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 僕にとって映画のない人生は考えられません。その作品をどういう状況でどう見たか、埋もれそうな記憶の海から拾い上げて、ある映画からまた別の映画へ話は続きます。新作紹介でもなく、評論でもなく、映画を軸に、生きてきた足跡を残そうと思います。

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2008/05/20

【映画千一夜】 ☆★ 映画に愛をこめて ★☆

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 第13夜 パッション(2004)                  2008.05.21

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 キリスト教では13が不吉な数字として嫌われている。最後の晩餐は12使徒とキリ
ストの13人で囲んだわけだが、裏切り者とされるユダがその13番目の席についてい
たからとか、キリストの磔刑が13日の金曜日であったからとかの説があるようだ。

 そのキリストの受難を描いたのがメル・ギブソン監督の「パッション」だ。キリスト
最後の12時間を描いているので、そこにいたるまでの物語は時々カットバックで一瞬
現れるが無いに等しい。東方三博士の礼拝や飼葉桶のキリスト降誕シーンなどクリスマ
スのようなシーンは皆無の、全編辛い受難劇だ。

 メル・ギブソンにとっては「ブレイブハート (1995)」に次ぐ監督作品である。この
スコットランド独立の英雄を描いた作品でアカデミー作品賞、監督賞他全5部門で受賞
している。このときは主演も兼ねていたが、やはりラストに受難のシーンが用意されて
いた。

 「パフューム ある人殺しの物語 (2006) 」もそうだが、処刑を見物するのが庶民の
娯楽の一つであった時代があったようだ。「ブレイブハート」では刑が執行される前に
道化が登場し、人形を使ってこれから起こることを茶化してみせるという趣向だ。刑の
執行シーンはメル・ギブソンの顔のみの演技だが、スクリーンの外で何が行われている
かを事前に知った観客にとっては、その苦痛に満ちたシーンが延々と続いた印象がある。

 ところが「パッション」では、その受難の部分だけを一本の映画にしてしまったのだ
から、賛否の嵐も当然と言えば当然だ。
 鞭打ちから磔まで、見ているこちらの骨まで軋み音を発するのではないか、というほ
どの痛めつけ方だ。すべての人の罪を背負って十字架にかけられるとはこういうことな
のだ。当時その受難を目の当たりにした人たちと同じレベルで、現代の観客の眼前にそ
の事実を突きつけていくことにギブソン監督の意図はあったと思われる。したがって劇
中の言語も英語ではなくアラム語でしゃべられる事にこだわった。字幕なしで見ること
の出来る観客は世界でも限られるわけだ。

 キリスト役のジム・カヴィーセルはどちらかというと堂々たる体躯の持ち主だ。しか
しゴルゴダの丘まで、見るからに何十キロもありそうな十字架を背負うわけだから貧相
な体ではそもそも「行進」がスタートしなかっただろう。

 パッション(passion)は激しい感情、熱情という意味の単語だ。”the Passion ”
と言う時だけキリストの受難を表している。

 同じ「パッション」の映画で、イタリアの監督、エットーレ・スコラの「パッション・
ダモーレ(1980、日本公開は1984)」という作品がある。「愛の情熱」と言う意味である。
 これはなかなか面白い作品だった。
 まずポスター。ある特別な事情から物語のヒロインではなく、脇役のラウラ・アント
ネッリ(「青い体験」の主人公の少年を誘惑する年上の女性)がヒロインであるかのよ
うにあしらわれている。

 その理由は見なければ分からないのだが、最初コメディのように始まった映画が次第
に純愛を謳ったラブストーリーの様相を呈してきて、最後は怨念によって男が狂うホラ
ー映画になってしまう。

 ヒロインの側からすればパッションは「熱情」なのだが、男の側からは「受難」以外
の何物でもないダブル・ミーニングだ。

 今夜はここまで。また明日の夜をお楽しみに。

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                           (発行人:まっくいーん)

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