2009/06/19
【平野貞夫の国づくり人づくり政治講座】第16号 2009年6月19日発行
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平野貞夫の国づくり人づくり政治講座 第16号 2009年6月19日発行
筆者 : 土佐南学会代表 平野貞夫
発行 : 一般財団法人 国づくり人づくり財団
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《『政(まつりごと)の心』を求めて》 第16回 ― 戦後の混乱に学ぶ ―
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敗戦のショックは父のカルチャー・ショックで済まなかった。深刻な食糧危機が
、土佐の田舎にも押し寄せた。それは台風の襲来で丁度開花時の稲の穂を、一夜
にして真白にした。大都会の飢餓状態ほどではないが、米を中心に主食の不足が
続くことになる。
当時、開業医のほとんどは診療代を、カネではなく「米」で支払ってもらってい
た。もちろん食糧管理法違反である。父は有名な遵法主義者で、それができなか
った。長兄は陸軍大尉、東京碑文谷の高射砲中隊長で追放となり、慈恵医大に入
学する。次兄は鹿児島大学医学部在学中、三兄は東京歯科大に入学すること、学
費が増え相当に貧しい暮らしとなる。
中村女学校に在学中の姉を休学させて、3反ぐらいの田畑を活用して、家族の食
糧自給のため農業を始めることになる。母親と姉と小学生の私の3人が主役とな
って、昭和21年頃から23年頃まで、学校に行く間以外には百姓の経験をした
。これが私の人生の大きな糧となった。この体験があらゆる場合に役に立った。
まず、自分の食べるものを自分でつくるという行為が、地球や宇宙の動きの中で
行われることを、子供の頃から実感することである。世の中のことはすべて繋が
っていて、全てに感謝するということが知らず知らずのうちに身についてくるの
が、百姓という仕事である。これが人間にとって大事なことだ。
医者の家なので馬や牛を飼育していない。当時は化学肥料が少ない。馬糞や牛糞
が貴重な肥料だ。早朝、炭焼に行く馬が通った山路を、姉と2人で馬糞を拾いに
行ったことを記憶している。医薬品の中でも消毒用アルコールが不足していて、
焼酎を自分たちでつくった。小学校5年生頃、村の長老たちから「いも焼酎」の
つくり方を教わり、いまでもつくれる。
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『 伝統的な村の文化の喪失 』
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話は戦時中に戻るが、敗戦の年の昭和20年が明けて、住んでいる三崎村が米軍
の上陸地点ということで、4千人の村人全員の血液検査をすることになった。A
・B・O型の検査をして左胸に表示しておくのである。父が採血して私が判定す
る。判定がむずかしいものは、父が顕微鏡で判定した。戦後もこの血液判定でこ
の村の人たちは、手術など治療を行ったが、事故は1件も起こらなかった。
戦後に大きく変わったのは政治である。第一次吉田内閣が、昭和21年5月22
日に発足する。吉田茂首相と林譲治内閣書記官長(現在の内閣官房長官)の選挙
区は高知県である。
しかも2人は親族であり、林さんは父と明治時代中頃の旧制中学校からの親友で
ある。父は戦前政友会に所属して衆院議員を続けていた林代議士の支援者であっ
た。夜の食事時には父の政治解説が毎晩のように続いた。
ある晩、父が林さんに激励の手紙を書こうといい出した。私が「吉田首相は土佐
犬」「林書記官長は尾長鶏」「佐竹晴記代議士(高知出身)はしゃも(斗鶏)」
との手紙を書いたところ、林さんから丁重な礼状をもらった。こういったことが
切っ掛けで、私は政治に関心を高めていくことになる。この時期、新憲法が発布
された。小学校で「新憲法の歌」を教わり歌ったことを憶えている。歌詞は民主
主義の啓蒙であったが、曲が軍歌調で馴染めなかった。
占領軍がジープで調査として戦時体制の解消に来る。流行歌と野球がはやるとい
う時代になる。父が「野球と流行歌がはやるのは、植民地になった証拠だ」と時
々機嫌が悪くなる。村には復員の青年たちが帰り、都会から疎開してきた人たち
が帰る。人間が入れ替わるようになると、伝統的な村の文化が失われていく。
シベリヤから復員した人たちは、共産党員として活動を始めるようになる。村の
秩序は大きく変わる。この三崎村というところは、大正時代から改革、革新の思
想の強いところで知られているところであった。 (つづく)
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