2009/04/17
飛鳥遊訪マガジン Vol. 049
◆◇◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◆◇◆ ◆◇◆ 飛鳥遊訪マガジン Vol. 049 (2009.4.17.) ◇◆ ◆ 飛鳥好きの貴方に贈るメールマガジンです。 両槻会のイベントもご紹介します。 両槻会 http://asuka.huuryuu.com/ ━━━━━◇━━━━━━━━━━◇━━━━━━━━━━◇━━━━━━━ 桜の花も一重から八重に咲き移り、春真っ盛りとなって来ました!!歩く には絶好の日和ですね。飛鳥を歩きたくてウズウズしておられる方もいらっ しゃるのではないでしょうか。そう言う人の為に<両槻会のメルマガ>があ ります。(笑) 今回は近江先生と両槻会との出会いのナゾが解き明かされる!?熱のこも った読み応え充分の<近江先生の寄稿>、事務局員の薀蓄<飛鳥話>、定例 会の傾向と対策<咲読>、そして・・・迅速な情報、とりたてホヤホヤ〜の <飛鳥情報>まで、今回も長〜〜い文章が連なっていますが、ここでしか聞 けないお話が満載です♪みんな頑張って書いております。どうぞお時間の許 す限り読んで頂けますよう、宜しくお願い致します。 では・・・はじまりはじまり〜〜(^0^)/ (P-saphire) ┏◆━index ━━◆◇◆ 〈1〉寄稿 ・・・飛鳥のみち 飛鳥へのみち2 / 近江俊秀先生 -------------------------------------------------------------------- 〈2〉飛鳥話 NO.1・・・季節で巡る太古の飛鳥 / 河内太古 -------------------------------------------------------------------- 〈3〉飛鳥話 NO.2・・・伏見の飛鳥やぶにらみ / 伏見 -------------------------------------------------------------------- 〈4〉飛鳥咲読 / 笑いネコ -------------------------------------------------------------------- 〈5〉飛鳥情報 -------------------------------------------------------------------- 〈6〉両槻会からのお知らせ -------------------------------------------------------------------- 〈7〉編集後記 -------------------------------------------------------------------- ┗━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━ ┏◆━━━━━━━━━━ 〈1〉飛鳥のみち 飛鳥へのみち2 / 近江俊秀先生 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━━━━ 「下ツ道(3) −記者発表」 出土した須恵器の時期は、現在の土器の年代観から言えば6世紀末。新し く見積もっても7世紀の初頭を下らない。この土器を下ツ道東側溝に捨てら れた、あるいは何らかのまじないの意味を込めて供えられたとすれば、この 頃には下ツ道は存在したということになる。実は、私は著書の中で、下ツ道 をはじめとする大和の直線道路網の成立を、6世紀末に求める見方を示して いた。そういった意味では、自説にとって有利な物証を手に入れたことにな る。 しかし、話はそう簡単にはいかない。自説うんぬんは抜きにして、発掘調 査という方法により手に入れた物証は、慎重な検討を行った上で世に提示す る必要があるし、何よりも、以前に提示した自説は既知の資料・史料解釈に 基づく、仮説のひとつであり、時期を決定できる証拠とは根本的に性格が異 なるものである。むしろ「下ツ道、6世紀末成立説」を掲げている私は、こ の資料の扱い・評価に対して、人一倍、冷静かつ客観的であらねばならなか った。そのため、諸記録の作成方法や内容については、基本的に奥井さんに 委ねると同時に、あまり先入観を植え付けないようにこころがけた(調査終 了後は、さんざん植え付けてしまったが・・)。 一方、遺物そのものの状態や、出土状況からして、この遺物が下ツ道敷設 年代を示す可能性があることは否めないものでもあった。そして、このよう な成果があげられたことに関する記者発表が、現場の進捗と並行して進めら れることになり、私は調査担当者として事実を語る立場と、自らの研究に基 づく評価を語るという二つの立場で、その場を迎えることになった。 新聞には、私の見解が大きく採りあげられ、肯定的な立場で千田稔先生の コメントが載せられ、否定的な立場から和田萃先生のコメントが掲載された。 相変わらず、限られた紙面の中では、センセーショナルな話が中心となり、 もっとも肝心な事実関係が軽く流されてはいたが、肯定・否定双方のコメン トが掲載されたことは、良心的な報道であったと思う。ただ、根本的な問題 として「下ツ道の敷設時期」の問題が、なぜ新聞報道するほど大事なのか、 それがどんな歴史的な意味があるのか、ということがどの程度、伝わったの かは疑問であるが・・・ 平城京左京三条一坊四坪(朱雀大路・三条大路・下ツ道)記者発表資料 http://www.kashikoken.jp/from-site/2007/suzakuoji/suzakuoji.pdf (ちなみに、「風の書」との出会いも、この記者発表がきっかけでした。よ そでは、茶化すような書き込みが多かった中、風人さん、ももさんのコメン トは、極めて冷静で客観的だったので、これをきっかけに両槻会に好印象を 持ちました。) ところで、和田先生のコメントを覚えている方はどれだけいるだろうか? 和田先生は、飛鳥においても、方位に則った地割りが形成されるのは7世紀 中頃であり、それ以前に南北直線道路がつくられたとは考えがたいというこ と、そして、私が提示した6世紀末から7世紀初頭の間には、南北直線道路 をつくる必要性が認められない、つまり、南北直線道路を必要とするだけの、 社会・経済的背景を史料の中から認めることはできないという意味のことを 述べられたのである。 実は、この短いコメントは、私のみならず考古学の立場からの道路研究の 問題を的確に述べているのである。 ┏◇◆━━━━━━━━━━ 〈2〉季節で巡る太古の飛鳥 / 河内太古 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━━━━ 「新緑の頃の思い」 音もなく空に舞い散る桜の花びらを眺めていると、そのひとときだけが時 間を切り取られた異次元空間に身を置いているような気分を覚えたものです。 その桜も葉桜となり、今は菜の花が去りゆく春を惜しむかのように稲淵の 棚田や石舞台古墳の周辺、小原の田畑を染めています。気だるい春の夕が迫 ると、黄色い菜の花が金色に輝き、夕風に煽られてさざ波立ち、音にならな いシンフォニーが聞こえて来そうです。物憂げな春の黄昏には、忙しない浮 世を暫し忘れさせ、酩酊に似た陶酔感を醸し出してくれるものがあります。 飛鳥に通う近鉄電車の車窓から見える二上山の山容が好きで、新聞や本を 読んでいても「二上神社口」辺りにさしかかると、決まって目が山麓に向い ています。灰色と常緑の縞模様の中にピンクがぽつぽつと染みのように見え ていた山衣が、いつの間にか一斉に芽吹き始めた木々の梢によって、淡い緑 を刷毛でにじませた様な変化を見せていました。季節の推移とともに山容の 衣替えが始まっています。やがて緑の濃淡のモザイク模様の鮮やかな初夏衣 に包まれる二上山を仰ぎ見ることができそうです。 飛鳥の山野も春から初夏へと衣替えの時期を迎えます。この頃になると、 飛鳥寺から南西に広がる真神原や石神遺跡周辺の田んぼが蓮華の花に一面に 彩られます。文武天皇陵の南側の田んぼの蓮華畑も変化の少ない天皇陵の景 観に華やかさを添えてくれます。 石神遺跡周辺の蓮華畑 http://asuka.huuryuu.com/magazine/photo/49/isigami-renge.jpg 蓮華は、田んぼに空中の窒素分を根粒に固定する効用があるため、蓮華畑 はかってはどこでも見ることができましたが、農業の機械化や効率化で田ん ぼの蓮華風景は見ることも少なくなってしまいました。その限られた蓮華畑 も、田植え時期が早まった影響もあって、花盛りの間に鋤き込まれてしまう ケースが増えています。たんぼの肥料とするには鋤き込んで熟成させる必要 があるためのようです。それでも花の盛りをできるだけ楽しんでもらえるよ うにと、ぎりぎりまで耕すのを待ってくれるたんぼがあるのも嬉しい配慮で す。 かってはありふれた蓮華畑でしたが、それも今では農家の方の季節の景観 配慮がなければ見ることができなくなってしまいました。農地が次々と宅地 や事業用地に転用され、日常の生活空間からは消えてしまって、自然ととも にあった穏やかな暮らしは、もう遠い思い出の中にしかありません。太古が 好んで飛鳥に、葛城に通うのも、その心象の原風景への焦がれがあるからだ と思います。あたり前にあった季節に巡り合いたい、自然とともにある暮ら しの中にたとえひとときでもこの身を置きたい。年を古るとともに、その思 いが募っているようです。 数百年の齢を重ねた老樹でも、季節に出会うと、再び枝いっぱいに艶やか な花衣を纏って蘇り、枯れ木のように見えていた枝先に柔らかな新緑を噴き 出す姿を見ていると、その再生力と生命力のシャワーを浴びているような気 分に浸れますが、同じこの地上に生きながらも、人や動物には叶わない樹木 に与えられた特権に、ふと妬みすら覚えるこの春でした。(*^^)v ━━━◇『季節を訪ねて〜河内太古の写真館〜』 http://www2s.biglobe.ne.jp/~kawati/ ┏◆◇◆━━━━━━━━━━ 〈3〉伏見の飛鳥やぶにらみ / 伏見 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━━━━ 前回に引き続き、柿本人麻呂の名歌、 ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ についての話です。 この歌の原文は、 東野炎立所見而返見為者月西渡 であり、江戸時代に至るまで、 あづま野のけぶりの立てる所見てかへりみすれば月傾きぬ と訓まれていました。それが、現在の訓になる切っ掛けは、まず契沖(1640 ─1701)にあります。 契沖の万葉集注釈書『万葉代匠記』は、科学的・文献学的考証を行い、の ちの万葉集注釈に大きな影響を与えました。 その『代匠記』では、この歌の訓は、一応は、当時の通例である「あづま 野の〜」となっています。しかし、契沖は、一案として次のようにいいます (以下の引用は、伏見による解釈です)。 原文で「東野」と書き「西渡」と書いてあり、相対している言葉なので、 「ひむがしのの」と訓み「にしわたる」と字のままに訓んだ方がいいのでは ないか。 原文が「東」「西」とあるのだから、「ひむがし」と訓み、「あづまの」 という地名ではなく、単に方角を示していると解釈した方がよいのではとい うのです。 ここに、「あづま野」という地名から、東の方角の野という現在に近い考 え方が出てきます。 また、契沖は、原文「炎」についても、万葉集では「炎」という字を「か げろふ」と訓む例があるので、ここも「かげろふ」と訓むことが可能かとも いっています。 契沖はこのようにいくつか現在の訓に繋がる説を出していますが、それで も、結局は、「あづま野の〜」という訓にしています。 これを、現在の形にしたのが、賀茂真淵(1697─1769)です。 真淵は、万葉集注釈書『万葉考』において、原文の区切り方を変えます。 初句と二句なのですが、「あづまの野〜」と訓んだ通例の訓は、 東野 炎立所見而 と区切っていたわけです。契沖が一説として「ひむがしのの」と訓んだのも、 区切り方としては同じです。 それを、真淵は、「東」の一字だけで一句とした例は多い、と主張して、 東 野炎立所見而 と区切ります。その上で、「炎」を「かぎろひ」と訓む例をあげて、現在の訓、 ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ という形を提出するのです。 真淵は、通行の訓に対して、 今の万葉集で、「あづま野のけむりの立てる」と訓んでいるのは、何の理 もないみだりな訓で、しかもその訓によって、「あづま野」という場所があ るなどというらしい。本当に後人のいうことは、この程度のことで、ばかば かしい などといっています(いや、「ばかばかしい」とまで直接的にはいってま せんが、文章の勢いに、そういうニュアンスが感じられます)。自分こそが、 古代の人のことがよくわかっているのだ、という強い自信が感じられるとこ ろではありますが、果たして、真淵の見解に説得力があるのかどうか、とい うのも、問題でしょう。 この歌は、現在、真淵による訓によって読まれています。 ここまでの話で、この訓が、かなり新しいものであったことがお分かりい ただけたでしょうか? さて、しかし、真淵が自信をもって提出したこの訓、実は疑問点があり、 それは、見やすいところでは、岩波書店の新日本古典文学大系に一覧されて いると、以前に申し上げました(飛鳥やぶにらみ・第4回)。新大系では、 九つの疑問点をあげているのですが、ここでそのいくつかを紹介します。 ・「かぎろひ」とは何か。 ・古代では「かぎろひ」については「立つ」の語を用いず、必ず「燃ゆ」と 言った。 ・「立つ」もの煙である。煙に「炎」の字を用いた例がある。 ここでは三つをあげておきました。この疑問を見るだけでも、果たして今 の訓でいいのかどうか、怪しくなるのですが、だからといって、この歌の訓 を変えることは、これだけ名歌として喧伝されているだけに難しいでしょう し、殊に、商業ベースに乗る一般書で変更する勇気はなかなか持てないのか もしれません。 個人的には、古代から続く「あづま野の〜」という訓に戻してしまうのも 手ではないかと思うのですが……まぁ、無理でしょうね。もし、変えてしま ったとして、受け入れられるかどうか。 しかし、このように訓読の歴史を辿っていきますと、この歌を現在の訓の ままで読むのに、躊躇してしまいませんか? そして、この歌が、真淵の訓によって名歌と喧伝されていることに、釈然 としなくなってきませんか? 私は、釈然としません。 で。 釈然としないまま、二回にわたったこの話は終るのでした。 ┏◇◆◇◆━━━━━ 〈4〉 飛鳥咲読 / 笑いネコ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━━━━ 第14回定例会に向けての「飛鳥咲読笑いネコバージョン」もこれが最終 回です。 先日、田村薬草園に下見に行ってきました。その折、ネコが参考にした文 献には無かった生薬が、「木簡出土品」という名札を付けて植えられている のに気付きました。そこで、奈良文化財研究所の「木簡広場」のデータベー スで調べ直してみたところ、奈良県教育委員会の発掘調査でかなりの生薬木 簡が出土していることが解りました。その数20数種類!!しかも、藤原宮 で5377点の木簡がデータベースに載っている内(調査は色々な研究期間 によるもので、発表された文献も様々です)、ネコがチェック出来たのは僅 か450点ほどなのです。5377点すべてをチェックしたら、いったいど れくらい出てくるんでしょう?とてもそのすべてを調べてお話しすることは できません。(^_^;) さて、今回のトップバッターは、皆さんお馴染みの葛根湯の「葛根(カッ コン)」です。 マメ科クズ属のツル性多年草「クズ」で、いたる所の空き地などに生えて います。生命力が強く樹木に覆い被さって、その生育を邪魔することもあり、 邪魔者扱いされることもあるのですが、よく見ると花はなかなか美しいです し、その根から採ったデンプンは葛粉として利用されます。生薬の「葛根」 も文字通り「葛の根」です。「クズ」という名は、上質の葛粉の産地である 吉野の国栖(くず)に由来するという説もありますが、はっきり分かりませ ん。 薬効は、発汗、鎮痛、解熱作用で、葛根湯の主成分です。 クズ http://www.asukanet.gr.jp/warainekonoheya/zukan/8-mame/ao-murasaki8-1.htm 木簡に「非子」と「■(木偏に非)子」というのがあります。 これについては、二つ考えられます。一つは「菱の実」。ヒシ科ヒシ属の 1年草で池やため池に群生する浮葉植物です。名前の由来は、実が堅いので 「緊(ひし)ぐ」からきたとも、扁平な実の形から「拉(ひし)ぐ」という ことからきたとも言われます。また葉や果実が菱形だからという説もありま す。この実を乾燥させると薬用に用いることが出来るのです。 もう一つ「榧子」と書く「ヒシ」というのがあるのですが、これはイチイ 科カヤノキ属のカヤの実で虫下しとして使われるようです。ただ、本来は 「榧」と書くと、中国の別種なのだそうです。 カヤ http://asuka.huuryuu.com/magazine/photo/49/kaya.jpg 次に木簡に「知苺」と書かれた「地母(チモ)」という生薬をご紹介しま す。 これは、ユリ科の「ハナスゲ」という植物の根茎から採る生薬です。「ハ ナスゲ」は中国北部原産で、日本には自生種はありません。鎮咳、去痰、解 熱作用などがあり、かなり古くから薬用として栽培されているようです。名 前の由来は「スゲ」に似ていてそれより美しい花を付けるから、だそうです。 ハナスゲ http://asuka.huuryuu.com/magazine/photo/49/hanasuge.jpg 花の美しい生薬に「地黄(ジオウ)」があります。ゴマノハグサ科ジオウ 属の「アカヤジオウ」または「カイケイジオウ」の根を用いるもので、その まま乾燥したものを「生地黄(ショウジオウ)」、蒸してから乾燥したもの を「熟地黄(ジュクジオウ)」といい、補血、強壮、解熱薬として、同じよ うに用いるようです。木簡に書かれているのは「生地黄」と「□地黄」の2 種類で、□に「熟」の字が入るのか、「生」の字が入るのか分かりません。 アカヤジオウ http://asuka.huuryuu.com/magazine/photo/49/akayajiou.jpg さて、お次は「牛膝(ゴシツ)」です。これは、ヒユ科イノコズチ属の 「イノコズチ」です。そうです、何処の空き地にでも生えていて、犬の散歩 などの時に衣服や犬の毛に果実がくっついて、取るのに大変な思いをする、 あの「雑草」君です。(笑) 嫌われ者の「イノコズチ」もその根から、利尿作用や抗アレルギー作用が ある生薬が採れるんですよ!! 続けてもう一つ、何処にでも生えている生薬を♪ 「車前子(シャゼンシ)」です。1回目でご紹介した漢方薬の配合を書いて あるのではないかとネコが考えている木簡に出てくる生薬ですが、これの正 体はオオバコ科オオバコ属の「オオバコ」なのです。この種子を「車前子」 と言い、消炎、利尿、止瀉薬として、夏季の下痢、膀胱炎などの治療に使わ れてきました。また、植物全体を「車前草」といい、これも生薬です。 オオバコ http://www.asukanet.gr.jp/warainekonoheya/zukan/6-fusa/others6-2.htm 「車前子」の出てくる木簡に「桃四両」と書かれています。この他に「桃人 七斤」というのもあるので、この「桃」も「桃仁(トウニン)」とう生薬だ と思われます。もちろんこれは、バラ科のモモの種子のことです。前回出て きた「烏梅」の梅もそうですが、桃もかなり古く中国から渡来したものです。 桃を食べた時に出てくる「種」を割って、更にその中にある「種子」を取り 出して天日干しすると、この「桃仁」が出来ます。「種」と「種子」と書き ましたが、植物学的には正しくありません。ややこしいので、通称で書きま した。坑炎症、血液循環改善等の薬効があります。 モモ http://asuka.huuryuu.com/magazine/photo/49/momo.jpg 「杜仲(トチュウ)」は杜仲茶というのでお馴染みですが、トチュウ科トチ ュウ属の「トチュウ」という樹木で生薬としては樹皮を、肝臓疾患などに用 います。市販されている「杜仲茶」は葉っぱを使うのですが、薬効としては 樹皮より少ないそうです。「車前子」と同じ木簡に「杜中」と書かれている ほか、「杜仲十斤」と書かれた木簡があります。 トチュウ http://asuka.huuryuu.com/magazine/photo/49/tochu.jpg やはり「車前子」と同じ木簡に書かれている「桂心(ケイシン)」は、ク スノキ科クスノキ属のシナニッケイの「根皮」、つまり根っこの皮です。薬 効は、発汗、鎮痛、解熱等で、「樹皮・枝皮」を用いる場合もあり、「桂枝」 「桂皮」とも言われます。植物としては、中国原産で享保年間に輸入され栽 培されるようになったそうなので、木簡の書かれた頃は「根皮」「樹皮」の 状態で輸入されていたものと思われます。これも、正倉院御物にあるようで す。日本に自生する「ヤブニッケイ」は藪に生えるニッケイという意味で付 いた名で、同じクスノキ属ですが、香はあまり無いそうです。ちなみに、ハ ーブの「シナモン」は「シナニッケイ」の近縁種でインドやマレーシアが原 産の「セイロンニッケイ」という品種から採ります。こちらは「樹皮」の他 に「枝」を用います。最近ではこの「セイロンニッケイ」も「桂皮」として 使われているようです。 シナニッケイ http://asuka.huuryuu.com/magazine/photo/49/sinanikkei.jpg 「桂心」と同じ木簡に書かれている「白■(草冠に止)」というのをご紹介 して、この咲読の最後とします。 生薬名は「ビャクシ」といいセリ科シシウド属の「ヨロイグサ」の根を用 います。ヨーロッパ産のアンゼリカまたはアンジェリカという砂糖漬けにし てケーキなどに用いるものと同じ種類の植物で、薬効は、鎮痛作用、麻酔作 用、去痰作用です。また、血行を良くしたり、化膿症の治癒を促したりする 作用もあるそうです。 ヨロイグサ http://asuka.huuryuu.com/magazine/photo/49/yoroigusa.jpg さて、これで笑いネコ担当の咲読は終わります。少しは生薬になじんで頂 けたでしょうか?それとも、ますます嫌いになったとか...(^_^;) ━━━◇『笑いネコの部屋』 http://www.asukanet.gr.jp/warainekonoheya/ ┏◆◇◆◇◆━━━━━━━━━━ 〈5〉飛鳥情報 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━━━━ ◇━ 飛鳥資料館春期特別展 飛鳥資料館・春期特別展「キトラ古墳壁画四神−青龍白虎−」が本日から 始まりました。期間中(5月8日〜24日)には、キトラ古墳壁画「青龍 白虎」特別公開も行われます。また、泥に紛れてしまっている青龍の復元図 も公開されるようです。 「キトラ古墳壁画四神−青龍白虎−」 会 期 : 6月21日(日)まで (4/28・5/7のみ休館) 場 所 : 飛鳥資料館 特別展示室 主な展示品: 池上曽根遺跡出土「龍」絵画土器レプリカ・藤の木古墳出土馬具複製 河北省湾しょう(*)壁画墓青龍図模写 (*さんずいへんに章) 山東省済南市解放橋北唐墓石棺拓本・平安南道南浦市江西中墓白虎図模写 漢代・唐代銅鏡4枚 ・キトラ古墳壁画実大写真パネル 高松塚古墳壁画実大写真パネル 特別展に関するお問い合わせは、 050-7105-5355(キトラりんりんダイヤル) または、飛鳥資料館公式ホームページをご覧ください。 また、文化庁主催の関連の講演会が、万葉文化館にて5月16日に開催さ れる予定です。(飛鳥資料館案内ハガキ情報) なお、詳細は後日発表になるようです。 キトラ古墳 青龍復元図ニュース(産経ニュース) http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090416/acd0904162057006-n1.htm 飛鳥資料館公式ホームページ http://www.nabunken.go.jp/asuka/index.html ::::::::::::::::::::::::::::::::::: ◇━ 橿原考古学研究所付属博物館 春季特別展 いよいよ明日から、橿考研付属博物館の春季特別展 「吉野川紀行‐吉野 宇智をめぐる交流と信仰‐」が始まります。 期 間 : 4月18日〜6月14日 休 館 日: 毎週月曜日 入 館 料: 大人800円、高校・大学生450円、小・中学生300円 主 催: 奈良県立橿原考古学研究所附属博物館 五條市・五條市教育委員会・吉野町・吉野町教育委員会 後 援: 大淀町・大淀町教育委員会・南和広域連合 関連で行われる研究講座やシンポジウムなどは、下記ページをご覧下さい。 春季特別展のページ http://www.kashikoken.jp/museum/tenrankai/yokoku/yokoku-top.html 橿原考古学研究所付属博物館公式サイト http://www.kashikoken.jp/museum/top.html ::::::::::::::::::::::::::::::::::: ◇━ 歴史探訪ウォーク 「三都を結ぶ三道で巡る」と題した上中下の古道三道のイベントが2日に 分けて開催されます。 ・4月25日(土) (1)藤原京誕生コース(約12km) 定員200人。9時〜 ・4月26日(日) (2)−1 平城京遷都コース[歩き隊・下ツ道](約28km) 定員200人。8時〜 (2)−2 平城京遷都コース[バス隊・上ツ道](徒歩区間約9km) 定員100人。9時〜 (2)−3 平城京遷都コース[バス隊・中ツ道](徒歩区間約10km) 定員100人。9時〜 *各コース全て、参加には申込が必要です。 コース・申込方法などの詳細は、下記ページをご覧下さい。 橿原市「歴史探訪ウォーク」ページ http://www.city.kashihara.nara.jp/kikaku/walk/tanbou_walk2009.html ::::::::::::::::::::::::::::::::::: ◇━ 桜井市埋蔵文化財センター 春季特別展 「桜井の小古墳」 会 期 : 6月7日まで 時 間 : 9:00〜16:30(入館は16:00まで) 会 場 : 桜井立埋蔵文化財センター展示収蔵室 入館料 : 一般300円 小人150円 休館日 : 毎週月・火曜日 また、関連で『後期古墳の世界』と題した記念講演会も催されます。 日 時 : 4月26日(日)13:30〜15:00 場 所 : 桜井市立埋蔵文化財センター2階 講座室 講 師 : 和田晴吾氏(立命館大学文学部教授) 問合わせ: 桜井市立埋蔵文化財センター ::::::::::::::::::::::::::::::::::: ◇━ 鎮守の森を観に行こうかい 神社やお寺周辺の緑の恵みをもっと楽しむために、ちょっとぜいたくな森 散策を行なっている桜井市の「森とふれあう市民の会」さん主催の散策のご 案内です。歴史や森林、植生、考古学等のご専門の方々が毎回解説陣として、 同行してくださるようです。 第34回鎮守の森を見に行こうかい 「半阪峠を越えて宇陀路へ」 日 時 : 5月10日(日) 雨天決行 集合場所: 近鉄桜井駅南口広場 9:00集合 参加費 : 300円 (保険代・資料代など。中学生以下は無料) 申し込み: 当日受付・事前申込不要 講師予定: 郷土史家 室原慶和氏(歴史、文学) 近畿大学文芸学部教授 大脇 潔氏(考古学) 桜井市立埋蔵文化財センター 橋本輝彦氏(考古学) 森林インストラクター 新井博子氏(自然) 奈良植物研究会 尾上聖子氏・吉堂 求氏(植生) ルートや参加に関する詳細は、下記アドレスを必ずご覧下さい。 第34回鎮守の森を見に行こうかい http://morinokai.kir.jp/event/index.html 森とふれあう市民の会 http://morinokai.kir.jp/index.html ┏◇◆◇◆◇◆━━━━━━━━━━ 〈6〉両槻会からのお知らせ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━━━━ ◇━ 第14回定例会のお知らせ 両槻会主催の第14回定例会では、「野守は見ずや 名柄の遊猟(みかり)」 と題し初の野外イベントを企画しています。 藤原京から出土した木簡には、かなりの数の生薬名が記載されていること が分かっています。この定例会では、飛鳥人がどのように植物を薬として、 ハーブとして、はたまた食用として利用していたのかを、御所市の田村薬品 工業株式会社さんにご協力頂いて、薬草園で栽培されている薬草を見ながら、 ご紹介していく野外イベントです。 同時に、現代人の私たちもそれらをもっと身近に、また、賢く利用するに はどうすればよいのか、皆さんとご一緒に考え楽しめたらと思っています。 どうぞ奮ってご参加下さい。 日 時 : 5月9日(土曜日) 集 合 : 近鉄御所駅前 参加費 :1000円(バス代は各自負担) 第14回定例会ページ http://asuka.huuryuu.com/yotei/teireikai-14/yotei-14.html ::::::::::::::::::::::::::::::::::: ◇━ 特別回 忍坂街道探検 特別回「忍坂街道探検」がいよいよ明日に迫りました。ご参加下さる皆さ んは、今一度お送りした詳細案内メールをご確認のうえ、ご集合下さい。 楽しい一日にしましょう♪(^^) ┏◆◇◆◇◆◇◆━━━━━━━━━━ 〈7〉編集後記 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━━━━ 春眠暁を覚えず・・・のことは、前号にちろっと書きましたね。(^^ゞ ちなみに、まだ調べておりません。(^_^;)この言葉の真意がどうであれ、と もかくうらうらと暖かい日は、眠いものだという実感だけはあります。(笑) ・・・とか何とか言ってるうちに、四月も半ば過ぎ。寝てばかりいないで、 動き出さねば・・と。(^_^;) GWなんぞも控えてます。皆さん、もうご予 定は立てられました? (もも) ┏━━◆◇◆━━━ ━━━ ━━━ ━━━ ━━━ ━━━┓ 発行 :両槻会 http://asuka.huuryuu.com/ 飛鳥遊訪マガジンへのご意見ご感想は、 http://form.mag2.com/viuounelio または asukakaze2@gmail.com 両槻会事務局まで 登録/解除は http://www.mag2.com/m/0000259444.html 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ ┗━━━ ━━━ ━━━ ━━━ ━━━ ━━━◇◆◇━━┛ …─…─…─…─…─…─…─…─…─…─…─…─…─…─…─…─…─…



