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さすらいの視聴者の書き下ろしテレビ批評コラムです。業界とは何の縁もゆかりもない無責任一本勝負でよろしくお願いします。

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2008/06/23

テレビ動物園

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          テレビ動物園
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[第15号 2008年6月23日]
 
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■「オヤジ=セレブ文化」
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『花の料理人』(日本テレビ)を見た。

さして長くないこの番組は二部に分かれている。第一部はロンドンブーツ一号二
号の司会のもと、芸能人解答者4名が4択クイズに答えるというもの。そして、全
員の正当数が予め定められた基準を上回ったら、ご褒美に都内名店の料理人が作っ
た料理を食べさせてもらえるということになっている。

で、出てくる料理は創作系。和食にせよフランス料理にせよ、よく知られたもの
ではなく、「サザエとウニの麦とろ丼」のように一風変わった感じだ。

他の番組でもそうだが、うまそうな料理を見ると、大丈夫かと思うくらい派手に
騒ぐ出演者が多い。もはや騒ぐのが習い性になっているのだろう。

しかし、大の大人がそうも揃ってひとつの料理に夢中になることなんてあるだろ
うか。自分のまわりを見渡してみれば明らかだが、味覚や好みは実に人それぞれ
である。サザエ、ウニ、麦とろなんて、どれかはあまり好きじゃない人もいるは
ずである。

テレビ出演者が料理を前に騒ぐのは「そうするものだ」と思っているからに過ぎ
ない。そういう意味で言えば、騒いでいる出演者はさまざまな番組に挿入されて
いる笑い声や驚く声のような効果音と同じ機能を果たしているに過ぎない。

クイズとしては「表参道を歩いている20代から40代の女性100人に聞いた」「初
デートの食事中に不快感をおぼえる男性の例」をあげさせる問題が出題されてい
る。料理やワインのうんちくを語ってみせる男や窓に映る自分の髪型をしきりと
気にする男などが糾弾され、ゲスト出演者はそれに同調してみせる。

番組はカッコつけている人を一方的に戯画化して叩いているのだが、実は当の番
組こそがカッコつけている。もう矛盾だらけだが、番組はそのことに無頓着であ
る。

番組は「都内一流店の有名料理人の隠れメニュー」なるものを紹介し、出演者た
ちはその料理を前に気の利いたコメントをひねり出している。また、番組は東京
の「オシャレな街でオシャレな女性」の意見を募っている。出演者や、女性たち
の番組のそういう姿勢はデートでうんちくを垂れる男の姿勢と同じである。

料理人が隠れメニューを紹介する際に「(ゲストの)RIKACOさんの好きな」と言
うと、RIKACOが「何で知ってるのお」とタニマチ然として喜んで見せる。ああ、
この人は真性オヤジなんだと思う。

テレビのあちら側には、ただひたすらに東京の流行を消費し続けて他人との差異
化に狂奔する芸能人=有名人=セレブ文化というものが存在している。一方、あ
らゆる文化的差異に乗じて権力を振るい他人を支配しようとする人間がオヤジで
ある。だから、セレブ文化とはオヤジ文化でもある。中尾彬もエビちゃんもオヤ
ジ=セレブ文化の中では区別がつかない。

この類の番組は個人宣伝(告知)と引き替えに有名芸能人の出演を取り付けて視
聴者を集め、オヤジ=セレブ文化を広告的に紹介し、視聴者にも消費を促す番組
である。オヤジ=セレブ文化に興味のない者にとっては何がおもしろいのかすら
もわからない。

オヤジ文化の主たる担い手とは男性会社員であり、セレブ文化の担い手としては
それに女性ファッション誌愛読者が加わる。だから、オヤジ=セレブ文化の潜在
的な担い手の数は極めて多い。

「初デートのカッコつけ男」をけなしつつ、一流料理人の飲み屋料理や表参道女
子を持ち上げるというように、視聴者=庶民は、オヤジ=セレブ文化にコンプレッ
クスを感じつつも憧れるという微妙な立場にある。視聴者がコンプレックスによ
る自己嫌悪に陥らず、かといって優越感に満たされることもないのは、テレビ番
組によって絶えずバランスをとらされているからである。

著しく物分かりの悪そうなRIKACOだって、無意識にこのコンプレックスと憧れ、
優越感のバランスの上に立っている。絶えず情報を垂れ流すという、テレビの
「垂れ流し力」はかくも大きい。

(了)


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