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さすらいの視聴者の書き下ろしテレビ批評コラムです。業界とは何の縁もゆかりもない無責任一本勝負でよろしくお願いします。

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2008/06/16

テレビ動物園

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          テレビ動物園
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[第14号 2008年6月16日]
 
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■「イタい中田」
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『開局55年 報道特番 今夜初公開 独占密着 “中田英寿の真実”』を見た。

「あー、中田の番組なんてムリ」と思っていたが、一念発起して見た。やはり無
理だった。こそばゆいし、イタい。

ただし、そう感じるのは自分である。中田は確かに何かとイタいのだが、自分も
またイタいのである。かくして自分探しの旅が始まる。

中田は人気があった。現在もそこそこあるのだろう。しかし、中田は決して愛さ
れキャラではない。中田好きの人とは結局、「ファッションも生き方もオシャレ
な中田が好き」な人である。

「オシャレ」とは自分を他人と差別化する手段である。だから、中田好きの人は
中田の側に立ちたい、ないし立っていることを切望している人のことである。

ファッションについてはよくわからないが、人生についての自己主張などサッカー
と関係のない発言の多くは月並みで陳腐な言い回しが多い。中田好きの人々はそ
ういうところにも憧れているようだが、よくよく見れば、いちいち横文字を差し
挟むしゃべり方などはルー大柴と何の違いもない。

彼の卓越した能力は別のところにある。それだけにこういう月並みで陳腐なこと
ばを見ると、自分もなかなか気の利いたことがいえないものだという劣等感をお
ぼえてしまう。

いずれにせよ、多くの人は中田を見ることでいいようのないコンプレックス=劣
等感にさいなまれる。イタい中田に何かを見てとり、そのイタさが自分の中にも
あることを感じて居心地の悪さを感じてしまう。中田はイタいが、自分たちも負
けず劣らずイタいのである。

テレビで見て知る限り、中田はかなり神経質で内気な人である。番組でもテント
泊を極端に嫌がったり、スタッフの何気ない、それほど深く考えずに放ったこと
ばにいちいちくってかかったりと、大人げないまでに神経質だし、身近な人と仲
良くなろうとする配慮が感じられない。

他人に対して優位に立とうとする際、ファッションはかなり有効な手だてである。
ファッションは他人の不作法な視線から己を守る鎧になってくれる。ひとたび成
人してみると、このことは折につけて実感される。中田のファッションにはそう
いう目的も多少あるのだろう。

身近な人と仲良くやっていく必要なんてない。自分がそれでよければ問題はない。
だから中田がそうであるように、「知り合いは多そうだけど、親友は少なそう」
であることはそれ自体、良くも悪くもない。

しかし、そうもいってられないのが人生である。注意深く避けていても、嫌いな
人と折り合いをつけて生きていかなければならないときがあるものだ。で、中田
はそれができない。神経質すぎるのだ。これは少々気の毒なことである。

中田の行動力や自己主張は卓越している。また、サッカーと自分、サッカーと社
会についての洞察力は見事なものである。サッカーがからむととたんに彼のこと
ばの切れ味が増してくるのだ。

それだけに対人コミュニケーションにおける過剰に神経質な身構えが際だってし
まう。初対面の人や自分に好感を持って接してくれる人とはうまくやれる(よう
に見える)が、それ以外の人とはうまくやっていくことができない。

「ヘタウマ」ということばがあるが、コミュニケーションについていえば、中田
はよくてウマヘタ、おそらくヘタヘタである。番組内で中田は自分のことを「普
通だと思っている」という。際だった能力以外ではその通り、普通である。ヘタ
ヘタなコミュニケーションだって普通である。

しかし、普通の人ならウマヘタでもヘタヘタでも注目すらされないが、つらいこ
とに中田は人気者である。人気者なのにヘタヘタだから目立つのだ。

能力の高い人気者ゆえの悲劇である。そして、人々は中田の行動力に憧れると同
時に、中田のヘタヘタなコミュニケーションっぷりを自分の中にも見いだして身
もだえし、劣等感をおぼえてしまう。だから中田はイタいのである。

してみると、テレビの制作者は手練である。人気者を持ち上げつつ、巧みに落と
して視聴者に媚びる。中田もしてやられている。そもそも中田の「謎」とか「真
実」なんて、まるで腫れ物に触るような扱いである。

テレビの影響力は話題の設定やその話題の取り上げ方において発揮される。だか
ら、腫れ物に触るような扱いをしているということは、中田=腫れ物=めんどく
さいものであり、中田はコミュニケーションがヘタヘタのイタい存在であると公
言しているようなものである。

自分探しの旅とかいってるくせにテレビ同行じゃんというツッコミは控えよう。
俗世間のしがらみに取り込まれてしまうのもまた人生である。それを体現する中
田の旅は自らイタさをわざわざ引き受けるための旅かもしれないのだから。

ただし、いわゆる朝青龍問題だけは気になったので一言添えておきたい。旅の先
々で中田はテレビ局の便宜を受けている。だから朝青龍をモンゴルで中田主催の
チャリティーサッカーに誘ったのはこのテレビ局であるはずだ。

求めに応じた朝青龍もさることながら、騒動の最中には朝青龍を叩き、自らの責
任について沈黙していたのはほかならぬテレビ局自身である。そして騒動が一段
落した後でこうして「裏話紹介」で視聴者を引きつけようとする。

いっしょになって朝青龍を叩く世論もなんだが、自作自演なテレビ局にこの種の
モラルは存在しないようだ。中田がイタいのは中田の責任ではないが、この問題
についての責任の所在は明らかである。

(了)

[訂正]
前号(第13号)にて「『TVチャンピオン2 なでしこ礼儀作法王選手権』(日本
テレビ)」と記してしまいましたが、同番組はテレビ東京の制作です。訂正しま
す。また、以前のことになりますが、第4号で「最下位は武田」としたところは「最
下位は武田修宏」と補足訂正します。

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