テレビ動物園
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テレビ動物園
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[第19号 2008年7月21日]
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■「テレビの中の格差」
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『理由ある太郎』(フジテレビ)を見た。
格差社会というが、テレビの中もまた露骨な格差社会である。お笑い芸人がプレ
ゼンして、ゲスト解答者がそれに答えたりつっこんだりするという形式の情報な
いしバラエティー番組を最近よく見かけるようになったのだが、そうした番組は
形式的にせよ、見下す方=ゲストと見下される方=プレゼンターという出演者の
権力関係を露骨に示し、ご丁寧にもそれが逆転不可能であるということまで示し
ている。
かつて、この形式で深夜からゴールデン進出を果たした番組が『クイズプレゼン
バラエティー Qさま!!』である。現在はクイズ番組に見えるこの番組だが、かつ
ての番組の構成は、そこそこ困難なゲームにお笑い芸人たちが挑戦してそれをプ
レゼン=報告し、ゲストの評価によってポイントを稼ぐというものであり、ポイ
ントがたまると一回だけ司会を担当でき、逆にペナルティが貯まると罰ゲームを
くらうことになっていた。
通常の司会は優香とさまぁ〜ずである。彼らは司会だが、番組ファミリーとして
以前はゲームにも積極的に参加していた。
ただし、優香とさまぁ〜ずは露骨に優遇され続けている。私は一視聴者に過ぎず、
芸能界の事情など知るよしもないが、そんな私でもホリプロの威光を感じてしま
うほど、露骨な優遇である。
端的にいえば、さまぁ〜ずも優香も番組をおもしろくすることにはほとんど貢献
できていなかったのだ。おもしろくすることが期待されていない優香はともかく、
さまぁ〜ずはそもそも若くないので体力もなく、かといって一発ギャグでもコメ
ントでも気の利いたことは言えない。さまぁ〜ずは年長であるということだけで
威張り、優香は無批判にチヤホヤされているように見えた。
お笑い芸人の方は競争にさらされている緊張感と真剣さからか、おかしさの平均
点が高い。アンタッチャブル柴田やロバート秋山のリーダーシップや配慮という
コミュニケーション能力の高さや青木さやかや南キャンしずちゃんのキャラクター
造形力=演技力の高さなど、さまぁ〜ずと優香がいなければ、むしろもっとおも
しろくなるのは明らかだった。
で、話を戻す。ある時、プレゼンでポイントを稼いだロバートは実際に司会権を
獲得した。すると、さまぁ〜ずはしきりにくさしたものの、全く問題なくこなし
てしまったのである。さまぁ〜ずが不要であることがそれこれ露骨に明らかになっ
てしまったのだ。
そして、どうなったのか。番組はさまぁ〜ずを取り、おもしろさを捨てたのであ
る。間もなくして、番組は連帯責任で時間制限のあるクイズに挑戦するという企
画を番組の柱にして、そればかりやるようになった。これとて当初はさまぁ〜ず
が明らかに足をひっぱっていたし、優香は頑として参加せずに済ませている。視
聴率が高いからこの企画ばかりやっているのだろうが、結果としてさまぁ〜ずと
優香は絶対安全の地位に安住することに成功したのだった。
おもしろさよりも芸能界における序列や権力関係を優先した番組づくりがまかり
通っているのである。それはもちろん今に始まったことではない。しかし、素人
の私でも見えてしまうぐらい露骨な今日この頃なのだ。
今回見た『理由ある太郎』も『トリビアの泉』の後景である『ザ・ベストハウス
123』によく似たプレゼン系番組である。お笑い芸人がプレゼンし、ゲストの評
価に応じてギャラに上積みがなされる仕組みである。
プレゼンターは司会やゲストによって露骨にあしらわれ、見下され、「がんばっ
ているのに空まわってしまうおかしさ」が笑いの種として提供される。
だが、やはりおかしい。そこで紹介される情報を別にすれば、視聴者を楽しませ
てくれるのは、ゲストではなく、ましてや司会の内村光良でもなく、お笑い芸人
である。実際にギャラがどう支払われているのかは知らないが、見下す側と見下
される側の立場は完全に固定されており、行き来できるようには見えない。
しかし、よく考えると、そのタレントがどうしてそこにいるかという根拠は薄弱
である。10年前、篠原涼子はどちらにいたのか。浜田雅功の妻でなければ小川菜
摘が現在のようにのさばっていられるのか。千秋がゲストにいると、違和感すら
おぼえてしまう。
結局、能力や実績以外の、タレント本人が関与しないところで、そして視聴者不
在のうちに何らかの権力関係ができてしまい、そうした芸能界やテレビ界内部の
論理を優先したために、おもしろさが減殺されてしまった番組が垂れ流されてい
る。
とんねるずあたりが源流だろうが、こうした楽屋落ちに通じているのが通なテレ
ビの見方であるというような勝手な思いこみが視聴者に広まって久しい。そうし
た態度は建設的なテレビ批評となりうる可能性もはらんでいたのだが、現実には
そうなりえなかった。
マニア的な競争心はテレビのあちら側に立ちたいというマニアの気分を煽ったに
過ぎず、あくまで外部に立って自分の違和感に誠実に向き合おうとする視聴者は
実際にはほとんど生まれなかった。
そして今、テレビの中にあるのは非生産的な過剰競争社会とその結果としての格
差社会の縮図である。誠実さや努力や能力が既存の権力者によって過小評価され、
結果として活躍の機会を奪われ、不安定な立場に追いやられる。お笑い芸人の苦
労話など、少しも美談ではない。
バラエティー番組は、このような文脈ゆえに「教育に悪く」なりうる。番組の内
容以前のところで教育に悪い。だから、同じような理由で、男性メインキャスター
と女性アシスタントという枠組みを崩さない報道番組や、年長者の気分次第で年
少の女性をよってたかって集団で叩く「渡鬼」も教育に悪い。それらと比べれば、
『ロンドンハーツ』なんて大して「教育に悪」くはないのだ。
(了)
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