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さすらいの一般人の書き下ろしメディア批評コラムです。論評の幅を広げるべく、旧称「テレビ動物園」から改称しました。業界とは縁もゆかりもない無責任一本勝負でよろしくお願いします。

  • 発行周期 週刊
  • 最新号 2009/11/09
  • 部数 28部
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2009/05/04

テレビ動物園

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          テレビ動物園
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[第60号 2009年5月4日]
 
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■「わかる人、わからない人」
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久しぶりに再開した『桑田佳祐の音楽寅さん』(フジテレビ)を見ている。

ユースケ・サンタマリアは現在のテレビ界で最強のお調子者だ。今すぐ太鼓持ち
の家元になれるくらいの天才だと思う。

この番組は桑田佳祐が音楽で遊び、その音楽遊びを視聴者が見て楽しむというも
のだ。桑田の音楽遊びっぷりが見事なので、それ自体満足なのだが、でもユース
ケは欠かせない。

実のところ、素の桑田の毒はテレビでは解毒しきれない。エロや政治の毒が過ぎ
るし、ときにセクハラともなる。芸術家が言いたいことを言い、やりたいことを
やってしまうには、今のテレビは窮屈すぎるというわけだ。

そこで道化のユースケの出番となる。笑いにくるんでしまえば、桑田の毒が生や
さしく見える。伝わる人には伝わり、伝わらない人には伝わらない。考えるな、
感じろ。それでよい。

さて、ユースケの太鼓持ち芸の精進の場だった『ぷっすま』(テレビ朝日)は草
なぎ剛の不祥事で存続の危機にある。草なぎをかばうつもりはないし、とがめて
責めるつもりもない。でも、『ぷっすま』はぜひ存続して欲しい。見てないけど。

草なぎといえば、謝罪会見で「中居くん、木村くん、吾郎さん、慎吾」という風
に面々を呼んでいた。年功序列でいえば、中居や木村の方が年上なのに「吾郎さ
ん」。少し気になった。

この序列、わかる人にはわかるのだろうか。わかる人、教えてください。

さて、私が見た『音楽寅さん』第2回では桑田が番組の主題歌を作っていた。こ
こで桑田はスタジオでの曲作りの過程を全公開した。

スタジオにこもって仲間の音楽家と共に曲に仕上げていく。アイデアを大事にし、
お互いの意見を尊重し、細部にこだわり、よいものを作るために妥協しない。実
に地味な作業。

それなのに完成曲の歌詞は放送禁止かというくらいの卑猥さ。曲作りの真摯さに
感動してしまったこちらをあざ笑うかのようなエロ。

題名に始まり、曲の隅々まで徹底したエロ。アラーキーは何を撮ってもエロ写真
だが、それと同じく、口を開けば容赦のないエロ。ここまでエロを徹底されると、
全く煽情されない。ロックだ。

今どきここまで徹底して音楽を見せ、聞かせようとする番組は少ない。

民放の今どき歌番組はアイドル近況・裏話報告の幕間に新曲の宣伝をしているだ
けだし、NHKの歌番組はどうにも窮屈な感じがつきまとう。実際、NHKには絶対出
てこない、出てこられない歌手の顔も浮かんでしまうし。

だから、『音楽寅さん』はまじめな音楽番組だ。オリンピックを二つ、ワールド
カップを二つやり過ごしての8年ぶりの番組再開だそうだ。いろいろ事情はある
だろうが、ぜひ長く続けて欲しい。

今週、もうひとつ気になったのは『バカリズム対怪人ボーズ』(テレビ東京)だ。

お笑い芸人のバカリズムが「バカリズムマン」という70年代風変身ヒーローをま
じめに演じているこの10分番組。70年代風変身ヒーロー番組の質感を忠実に再現
しているのがすごい。

イチゴを食べて変身するとか設定はふざけているのだが、そもそも仮面ライダー
や変身ヒーローの全てが荒唐無稽な設定なのだから、バカリズムマンの設定ばか
りがふざけているとも言い切れない。

35ミリフィルム調画面のざらざらした質感から、あちこちで頻用される手描き風
美術と手描き風の特殊効果。

使われている音楽からヒーローの服装、立ち居振る舞いから、しぐさ、表情、ナ
レーションの声、ヒーロー本人役の俳優が主題歌を歌うところまで、何から何ま
で昔風だ。

バカリズム本人は全く吹き出さない。ナレーションにしても絶対にツッコまない。
笑いたければ笑えばという節度が感じられる。そういう潔さ、まじめさが私は好
きだ。

私も、そしておそらくバカリズムも70年代風変身ヒーローを新作で大量消費した
世代ではない。再放送で楽しんだ世代だ。

再放送で見る変身ヒーローはどうしても古くさい。同時代の新作と比較して見て
しまうからだ。その結果、子どもたちは変身ヒーローの世界に没入しつつも、古
くささが気になってしまう。

今と違い、80年代の子どもは大量の古くさい番組の洗礼を受けて子ども時代を過
ごした。テレビ史を振り返ると、新旧の番組があんなに入り乱れて放送されてい
た時代は後にも先にもなかったように思う。

その結果、一部の過敏な子どもは古くさいもの感度を研ぎ澄まして大人になって
しまう。そういう人がバカリズムマンを作っているのかもしれない。

テレビでは内容だけでなく、その表現の形式そのものを楽しむことができる。バ
カリズムマンは形式そのものがメインディッシュだ。だから、わかる人だけが楽
しい。

テレビ番組には公共性が欠かせないのだが、芸術には「考えるな、感じろ」とい
うところがあり、「わからない人はすいません」ということになる。これはしか
たがない。エリート主義にならない限り、許容すべきだろう。

(了)


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