リバティビジネスレター RSSを登録する

月刊「ザ・リバティ」の編集記者、村上俊樹による経営者のための読んで得するビジネスガイド。

  • 周期 月2〜3回
  • 最新号 2008/11/18
  • 発行部数 721
  • マガジンID 0000259691
  • 個別ページ
最新号をメルマガでお届けします    
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。
あなたの一票を待っています!まぐまぐ大賞2008
2008/05/06

発展を取るか、仲間を取るか

この記事を取り寄せる

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
経営者のための
ビジネス読ん得本ガイド リバティ・ビジネス・レター
2008年4月27日号
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


==============================

発展を取るか、仲間を取るか

==============================

 前回は「怨憎会苦」(おんぞうえく)の話をしましたが、今回は「愛
別離苦」(あいべつりく)の話をします。

 「怨憎会苦」とは、仕事でいやな人との付き合いは避けられない
ということですが、「愛別離苦」はその逆で、好きな人や大事な人と
の別れもまた避けられないということです。これもまた仏教で言う
「四苦八苦」のうちの一つですね。


■■創業メンバーとの決別が発展をもたらすことがある■■

 『ワンマンだからできた「全員経営」』という本に、東証一部上場
企業で、建築や測量、土木CAD(キャド)で大きなシュアを持つ
福井コンピュータという会社の成長物語が綴られています。
 
 その本によると、創業者の小林眞社長は非常な苦労人で、10歳か
ら行商をして、中学を卒業後、転職を13回も繰り返しますが、何を
やってもうまくいかなかったと言います。
 しかし30代になってコンピュータに出会うや、運命が転換します。
持ち前の集中力でコンピュータの勉強をし、測量プログラムを搭載
したコンピュータの販売をする会社を起こします。37歳の頃のこと
です。

 創業メンバーは3人です。小林社長と、その奥さん(資本金は奥
さんの貯金だったそうです)。そして、友人から紹介された和田さん
という方です。
 和田氏も小林社長と同じく測量プログラムを開発していた人でし
た。お客さんから注文をもらうと、客先に寝袋を持参して泊まり込
んで開発するという仕事ぶりで設立当初から大活躍をします。
 営業が手詰まりになると、和田氏がどこからともなく商談をまと
めてきて、一番苦しい創業期の経営を支えたと言います。

 こうした得がたい人材の活躍もあって、福井コンピュータは徐々
に軌道に乗っていきました。
 小林社長はさらに会社を発展させようと、次々と若い社員を入れ
ていきました。

 するとある日、「小林さんのやり方にはついていけません」と和田
氏が退職を願い出たのです。
 突然の申し出に小林社長は愕然とします。

 話を聞いてみると、小林社長が後先構わず人を入れるので、人件
費も増えるし、とてもやっていけるとは思えないということでした。
 和田さんは、地道に良い仕事をしていけば、特に営業活動をしな
くても、自然に受注は増えると考えていました。実際、和田氏はそ
のやり方で客先から信頼され、実績を上げていたのでした。

 しかし、小林社長は、まず営業で受注し、その次に開発をすると
いうスタイルで仕事をしていました。そして将来は個別に受注する
オーダーメード型の営業から脱皮して、プログラムをパッケージ化
し、広く販売することで大きな会社にしようと考えていました。

 仕事に対する基本思想がまったく正反対だったのです。

 小林社長は和田氏を慰留しますが、和田氏の決意は固く、結局、
会社を去っていきます。

 まだ社員が5人程度だった時代に、右腕だった人に抜けられたわ
けですから大打撃です。

 しかし、福井コンピュータは、その後ますます発展していきます。
それまで零細企業ということもあって、オーダーメード型の営業を
するのか、パッケージ化して大量に販売する営業でいくのか、特に
経営方針も決めずにいました。それが和田氏の退社をきっかけに、
パッケージ化路線で行くと方針がビシッと決まったのです。

 創業メンバーとの決別は小林社長にとって、つらい出来事ではあ
りました。しかし、創業メンバーの中核である2人の経営方針がず
れたまま仕事をしていたら、福井コンピュータが今日のような発展
を見ることはなかったかもしれません。
 創業メンバーとの決別が、かえって会社を発展させることになっ
たのです。


 どんな会社でも創業する時は、家族や気の合う仲間とともに仕事
を始めますが、会社が発展してくると、「発展を取るか、仲間を取る
か」という決断を迫られる局面が来ます。
 それは言い換えれば、「発展を捨てるか、仲間を捨てるか」という
局面でもあります。

 これは必ず発展を取らなければならないということではありませ
ん。「会社を大きくしない」という選択も当然あるでしょう。自営業
者として成功している人もたくさんいますから、「どちらが正しい
か」というよりも、「どちらが自分に向いているか」という話なのか
もしれません。

ただ、よくないのは、どっちつかずの状態で、ずるずると決断を
先延ばしにすることです。その場合、世の中の変化に対応できず
に、経営危機を迎えることにもなりかねないので要注意です。

 
■■捨てるつらさに耐えてこそ発展できる■■

 ワタミの渡邉美樹社長も似たような経験を持っています。
 ワタミも他の多くの会社と同様、奥さんと高校時代の友人2人と
合わせて4人でスタートしています。

 いずれ決別するなら、最初から仲間内で起業しなければいいので
はないかとも考えられますが、渡邉社長はこう言います。

「スタートアップの時には、家族の力だろうが友人の力だろうが、
借りられるものはなんでも借り、その結果、上下関係とか役割分担
とかがあいまいになっても、それはそれで仕方がない」(『あと5セ
ンチ、夢に近づく方法』)

 実際、最初から優秀な人が個人企業のレベルに入ってくることは
稀ですから、どうしても仲間内で起業するしかないのです。

 ただ、仲間内だからといって、上下関係の秩序がある程度はない
と、組織としてまったく機能しません。
 渡邉社長は次のように言います。

「共同経営なんてありえない、あくまでも経営は個人でやるものだ、
というのが私の持論です。友人にしろ、家族にしろ、部下になりえ
ないのだったら、組織として動き始める時には辞めてもらったほう
がいいでしょう」

 非常に厳しい姿勢ですが、こんな厳しい姿勢で臨んだワタミであ
っても、やはり創業メンバーとの別れがやってきます。

 創業して10年が経ち、ワタミもいよいよ株式公開というところま
で来た頃の話です。
 創業メンバーである2人の役員を取締役から外し、課長に降格し
たのです。

 居酒屋を2〜3店舗経営していた時に求められる能力と、株式公
開する企業で求められる経営能力は、当然レベルが違います。
 創業当初は有能だった2人は、会社のレベルについていけなくな
っていたのです。
 また、大きな規模の会社に相応しい、優秀な新しい人材も次々と
入社していました。

 この決断を渡邉社長は「断腸の思い」で下したそうです。
 その2人のうち、1人は課長からやり直して再び成果を上げて部
長に昇進しました。そしてもう一人は、「会社が大きくなっていった
のは渡邉の力ではない、オレでもできた。それを証明するために居
酒屋をやる」と言って、会社を辞めてしまいました。

 創業期の厳しい時代を一緒に凌いだ仲間との決別は非常につらい
ものがあります。
 しかし、それを放っておくと、組織は腐っていきます。

■創業者の友人というだけで、能力がないのに役員になっている
■創業者の奥さんというだけで、能力がないのに経理・財務を仕切
っている

 というような状態は、有能な社員ほど反発します。その結果、優
秀な社員は辞めていってしまうので、会社そのものの競争力を失う
ことになります。

 創業者としては、初期の仲間を大事にしたいという善意で、奥さ
んや友人を役員待遇にしているわけですが、社員からは「エコ贔屓」
しているようにしか見えないわけです。

 実は、この決断ができるかどうかが、創業者が会社を「自分のも
の」と思っているか、「社会のもの」と思っているかどうかの分かれ
目になります。

 もちろん、奥さんや友人が本当に優秀で仕事ができる場合は、話
は別です。同族経営でうまくいっている場合は、「仲間経営」が「実
力主義」とさほど矛盾していないケースがほとんどです。トヨタな
どは、そのパターンかもしれません。
 実際、同族経営の方がうまくいくという研究もあります(デビッ
ド・S.ランデス著『ダイナスティ』など)。

――――――――――――――――――――――――――――――

 いずれにしても、会社が発展する時には、創業期の功労者である
「家族」や「友人」と決別する機会が必ず訪れるものです。

 その時は身を削られるようなつらい思いをします。良心の呵責も
感じるでしょうし、友人に「裏切り者」と罵られることもあるでし
ょう。相当な信念がないと耐えられません。
しかし、そのような決別の決断を迫られる機会が来た時は、もう
一皮向ける大きな発展のチャンスが訪れている時でもあります。

 その時に決別の苦しみに耐えることができる人が、より大きな成
功を手にする人なのだと言えます。


【もう一度チェック】――――――――――――――――――――

□創業メンバーとは、同じ理想、同じ志を共有できていますか?
□同じ理想、同じ志を共有できていると、自分だけが思っていると
いうことはありませんか?
□現在の経営方針は本当に正しいのか、役員同士で議論をしていま
すか?
□自分が掲げた経営方針を、役員や社員にきちんと説明し、理解を
求めていますか?
□社長だから他の人は経営方針を受け入れるのは当たり前だと思っ
て、説明不足に陥っているということはありませんか?
□経営陣は、本当に一枚岩になっていますか?
□経営陣は、何年も何十年も入れ替わっていないという状態になっ
ていませんか?
□若く、新しい役員を誕生させていますか?
□若く、優秀な社員を、はじく傾向はありませんか?
□創業時の苦労を知らない人を、一格下に見る傾向はありません
か?
□現在の役員は、過去の功績だけで選んでいませんか?
□現在の役員は、現在成果を上げていますか?
□役員報酬は、仕事に見合ったものになっていますか?
□家族や仲間ばかりを役員に据え続けていませんか?
□能力的に落ちこぼれた役員を退任させたことはありますか?
□また能力的に落ちこぼれた役員をそのままにしていませんか?
□創業メンバーを大事にするという考えの中に、「私情」は入ってい
ませんか?
□発展を目指すために、何か大切なものを「捨てる」ことはできま
すか?
□より大きな善を行うために、時として小さな善を捨てることもあ
るという考え方を受け入れることができますか?
□小さな善を捨てた時に、周囲からの批判に耐えることはできます
か? 


▼もっと詳しく学びたい人に〜今回の参考書▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

■『ワンマンだからできた「全員経営」』(小林眞著、中経出版、税
込1890円)
セブンアンドワイ→
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=32034900

■『あと5センチ、夢に近づく方法』(渡邉美樹著、祥伝社黄金文庫、
税込600円)
セブンアンドワイ→
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=31742773

■『ダイナスティ』(デビッド・S.ランデス著、PHP研究所、税
込2310円)
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=31822744

(ザ・リバティ編集部 経済担当 村上俊樹)
通算29号

この記事を取り寄せる
最新号をメルマガでお届け
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。

最近の記事

上へ戻る