子である。大勢いる子どもたちの中で、この子はあまりにも小さかった
ので、自分の指の間からもれて抜け落ちてしまった子だと答えました。
続いて、スクナヒコナノミコトに対して、大国主命と兄弟となり、葦原中津国
(あしはらなかつこく)の建設に力を尽くすよう命じたのです。

五条天神の宝船の絵は、スクナヒコナノミコトが三保の岬にやってきた時の船を
表現しています。
だから、船に稲穂が一本乗っているだけの素朴な図柄なのです。
関西では、初夢は今でも節分の日に見る夢を言うそうです。
冬から春に変わる夜の夢に神のご託宣があると考えたのです。
五条天神の宝船の絵も節分に配られるのもそのためなのです。
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