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さすらいの一般人の書き下ろしメディア批評コラムです。論評の幅を広げるべく、旧称「テレビ動物園」から改称しました。業界とは縁もゆかりもない無責任一本勝負でよろしくお願いします。

  • 発行周期 週刊
  • 最新号 2009/12/07
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2009/10/12

ロン・ピョウ

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          ロン・ピョウ
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[第83号 2009年10月12日]
 
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■「天才」
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お勉強だけでなく、お笑いの世界にも天才と秀才がいる。M-1王者になるのはた
いてい秀才だ。もとより才能はあるが、さらに努力を上積みした人たちが勝ち上
がっているように見える。

本当の天才は才能だけで十分にやっていけてしまう人だ。あふれるばかりの才能。
素だけで十分おかしいお笑い芸人だ。

例えば、狩野英孝。芸もおかしいが、それ以上に素がおかしい。しかも、本人は
そのことに気づいていない。だから他の芸人にいじられてしまい、しきりに戸惑
う。さすが天才。スケールが違う。

キングコングとか今田耕司は秀才だ。才能も豊かだが、素の彼らに笑気がみなぎっ
ているわけではない。タカアンドトシも秀才だろう。ブラックマヨネーズの小杉
は天才肌だが、やはり秀才だと思う。

いずれもいるだけでおかしいレベルの天才ではない。

顔だけでいえば、笑福亭鶴瓶や(お笑いではないけど)大泉洋は天才だ。彼らの
顔からは常に笑気が立ちのぼっている。

とある外国での話。ある映画で鶴瓶が出てきただけで観客は爆笑したという。

大泉の顔は、欽ちゃん激似(特にコント55号全盛期の欽ちゃんとは同一人物レベ
ルの似かただ。DVDなどで確かめてほしい)というアドバンテージを差し引いて
も笑気にあふれている。ねずみ男は極めて適任だ。

お笑いの話に戻る。東の横綱が狩野英孝なら西の横綱は椿鬼奴だ。

先日の『アメトーーク』(テレビ朝日)の「椿鬼奴クラブ」(椿鬼奴が気になる
芸人が集まって椿鬼奴を語る企画)でその思いを強くした。

37歳、趣味パチンコ。一人で(アイドルの)MAX四人分を真似して踊る鬼MAX。改
めて見るとずいぶん変な踊りと歌だと気づかされる。そのくらいていねいに歌っ
て踊っている。

普通の37歳にこれはできない。拝みたくなるくらい大したものだ。

しかも、真似自体が世間に対する批評にもなっている。

変な振り付けで歌って踊る。同じことをMAXがやると拍手で迎えられ、椿鬼奴が
やると笑いで迎えられる。実は変な踊りと歌を見ているこちら側が問われている
のだ。

そもそもMAXだっておかしい。郷ひろみだってどんなに芸を磨いても笑われてし
まう。そして本人は本気で悩む。MAXも郷もうすうす気づいているかもしれない
が、要は文脈の問題に過ぎない。

観る側がその気になるか、ならないか、それだけの問題なのだ。乱暴にいえば、
歌番組に出てCDを売り出せば歌手、お笑い番組で歌って踊ればお笑い。それだけ
だ。

例えばSMAP。歌の技術はどうだ。のど自慢チャンピオン、いや、そこらへんの学
校の文化祭と比べてどうだ。何をか言うまでもない。

視聴者の問題だ。「王様は裸だ」と言えないから、下手な歌を聞かされ続け、下
手な芝居を見せられ続けるのだ。自業自得。

椿鬼奴は素が怖い。よくわからないから怖い。ご飯の代わりに発泡酒を飲むから
炊飯器は要らないらしいし、腐ったものも電子レンジにかければなんとかなると
思っているらしい。

素の得体の知れなさをうまく活かして笑わせる技術もあり、そのへんはさすがに
プロなのだが、そんなのどうでもよいと思わせるくらいにわけがわからない。もっ
とも、説明できないからこそ天才なのだとも思う。

狩野英孝も椿鬼奴も自分の天才っぷりを自覚していないところが重ねて天才らし
い。特に椿鬼奴はいい歳して全く「いい歳」感がなく、テレビのこちら側から観
ても普通な感じが全くないのがすごい。

休日は本当にくわえタバコでパチンコしているだけだし、異常な猫舌だし、話が
散漫に過ぎて番組進行が滞ってしまう。演技とか素とかそんなのはもはやどうで
もよい。隣で椿鬼奴をいじっているつもりの藤井隆が素人に見えてしまうくらい
のスケールだ。

天才が不遇というのはよくある話だ。ただ、椿鬼奴は不遇くらいがちょうどよい
かもしれない。強烈すぎるのだ。

(了)


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